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またお越しくださいませ

「ライくんとクライ、きっと心配しているわ。早くセリちゃんを返してあげないとね」

 リズさんはそう言ってわたしから離れると、早速リング作りに取り掛かった。


 美しい彼女の指から白い光が溢れる。

 作業中の光景は幻想的で、改めて魔法というものに感動してしまう。



 リズさんは何度も微調整を重ね、最終的に完璧な理想通りのリングを作ってくれた。


「ケースとラッピングもセリちゃんが選んでね」

 リズさんはずらりといろいろな種類のリングケース、袋やリボンなどを魔法で出してくれた。


「こんなにたくさん……」

 どれも素敵で選ぶのが大変そうだ。



 わたしは出来上がったリングの雰囲気に合わせてなんとか包装してみる。


「セリちゃんは本当にセンスがいいわね。色のバランス感覚もいいし、もしかしてデザインを勉強したことがあるのかしら?」

「いいえ。でも、もしかしたら小絵さえちゃんのおかげかもしれません」

「サエ……ちゃん?」

隼人はやとの……あ、すみません。わたし、サイネリアから飛ばされてずっと15年間別の世界で生きていたんですけど、そのわたしの幼馴染のお母さんが小絵ちゃんっていうんです。小絵ちゃんは洋服のデザインをしていて、ショーを見に行ったり色のこととか布の種類とか教えてもらったりしました」

「向こうの世界で良い人と巡り会えたのね」

 リズさんは微笑む。


「はい」

 わたしは返事をする。

 本当にそうだ。

 小絵ちゃん、隼人、お母さん、お父さん、すずちゃん、学校のみんな……。

 みんな優しかった。

 向こうにいた時は何も感じなかったけどわたしはとても恵まれていた。

 そして今も……。



 それからお代は要らないというリズさんとの争いに(?)なんとか勝利したものの、5000キリは多すぎると言われ有効的な使い方を考えてみた。

 そして思いついた。

 そのことをリズさんに伝えると、

「お安い御用よ。どんなものにしたい?」

と彼女は瞳を輝かせた。


「キラキラ輝くお菓子みたいなブローチ……なんてどうでしょうか?」

「セリちゃんの理想のままに」

 そう言われ、わたしは再びリズさんの魔力を借りてイメージする。

 優しいハンナのみんなにお礼をしたい一心で。

 目の前に煌めくブローチが現われた。




 ライルさんへ作ったリングとハンナのみんなへ作ったブローチ、これで大切なプレゼントが揃った。


 ブローチのラッピングが終わると同時に、タイミングよく部屋に軽快なノック音が鳴り響く。

 エチカさんたちがゆっくりと部屋に入ってきた。


「一息ついてくださいませ」

 エチカさんがティーセットの載った台車を押しながら言った。


「リズ様の魔力の気配が消えたので、お邪魔しても大丈夫かと思いまして」

 マニさんが言った。


「気を遣わせてしまったみたいね。どうもありがとう」

 リズさんは笑う。



 わたしとリズさんはソファーに座ってお茶をいただくことにした。

 添えられていたお菓子は料理長考案の果肉ゴロゴロ三層のジャムのパイやフルーツクッキー、マドレーヌなどどれも見覚えのあるフェスティバル用のお菓子だった。


「全て力作でございます。お口に合うか分かりませんが、リズ様、良かったら是非お召し上がりくださいませ」

 エチカさんはティーカップにお茶を注ぎながらリズさんにお菓子を勧める。


「綺麗ね。こんなに綺麗な色のお菓子、見たことがないわ」

 リズさんはパイを手に取り眺めている。


「フェスティバルが終わったというのに、料理長、焼き菓子専門の職人かっていうくらい今日もエリスさんたちと研究しているんですよ」

 キイロさんが困った顔で言った。


「美味しい!! 仕事に支障がないなら何かを極めようとするのはとても良いことだと思うわ!!」

 お菓子を食べたリズさんは、そう言って笑った。




 わたしは用意していた小さな包みを3個手に取り、エチカさんたちの前に立つ。


「あの、3人とも……よかったら貰ってくれませんか?」

 そう言って包みを持った手を差し出す。


「姫様?」

 エチカさんは不思議そうにわたしを見ている。


「ブローチ……です。手伝ってもらったお礼に」

「開けてもいいですか?」

 キイロさんが言った。

 わたしは頷く。


「可愛い……。フェスティバルのお菓子のブローチですね」

 マニさんは微笑む。


「みんなお揃いにしたんです。シンリーさんや料理長にも渡すつもりなんですが、ちょっと子供っぽい……でしょうか?」

「そんなことはございません。お菓子が立体的で、白と銀の縁取りがとても素敵です。何より姫様の優しさが詰まっております。私、こんなこと……思ってもみませんでした。姫様……お気遣いありがとうございます。本当に嬉しいです」

 エチカさんの瞳には涙が浮かんでいる。


「そんな……。みなさんへのお礼って言いましたけど、実はわたしも記念になるようなお揃いのものが欲しくて。だからちゃっかり……」

 わたしはそう言って自分の分のブローチを見せた。


「まあ……。姫様とお揃いだなんてますます光栄ですわ」

 マニさんが言った。

 そしてみんなで笑い合った。



「それで、肝心のライル様のリングは完成したのですか?」

 エチカさんが尋ねる。


「はい。あ、包装してしまったんですが、よかったらみなさん見てくれますか?」

 わたしが包装のリボンに手を掛けると、エチカさんがわたしの手に触れた。


「姫様、折角包んだのですから解かなくて結構です。お目にかかれる日を楽しみにしております」

「え?」

「またライル様とハンナへお越しくださいませ」

 エチカさんは笑っている。

 キイロさんとマニさんも頷く。


「ライル……さんと?」

 わたしは何気にリズさんの方を見る。


リングを着けた・・・・・・・ライくんと一緒に来てほしいってことよ」

 リズさんは笑って言った。

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