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第10戦 VS森林葉

カリカリカリカリカリ


ふと周りに視線を移す。

年季が入った本棚は古臭いというより、知的な雰囲気をかもし出している。

勉学に励む学生達の姿は皆真剣。

ここは図書室。

家より勉強に適した空間なので私はいつもここで勉強している。

私の部屋には暖房とか小洒落こじゃれた物はない!

まったく、何故あんなにもあれは高いんだ。

別に欲しいわけじゃない。

ただあんなものの値段が高いのが不満なだけだ、本当だぞ!


「・・・隣、いい・・・?」


「ああ」


そう言って森は私の右側の席に座る。

よく彼女も図書室に来る。

私と違い勉強ではなく、本を読みに来ているだけだが。

近い将来、図書室の本を全て読破しそうなくらいよく読む。


カリカリカリカリカリ・・・


パタン


「ふう、今日はこれくらいであがるとするか」


返ってもやることは特にないし、たまには図書室本来の役割を有効活用してみるか。

数週間前に新しい本が入ったと聞いたしな。

本を借りてから帰ろうとすると、右手に違和感を感じた。

右の方に顔を向けると森が袖を掴んでいる。


「どうした?」


森が手にしているのは心理テストの本だった。


「・・・これ・・・」


「じゃあやってみるか」


「・・・うん・・・」


「じゃあ私が出題するぞ」


適当にバッと、本を開く。


「えーと、あなたの好きな人は誰ですか」


ってモロストレート?!

遠慮がない心理テストだな。

あ、続きあった。


「いない場合は、一番最初に思い浮かべた人を、覚えていてください」


「・・・覚えた・・・」


普通の人に森から感情のゆれを見つけるのは難しいだろう。

それでも長いこと一緒にいる人や洞察力が鋭い人には、なんとなくだがわかるようになってくる(らしい)

今の私には、彼女が少し動揺しているように見えるが・・・気のせいか?


「その人が将来の浮気相手です」


浮気が既に決定事項?!

微妙に当たっていそうで怖いな・・・

中途半端に真実味がある。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「次いくか」


「・・・うん・・・」


何だ、今の間は。


「四字熟語を三つ挙げてください」


「・・・好事多魔、死山血河、空前絶後・・・」


何とか全部知ってる。

好事多魔は、好いときには邪魔が入りやすいってことだ。

死山血河は、死体の山に血が河のように流れること、激しい戦いのたとえ。

これまたすごいのが出てきたな。

空前絶後は、後にも先にも無い珍しいこと。


「一つ目の熟語は自分の人生観です」


「・・・」


いつも好期に邪魔が入るのか。

可哀想に。


「次は恋愛はどんなものと見ているか」


「・・・」


死山血河か。

大虐殺をしても奪い取れってことか、怖ッ!


「そんなこと無いよな?」


「・・・(コク)・・・」


だろうな。

YESと答えられたらなお怖い。

ん、何故目を合わせてくれないのだ?

気のせい、気のせいだ。

そうだ、そうに決まっている。

橘家人、余計なことは考えるな。

よし。


「最後は死ぬ時に自分の、それまで送ってきた人生をどう思うか」


「・・・」


空前絶後。

森は波乱の人生を送るようだな。

頭がいいからノーベル賞くらいは取りそうだ。

ん、待てよ。

さっきの死山血河とあわせてみよう。




痴情のもつれで、新型核兵器戦争勃発。




ものすごい大胆予想だ。

それは流石にないよな。

アッハッハッハッハ。

私の予想がトんでるだけだ。

けど森の頭脳を持ってすれば、日本くらいは滅びそうな・・・

彼女の学力は全国トップレベルを誇る。


「・・・次・・・」


「ん、ああ」


人と話している最中に、思考がどこかへ行ってしまうのは私の悪い癖だ。

その内どうにかしないとな。


「あなたは森を散歩しています」


ふむ、自分で読んでても、よくありがちな問題だと思う。

まあどうでもいいか、と思って続きを読む。


「その森の木はブナですか、それとも杉ですか?」


細かいだろ!

木の種類まで、考える人自体少ないだろう。

というか、ヒノキとか別の種類の場合はどうするのだ?


「・・・ブナ・・・」


あ、ちゃんとそこまで考えていたのか。

流石だ。


「ブナを選んだあなたは、花粉症にかかっていないでしょう」


あってるのか、それ?!

今冬だぞ。

そもそも花粉症かどうかなんて、心理テストで確かめる必要性がないだろうに。

病院へ行け病院。


「・・・どっち・・・」


「え、私か、じゃあ杉」


「・・・そう・・・」


と言って森は口元にうっすらと意味深な笑みを浮かべた(ようにも見える)

伏線か、何かの伏線なのか?!

悶々としていると鐘がなる。


キーングコーングカーンコーン


変なチャイムだ。

これがなったからには帰らないとな。


「それでは帰るとするか」


「・・・ん・・・」


「あ、この本何処から取ったんだ?」


「・・・貸して・・・」


森は私から本を受け取ると2、3歩離れた位置の本棚のところまで歩く。

背伸びをしてなんとか本を戻そうとすると、何の前触れもなく唐突に本が落ちて―


「危ないっ!」


「・・・え」


バタばたばた!!


本が急に崩れてきた。

なんとかとっさに森を押し倒して、本の雪崩から救出。


「大丈夫か!?」


「・・・うん・・・」


よかった。

怪我はなさそうだ。


「・・・・・」


ん?

森の顔がほんのり赤く、視線は横を向いている。

森を私が押し倒してだけだぞ。

・・・って押し倒した姿勢のまま、互いの顔の距離が20cmを切っているであります、大佐!

ところで大佐って誰?!


「うわぁああっ!」


密着した状態。

その場から飛びのく。


「す・・・すまん!」


「・・・ありがと・・・」


あまり気にしていないよう・・・か?

顔はまだ赤い。

気まずい雰囲気が流れる。


「と、とりあえず片付けるか」


「・・・うん・・・」


ふう、今思えば同好団体がいなくて助かったな。

黙々と本を戻していると、森が話しかけてきた。


「・・・ねぇ・・・」


「ん」


「・・・ここ・・・」


森はそういって心理テストの本の筆者のところを指差した。

そこには【高峰麗香】と書いてある。


「何をしているんだ、あの女・・・」


ある意味納得だ。







この時普通に他の生徒もいた

同好団体の過激派が増大した


季節は12月。

年末は師も走り出すほどの忙しい月だということで、12月は師走という名前だとか。

昔の人はうまいこと言いますね。

本当に忙しすぎる・・・・

それでもクリスマスに2話更新できたらなぁと画策中です。


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