第11戦 VSヌヌ猫
「帰ったぞー」
「ヌ〜」
「ああ・・・待っていてくれたのか」
「ヌ〜ん」
バタンキュー
ベッドに倒れこむ。
日は真上にあるが、このまま眠ってしまおう。
その考えを読み取ったのか、ヌヌ猫がカーテンを銜えて閉めてくれた。
器用だ。
「ヌ〜ん」
「礼を言うぞ・・・」
それにしても疲れた・・・
店長が「これからは24時間営業の時代よ!」とわけのわからない事を言いだしたのだ。
私がその犠牲者として、空がまだ暗いうちから働いて正午くらいにやっと開放されたのだ。
大体労働基準法を守っているからあまり文句が言えないのが悔しい。
おまけに「やっぱ営業時間を延ばしてもお客様が入らなきゃ意味ないわよねぇ」ときた。
24時間営業はもうやらないらしい。
わかってたならやるなよ。
考え事をしているうちに、だんだん意識が朦朧としてくる。
が、眠りが深くなる前に嫌なプレッシャーを感じる。
ティラリラリン!
何かニュータイプっぽい感覚がしたぞ。
真木が私のところに来て、何か持ってきて私を困らせる予感がする。
我ながら具体的な予感だな。
「ヌヌ猫、私の安眠の時間を守ってくれないか?」
「ヌ〜ん」
真木はヌヌ猫が苦手だからこれで安心だろう。
体を起こしてヌヌ猫に念を押す。
「それでは頼んだぞ」
「ヌ〜ん」
ベッドにもぞもぞともぐりこんでいると、玄関からガチャガチャと音が聞こえてきた。
どうやら早速来たようだ。
「く、鍵が・・・仕方ないですね・・・」
チャキチャキ、カチャチャキ・・・
甘いな。
ピッキング対策は完璧だ。
中学校時代のノウハウが役に立ったな。
チャキ・・・・
あきらめたか。
これでやっと眠りにつける。
と思ったら嫌な音が聞こえてきた。
バキィ!!!
おいいいい!
超強行手段に出たか。
無茶苦茶な・・・
ヌヌ猫に任せたとはいえ心配だな。
重い体を引きずって、玄関の方を覗く。
「家人先輩、私が愛情たっぷりの夕食を持ってきましたよ♪」
やはりか。
玄関から寝室まで距離があるはずなのに、ここまで異臭が漂ってくる。
腐卵臭に加齢臭をプラスしたような臭いだ。
真木の作る料理はすごいからな。
料理という名の、対人最終生物兵器だからな。
その実力は新たな生命を創造するほどだ。
前のハンバーグは、台所の漆黒の大王のように手足が生えて動き出した。
・・・ソレを完食した自分を褒めていいと思う。
「ヌ〜ん!」
真木の前に仁王立ち。
は、できないので四足歩行で普通に立ちはだかる。
「な、私を入れないというのですかっ!」
ヌヌ猫がんばれ〜
「ふふふふふ、今日の私は対ネコ型完全無敵装備なんですよっ☆」
タラタラッタラ〜♪
「猫じゃらし〜★」
ハイハイ、なんかイタイ子。
自分も昔同じことをしていた気もするが。
しかしヌヌ猫に使ったこと無いな、猫じゃらし。
今度買ってあげようか。
いや、懐が寂しいので近所の野原から取ってこようか。
植物の方の猫じゃらしでも良いだろう。
「ヌヌヌヌヌヌ!!」
「きゃぁっ」
おお!
目にもとまらぬスピードで、猫じゃらしにジャブ。
粉状に砕かれた猫じゃらしが、その威力を物語っている。
ヌヌヌラッシュとでも名づけよう。
「く、ならば第二段っ!」
あ、高級猫缶だ。
ソレを見た瞬間、ヌヌ猫の顔が鬼へと豹変する。
「ヌんッ」
一陣の風が吹く。
「――えっ?!」
真木の真正面にいたはずのヌヌ猫が、後ろにいる。
おまけに高級猫缶の中身までなくなっている。
そんなにひもじかったか、すまん。
給料日前なんだ、許してくれ。
「くぅ・・・高かったのに・・・仕方ないです、第三弾っ!」
ぬぬぬぬっぬぬぅうううん〜♪
リズムはドラえ○んのヤツを当てはめてくれ。
「マタタビ〜」
いったいヌヌ猫にマタタビ使うとどうなるのだ?
使ったことないからな。
私の妹が使って悲惨な目にあったとかいうエピソードがあったが。
「ヌッ」
「感度良好、ほぉらこっちこっち〜★」
「ヌ・・ヌ・・・」
ヌヌ猫の毛が明るむを帯びてゆく。
「ぬぬぬんぬ、ぬぬぬ〜!」
逆立った黄金の毛とオーラ。
ってどこの戦闘民族だ!
スーパーヌヌマジンッ?!
「ぬ〜ん〜ぬ〜ん〜」
戦闘力が一点に集中し、高まっている!
「これっていったい・・・」
「やめろ、ヌヌ猫!」
しかしすでに時遅し。
掛け声と同時に、ヌンヌン派は放たれた。
安直なネーミングセンスでスマン。
「ヌゥ〜!!」
ドシャァアッ!
水道粉砕。
水が撒き散らされる。
「アハハハ〜びしょ濡れですねっ♪」
水道は粉砕したまま、理性を失ったかのように水が出続けている。
呆然とそれを見つめていると真木が私の存在に気づく。
「先輩いるじゃないですか〜」
「う・・・あ・・・・」
「ぬぅ・・・」
申し訳なさげに、ヌヌ猫が俯く。
どうしよう・・・
「先輩の部屋だから大丈夫ですよっ☆」
我が家の経済状況を知らんな。
水道とドアの修理代。
今月の家計簿も真っ赤だろう。
そして私の顔も真っ赤だろう。
うまいこと言った。
「先輩、濡れ濡れの私を見て欲情しましたか?」
「・・・・・・」
そんなわけ無いだろう。
空気を読め。
「せ・・・・・先輩?」
「ぬ・・・ヌゥ・・・」
必死に自分を押さえ込もうとする。
が、それは無理だった。
私の中で何かがプツンと切れる。
「ふざけるな!どうしてくれる、修理代!!」
5ぉ、7、5ぉ!
特に意味はない!!
「きゃ〜★」
「ヌ〜ん!」
とかいいながら二人(の内片方は一匹)は逃げ出す。
って足速ッ!?
「待てぃ!!」
「許して下さい、先輩っ!」
「ヌゥ〜」
「とりあえずそこになおれ、貴様ら!!!」
被害水道粉砕
この後二人(の内片方は一匹)は捕縛された
ちなみに今月の水道代は、普段の数倍だったらしい
それに加え水道とドアの修理費
ただでさえギリギリの家計簿は真っ赤となる
放水された部分の床は後々腐ったらしい
すみません。
東方地霊殿やってたら大分遅くなりました(オイ
この時期にゲームにはまるとは。
クリスマスに2話更新する予定なんで、なにぞとご勘弁を。
年賀状も作らなきゃならないし間に合うかどうかは微妙なんですけどね・・・