第33話 VSデート「引ったくりばあさん」
「キャー、引ったくりよー!」
「家人さん、あれ・・・」
「引ったくりだな」
事件の場は私達の位置より少し先。
50歳くらいのばあさんが引ったくりに合っている。
否、その逆だ。
50歳くらいのばあさんが引ったくりをしている。
ちなみに悲鳴はたまたまそばにいた齋藤さんだ。
「ってそんな驚いてる場合じゃないです!」
「む、そうだな」
「アハハハハハハ!私にに追いつけるかのぉ!」
「早ッ!」
これがあの100キロババァというやつか?!
アメフト選手顔負けのフェイントとスピードで私とユカを抜き去った。
致し方ない!
「マイケル!」
「合点承知!」
マイケルが引ったくりばあさんに飛び掛る。
しかしばあさんは嘲笑うかのように、ひったくったバッグを宙に放り投げ、続いて自分もマイケルを飛んで避ける。
空中で身動きが取れなくなった標的。
これを逃す手は無い。
「喰らえ小松菜!」
―ゴンッ
「・・・明らかに小松菜を投げた音じゃないんですけど」
「今小松菜は旬だからな」
マイケルと拳をぶつけ、喜びを分かち合う。
引ったくりおばさんは気絶したままなので、頭をわしづかみにして持ち上げると「ああ、やっぱりか」という思いが胸に広がる。
「花子・・・・」
「やあ、家人。おっきくなったのぉ!」
―ゴンッ
『カンナちゃん、あの小松菜何製だと思う?』
『99%の努力と1%の閃きとかじゃないですか?』
『欲しいですね・・・あの小松菜』
『絶対に真木ちゃんの手には渡って欲しくないわね』
「お知り合いですか?」
「知り合いも何も親戚だ。大和花子。そして今回の目的地、花屋の店主だ」
「やたらと都合がいいですね・・・」
「うちに用かい?なら付いておいで」
―ゴンッ
「その前に引ったくったバッグをどうにかしろ」
「盗んだ品物はもうマイケルが返してくれたよ」
「それでは警察に突き出すか」
「待っておくれ!こんなの日常茶飯事じゃぁないか!」
「それもどうかと思うんですけど・・・」
ばあさんが引ったくりを行うのは趣味だったりする。
スリルが楽しいだけなので、盗んだものは後でちゃんと返すそうだ。
なんとも迷惑な趣味だ。
「で、何をお求めで?」
「仏壇一式。勿論おまえのだ」
「家人さん。花壇ですよ、花壇!」
「あいよー」
花子おばさんが店に入ったので、私達もそれに続き店内へ足を踏み入れる。
ユカが驚いたように店内を見回す。
「意外と普通なんですねー」
「いや。品揃えは絶滅したはずの植物や、法に触れるようなものまで多様多種だぞ」
「ですよねー」
『リンは多分、ここで仕入れてたのね・・・』
『先輩。そんな暗くならずにっ★』
『どういうことですか?』
『黒魔術とかそんな感じよ・・・・』
「これでどうだい?」
奥から出てきた花子おばさんは花壇一式を手にしていた。
花壇一式は袋に入れて、一つにまとめてある。
「妙なものは入れていないだろうな?」
「せいぜいマリファナ程度」
「・・・・・」
「嘘嘘嘘、冗談だって!この店じゃそんなモン扱っとらんよ!!」
「家人さん、小松菜食べれなくなりますよ」
「もう遅い。こいつはもう血まみれだ」
「値段をまけるから許しておくれ、なぁ?!」
その言葉を聞きたかった。
マイバッグに小松菜を詰め込み、花壇一式をおばさんの手から引ったくる。
料金を支払い小松菜で殴りつける。
「大丈夫ですか?」
「流石の私も女性に荷物持ちはさせないさ」
「そうじゃなくておばさんの方です」
「放っておけ」
頭から血が流れているが心配ないだろう。
50過ぎとはいえ、私の母と同じ血が流れているのだ。
「家人さん。そのサンタクロースみたいな格好で映画館に行くつもりですか?」
「む、確かに」
どうしたものか。
花壇一式はとても大きく、運ぶのに不便だ。
しかし一旦宝蓮荘に帰るのも面倒だな。
ふぅむ。
あ、そうだ。
「ヌヌ」
「ヌ〜ン」
「・・・何で花壇の袋から出てくるんですか」
「細かいことは気にするな。ヌヌよ、これを家まで運んでくれ」
「ヌン」
ヌヌ猫がヌ〜ンと鳴くと、何処からともなく猫の大群がやってきた。
もうひと一鳴きすると、猫達は花壇一式の袋をみこしのように担いで持って行った。
「ヌン」
「ご苦労だ」
ヌヌ猫は元々私が持っていたバッグに潜り込んだ。
ユカはただただ戸惑っている。
「えと・・・」
「次はスーパーだ。袋にはじょうろが入っていなかったので、じょうろを買う」
「は、はい!」
次の目的地
第23戦のときのスーパー
話が進まなかったorz
デート編は3話のつもりが4話になってしまいました。
そのうち5話に増えそうで怖い・・・