第34戦 VSデート「店員H」
「スイマセン、お客様。当店ではじょうろは取り扱っておりません」
「だそうですよ?」
「実は隠しているのだろう?早く出せ!」
「家人さん。時には間違いを認める勇気も大切です。100円ショップにでも行きましょう?」
『そもそも何でじょうろを買いにスーパーへ行くのかしら?』
『あのスーパー品揃えがいいんですよ。ボクは前にマスケット銃とかクレイモアとか売ってるの見ました』
『何でそんなモノが売ってるのよ・・・』
『武器マニアの店員が、諸事情によりコレクションを売りに出したそうですよっ♪』
『ここはフリマか』
『フリマに武器は置いていないと思うんだけどなぁ・・・』
『あ、見失いましたっ!』
『100円ショップというと何処の100円ショップだと思う?』
『フフフ、安心してよカンナちゃん。まだ策はあるのですっ!!』
「というわけで100円ショップだ」
文字数を考慮しろ、と言わんばかりの移動スピードだ。
一応これでもバスに乗って駅近くのエリアに移動してきている。
「何処を向いて話してるんですか」
「細かいことは気にするな」
自動ドアをくぐり店内を歩き出す。
「じょうろはどこだろうな」
ここの100円ショップは来るたびに地形が変わるので、何処に何があるかわかりにくい。
一説によれば店長が模様替えが好きなんだとか。
たまにあるゲームのダンジョンのようだ。
「じょうろさん、どこですかー」
「ハハハハ、そんなことを言ってもじょうろは出てこないぞ」
「ですよねー」
「僕がじょうろですけど何か御用でしょうか?」
「・・・少しそんな気はしてました」
ニコニコと私達の前に現れたその店員に、私は見覚えがあった。
この前スーパーに行ったとき見かけたような気がする。
確かこの顔は・・・
「店員Hか!」
「正解です。苗字が上臈で、名前が叡智です」
話を続けると、店員Hはスーパーと100円ショップのバイトを掛け持ちしているらしい。
それぞれの店長が友人のため、色々とこじれて掛け持ちすることになったそうだ。
「で、じょうろは何処だ?」
「ですから僕はここにいます」
「いや、そっちのじょうろじゃない。水を出す方のじょうろだ」
「僕からも液体は出ますけど?」
「・・・・・・・・ああ、唾液か」
答えるまでに間があったことに関しては何も言わないでくれ。
私とて健全な男子生徒なのだ。
店員Hが若干にやけている所をみると、どうやら狙って言ったようだ。
「じょうろは奥から二番目の棚です」
「ありがとうございました!」
「それでは」
そして彼は次の客に対応しに行った。
私達は言われたとおりの棚へ足を運ぶ。
「え〜と」
「ユカ、反対側にあったぞ」
「あ、はーい」
ユカが棚のじょうろに手を伸ばすが、悲しいことに高さという壁に阻まれてしまったようだ。
懸命に背伸びをするも届かない。
「取ってやろうか?」
「いいえ、自分で取ります!」
妙な意地ができてしまったらしく、断られてしまった。
頑張っているのだから、少し放って置くかと壁に寄りかかり見守る。
―この判断が後々大惨事を招くとは、このときの私には知るよしも無かった。
「わっ!」
ユカはいきなりバランスを崩し、商品棚へ倒れこんだ。
何とか途中でユカを抱きとめる。
しかし棚はもう止まらなかった。
「え」
倒れた棚は隣の棚に倒れこみ、そのお隣さんの棚は隣の棚を押し倒す。
というように棚のドミノが倒れていく。
私達が数秒間固まっていた間に、じょうろのあった棚の列が全て倒れる。
さらに間をおいた後、なんとなく思い出したように呟いてみる。
「・・・中々良い眺めだな」
「そんなこと言ってる場合じゃ無いですよ〜。うぅ〜」
ユカは頭を抱え込んでしまった。
仕方ない。
「店員H、いるかー!」
「殿、こちらに控えております」
「お前この状況でよく冗談が出るな・・・」
自然とため息が出てくる。
「僕がこの状況をどうにかしましょうか?」
そう言いながら店員Hは表面的にはニコニコと、深層的には腹黒そうに笑顔を浮かべる。
あまりいい気はしないが、背に腹は変えられん。
「では頼む」
「それじゃ今度、飯でもおごって下さいね?」
ま、それくらいならいいか。
「僕の胃袋が宇宙並ですけどね」という言葉が付け足されたが。
その言葉は聞かなかったことにして、頭を抱えたユカの手を引っ張る。
「え、このままでいいんですか?」
「ああ。多分あいつならなら上手くやるだろう。さっさと映画館に行くぞ」
パニックに陥った地震後のような店の中で手を振る店員Hに別れを告げ、外へ出る。
本来ツレがやったことに責任を取らないのは不本意だが、飯をおごるのだからよしとするか。
「こちら大和高校美少女同好団体校外団員、上臈叡智。ターゲットを確認。これから映画館に向う模様です」
『わかりました、了解ですっ★』
店員Hこと上臈叡智のその後
「店員Hこれはどういうことだ!」
「すいません店長。少しドミノで遊んでいただけです」
「そうか。ならいい」
更新が遅れてしまい、すいませんでした。
遊び呆けていたら、趣味に当てる時間がろくになくて・・・
とか思ったらユニークアクセス数が40000人突破!
ありがとうございます!!
ちなみにページ総表示回数は130000hitです。
次回でデート編は終わりになります、きっと。
予告風に言うと
二人のデートはいったいどのような終焉を迎えるのか!?
続きは次回へ!!