第16戦 VS大海の父
こんばんは、向陽ユカです。
とうとう私の視点の話がやってきました!
今日はなんと大和家の夕食にご招待されました。
とても広い和室に机が並べられています。
ここにたくさんの料理が運ばれて来るんですね。
まだ橘家の人しか集まっていないので、余計に広く感じられます。
何だか中学校のときの修学旅行を思い出します。
おや、台所の方から美味しそうな匂いがしてきました。
「蓮さん、私も料理を手伝ってもいいですか?」
「駄目駄目!ユカちゃんは客人なんだからじっとしてなさい!」
うんうんと私の真正面にいる家人さんは頷き、更に言葉を付け加えます。
「それに今日は大和家の料理人たちも気合が入っているから、邪魔したらどうなるか知らんぞ?そんなことより、おまえらここに一泊していくつもりか?」
「「もちろんです」」
「・・・まあいいか」
隣の真木ちゃんのほうを向くとイエイ!と笑顔。
ついつい私も釣られて微笑んでしまいます。
「カンナ、そういえばジジィどうしたんだ?」
「どこかの山で熊とかと格闘してるんじゃない?」
「ありうるな・・・」
どんな人なんでしょう、家人さんのおじいさま。
「家人」
声の主は家人さんの父親です。
【橘 曲尺】という名前だそうです。
さしがねっていうと、大工さんが使うあのL字のものさしですよね?
職業は建築士さんなのでこういう名前なんでしょうか。
でも大工さんと建築士というとちょっとズレが・・・
「何だ?」
「いや、なんでもない・・・」
互いに気まずそうな顔。
何かあったんでしょうか?
「あなた、あ〜ん」
「ぐ」
家人さんのお父さんは物静かな人です。
とっても明るい、お母さんとの凸凹夫婦ですね。
「お兄ちゃん!」
「なんだ?」
「あ〜ん」
くっ、油断して遅れをとってしまいましたね。
「・・・・・・・・」
口元が引きつり、目線は右に逸らしています。
どう乗り切るか迷っている模様。
「家人さん!」
「あ〜ん、先輩♪」
い、家人さん。
私を選んでください!
「家人様、あーんでございます」
「渡部も悪ノリするな!」
その箸はいったい?
渡部さんまであ〜ん志望ですか?!
ライバル出現ですね。
「ちょ、ちょっとトイレに行ってくる!」
家人さんは部屋を風のように脱出。
逃げましたね。
「ヘタレですねっ★」
「むぅ〜お兄ちゃんめ」
「真に残念です」
「「「渡部さんは本気で言ってるの!??」」」
全員の心がひとつに。
三心融合。
渡部さんは質問に答えず、老齢の方特有の笑い方するだけ。
不安に思っていると、ちょっと呆れたかんじの曲尺さんからのフォローが。
「渡部には妻がいるぞ」
是非とも奥さんの方を大事にしてあげてください。
フォローの後、曲尺さんは少し迷う素振りを見したと思ったら、
「家人は今、どのような生活をしているか教えてくれないか?」
「真面目に勉強とバイトの日々ですねっ☆」
「ふむ・・・」
先ほどの疑問をひとつ聞いてみましょうか。
遠慮しても仕方ない気もしますし。
「家人さんと何かあったんですか?」
「・・・・・」
複雑そうな表情で、眉には皺をより口は閉ざされています。
「説明しよう!小学6年の時の話なんだけどね」
蓮さん、夫のことはスルーですか。
「蓮、私が話すよ」
「さっちゃん・・・」
この雰囲気でさっちゃんはちょっと・・・
話を要約すると以下のような内容です。
家人さんは小学生のとき、友達といっしょに地元の公立中学校に行きたかったそうです。
しかしその時の中学はとても荒れていたそうです。
将来大和家の中心人物になるかもしれない家人さんを、私立に行かせたいというのが大和家全員の意見でした(父親さんも含めて)
そして大和高等学校付属中学校に通わせることが、一族の間で決定したそうです。
家人さんはもちろん不服に思い、それから色々あり、喧嘩別れのようになってしまったということです。
「それから家人にどう接して良いかわからないのだ・・・」
ちょっとしたすれ違いですね。
互いに不器用そうですし。
「多分私は嫌われてしまったのだろうな」
「それはないですねっ♪」
「そ、そうです!いつも家人さんは反省すれば許してくれますから」
その分、反省してないと容赦ないですけど。
「君達・・・」
「ほ、本音で接するのが一番です!」
「そうか、わかった」
遠慮がちにふすまが開かれました。
入ってきた家人さんに全員の視線が集中します。
「え、皆どうしたんだ?」
無言。
沈黙を破ったのは曲尺さんです。
「家人、学校はどうだ」
「疲れるが、それ以上に楽しいといったところだ」
親子そっくりの、ちょっと照れているような素振り。
曲尺さんはゆっくりと息を吐き、そして
「家人、お前の意志を無視して、進路を私が勝手に決めてしまってすまなかった」
そう言って、曲尺さんは頭を下げました。
家人さんは少し目をパチクリさせた後、真顔になって自分の気持ちを語りました。
「父さん、私はその時は確かに恨んだ。その頃私は公立で友達と一緒に部活をするのを楽しみにしていたからな」
「・・・・・」
辛そうな表情の曲尺さん。
すると家人さんは微笑みました。
「しかし今は恨んでなどいない」
こちらの方を見渡し言葉を続けます。
「今の友人に出会えて、そちらの方が幸せだと思っている」
ずっと言えなかったことを言えたのか、家人さんの顔には気持ちよさすら感じさせます。
「大切な友人と出会えたのは父さんのおかげかもしれないからな、むしろ感謝している」
「しかし私は、お前の意志を無視したことに変わりはない・・・」
「父さん、私は子供の気持ちを尊重するだけでは、親は務まらないと思っている」
「家人・・・」
曲尺さんは家人さんに向かって、苦笑交じりだけど温かく微笑みました。
家人さんも自分のお父さんに向かって、笑い返しました。
よかったですね、家人さん!
橘家人とその父親である曲尺との父子間冷戦終結
やはり真面目に書くのは中々難しいです。
いっそ思いっきり喧嘩させた方が、まだマシだったような気が・・・
懲りずにまた温かい感じのは書いていきます。
期待されてなくとも・・・
たまにはコメディー以外でもいいじゃない!
そんな私の泣き言はひとまず置いといて。
私の都合で、2週間ほど更新を休ませていただきます。
2週間たったら更新速度がが10倍にッ!・・・・はなりませんが、ある程度早くなるかもしれません。
いつもどおり長々しい後書きを読んでくれた方、ありがとうございました。
また2週間後に。
といってもコメントには2週間たたなくとも、返信させていただきますが。