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神がかり!  作者: ひろすけほー
92/101

DARK HERO 後編 ”蛍(正史)ルート”

挿絵(By みてみん)

第54T話「DARK HERO」後編


 「このっ!折山(おりやま)ぁっーー!!」


 他の六神道(ろくしんどう)が目を丸くする中――


 さすが本職の御端(みはし) 來斗(らいと)は俺が今使った技を理解したようだった。


 「喚くなって、ただの”(くず)し”だろうが?コツは相手の中心を残したまま力点を作用させ、延長線上の上下に真逆の捻りを加えることだ」


 と、一応は応えてみるが……


 「猿真似野郎がっ!!この!このぉぉっ!」


 「……」


 「……」


 「……」


 忌忌しげな表情の御端(みはし)以外の者達は難解な表情のままだ。


 ――猿真似?心外だな


 当たり前に身につけてきた(わざ)を言葉にするのは難しいもんだ。


 ――とはいえ、


 この常識外の化物……


 巨体の上半身がバカになった状況だからこそ出来るわけでもあるが……



 「ウゴォォォォッ!!」


 「邪神(おまえ)も喚くなって」


 俺は直ぐに立ち上がれない、スッ転ばされた亀のように仰向けになったままの巨神に跨がった。


 そして――



 ドカァァァーーー!


 「ヴォォォッ!!」


 マウントから両拳で邪神の岩石の如き顔面を殴打する。


 バキィィッーー!


 「ヴォォッ!!」


 振り下ろした拳から赤黒い血が飛び散り……


 ドカァァァーーー!


 「ヴォッ……」


 頑強な怪物の顔面がみるみる腫れあがって陥没して変形してゆく――


 ガシィィーー!


 「ォォ…………」


 容赦なく、間断なく、終わり無く連続で打ち込まれる打撃。


 流石の怪物も次第に吠える声さえ弱々しくなってゆき……


 ――


 「も、もう……それくらいで……」


 ガシィィーー!


 「ッ…………」


 「きゃっ!」


 機械作業の様に黙々と殴り続ける俺を嬰美(えいみ)が見かねて制止しようとし、真理奈(まりな)が思わず目を逸らす。


 ガシィィ!


 「……」


 ――確かに、お嬢様方には少々過激すぎる見世物(ショー)


 ドカッ!


 ――しかし、()める訳にはいかない


 ドゴォッ!


 「ウ……ヴォォォォ……」


 ――この怪物はまだやる気だ、俺には解る


 ――そして……


 ガシィィ!


 「……ゥゥ……」


 振り下ろした俺の拳がまた赤黒く染まる。


 「……」


 ――僅かでも攻撃の手を弛めようモノなら、


 あの巨悪な拳が俺を一撃で叩き潰すだろう。


 ドガァァッ!


 一方的に殴られつつも、巨神――


 「ウ……ウガァ……」


 ”禍津神(まがつかみ)”の健在な左腕は、機会を覗うように何度も何度も此方(こちら)に照準を合わせて持ち上がっては俺が放つ顔面の殴打で再び地表に下がる事を繰り返していた。


 ガシィィ!


 「……」


 一撃必殺の”崩拳(ほうけん)”では殺してしまう。


 かといって、それ以外の……


 ”()め”が必要な高威力の攻撃でも一撃で無力化させるのは不可能で、さらに単純な打撃で一撃必殺の拳を所有する邪神に速度的に分がある。


 つまり――


 この状況を止めた時、こっちが先に死ぬ事になるだろう。


 バキィッーー!


 「ヴォォッ!!」


 ゆえに火力不足と解っていても単純な打撃を与え続け、


 反撃を許さないままで……


 ガシィィーー!


 「……ガ……ゥゥ……」


 ――このまま殴打(これ)を続けるしか無い!


 「……」


 ”殺さない”と決めた以上それしか方法は無い!


 ガシィ!!


 此所(ここ)で完全に弱らせ続け……


 しかし、場合によってはこのまま相手を殴り殺す事になってしまっても、それ以外の方法が俺には無い。


 ――いや、その前に


 「……」


 俺が力尽きて逆に殺される可能性の方が高いだろう。


 ドカァァァーーー!


 「ヴォ!ヴォッ!!」


 ――


 「きゃっ!」


 あまりの惨状に、この場で唯一の素人である(てる)は顔を逸らしてしまう。


 ――無理も無い


 俺の腕は肘まで赤黒く染まり、敵の顔面は血の海だ。


 ――それでもっ!


 「ヴォ……オォォォッ!!」


 バキィィィッ!!


 ――そこまでしないと形勢は簡単に逆転するんだよっ!



 全身から汗が噴き出して、それは途切れること無く押さえ込んだ邪神に滴り続けるも、


 それよりもなによりも、意外なことに俺の拳が大惨事だった。


 ガシィィ!!


 「……」


 信じられないほど固い顔面を殴り続ける俺の拳は皮ごと派手に裂けていたのだ。


 拳に纏わり付いた赤は、()うに敵のモノだけではなくなっていた。


 「……」


 実際、人類とは圧倒的に基本性能(ポテンシャル)の違う敵を前に、俺は見た目ほど優位では無かった。


 ガシィィーー!


 「ヴォォォ……」


 ――


 「さ、さくたろうくんっ!もういいよっ!やめ……」


 とうとう耐えきれなくなった(てる)が、背けていた顔を戻しこの終わり無き不毛を止めさせようとするが……


 ドカァァッ!


 「……」


 俺は止まらず拳を高く振り上げ続ける!


 「さく……」


 「……」


 ドゴォッ!


 「ヴォ……ォ……」


 ――悪いな岩家(いわいえ)……


 不格好なやり方だが、これは最低の根競べだっ!


 ガシィィッ!


 ――もし死んじまったら……化けて出てくれても良いぞ


 「ヴォ……ォ……」


 既にそう決意を固めた俺は怪物と成り果てた岩家(いわいえ)に寡黙に拳を振り下ろし、


 崩壊し続ける拳を破壊された顔面に打ち続け……


 パンッ!パンッ!


 ――っ!?


 いや、振り下ろさずに……


 そのまま固まっていた。


 「……」


 血塗られた拳を掲げたまま……


 大きく目を見開いて固まっていた。


 「……なん……だ?」


 「……さくたろう?」


 「……なに?」


 周りの者達も一様に、”その異変”に言葉を無くす。


 「…………ヴォ……ヴォ……」


 怪物は――


 「岩家(いわいえ)?おまえ……」


 俺の下の怪物は……


 完全に人外に落ちたはずの邪神は……


 「……あ……ああ」


 遠くで(てる)が胸の前で両手を祈るような形で握りしめ、涙を流す。


 そう、人外に墜ちたはずの怪物は――


 「ヴォ…………ォ……」


 自身に跨がった俺の右太ももの辺りを大きく……


 ”パン!パン!”と二回、確かに平手で叩いたのだった。


 「これって……もしかして……」


 波紫野(はしの) (けん)が思わず漏らす。


 ――そうだ……な


 俺は岩家(いわいえ)と初めて事を構えた中庭での一件を思い出す。


 たいして時間もたってない昔だが……


 なんだか遙か昔の事のようにも思える。


 「岩家(いわいえ)……おまえ」


 そう、”これ”は合図。


 格闘技にあるルール、降参(ギブアップ)の合図だ。


 あの時……


 ()しくも同じ対戦相手(カード)で結果は真逆、奴に吊られた俺はコイツにそう合図したのだった。


 ――もう終了だと


 ――終わりにしようと


 「……」


 「ヴォ…………ォ」


 いや……そんなわけが無い。


 岩家(いわいえ) 禮雄(れお)に自我は戻っていない。


 これから先も戻る保証は無いだろう。


 「……」


 しかし……


 確かに奴は俺に合図した。


 ――終わりだ……と


 ――


 「さくたろうくん……」


 「朔太郎(さくたろう)……もう……」


 「朔太郎(さくたろう)……」


 「(さく)ちゃん」


 皆の視線の中、俺は……


 「う、うそだっ!うそだぁぁっ!!こんな…………がはっ!」


 ひとり取り乱す蜂蜜金髪(ハニーブロンド)の優男を真理奈(まりな)の膝蹴りが黙らせる。


 「…………」


 そして、未だ余力の残っているはずの怪物の……


 邪神の左腕は完全に地面に横たわり、沈黙していた。


 「……そうかよ」


 俺は拳を開いて……その手を……


 巨躯に跨がったまま、頑強な腹筋に劣らぬ化け物染みた胸筋に己の両手を重ねていた。


 「そ、それは!?」


 動向を注視していた波紫野(はしの) (けん)が俺の次手に気づいて叫ぶ。


 「もしかして……永伏(ながふし)さんに……使った(わざ)を?」


 それに嬰美(えいみ)も続く。


 「……」


 俺は彼らには応えず、両の(てのひら)を相手の心臓付近に合わせ……


 ――すぅ……


 一呼吸の(のち)に、


 ドスッ!


 医療ドラマでよく見る心臓マッサージのような俺の所作の後で、


 「……ォ」


 少し遅れて邪神の口から初めて、雄叫びでも呻き声でも無い声が零れた。


 「ヴォ……ガッ……ハッ……ッ……ッ…………」


 大きく口を開けて、激しく胸を上下させ、苦しそうに息を吐き出す怪物。


 ドスッ!ドスッ!


 ドシャァァーー!


 その後、健在な左腕と両足を二度、三度と大きく痙攣させた邪神は、仰向けのままに大きく背骨を反らせた後、動かなくなった。


 ――


 「えと……こ、これって、永伏(ながふし)さんを亡き者にした、あの?」


 「オラァ!俺は死んじゃいな……ぐはっ!」


 地面に横たわったままの永伏(ながふし) 剛士(たけし)真理奈(まりな)の適当な言葉を訂正しようとするが、


 隣のアレな女にヒールで踏みつけられて黙らされる。


 「へぇぇ、えらいわぁ!ちゃんと殺さずに終わらせられるのね、朔太郎(さくたろう)くん」


 そうして、そのアレな……


 化粧っ気がない割に得も言われぬ色気がある女は俺に投げキッスを飛ばす。


 「”崩拳(ほうけん)”て(わざ)では殺してしまったよね?でも、それ以下の攻撃じゃ……いつまでもあの怪物を黙らせられない……だから」


 波紫野(はしの) (けん)が答え合わせを要求するように言葉を投げかけてくる。


 ――ちっ


 面倒臭いが仕方がない。


 六神道(こいつ)らの身内の生死に関わる話だ。


 「”重掌(かさねて)”は直接打撃じゃないからな。心臓を弱らせりゃ、この化物も暫くは寝てるだろう?」


 俺は渋々と説明する。


 ――だがそれも……


 岩家(いわいえ)が降参し動きを止めた。


 おかげで()めのある”重掌(かさねて)”が撃てたわけだ。


 「……」


 俺は静かに横たわる化物のままの岩家(いわいえ)を見る。


 ――そうだな


 お前との喧嘩の決着は……預けとこう。


 心中でそう呟いた俺の顔を、


 「へぇ……」


 なにが面白いのか?ジロジロと見回してくる波紫野(はしの) (けん)という失礼な男。


 「……」


 「ふふ」


 その軽薄男の口元はどこか嬉しそうであった。


 だが、それもコイツだけじゃない。


 嬰美(えいみ)真理奈(まりな)も……


 椎葉(しいば) 凛子(りんこ)永伏(ながふし) 剛士(たけし)のような男でさえ、安堵に口元を緩ませていた。


 ――


 「さくたろうくんっ!」


 そして……


 六花(むつのはな)……


 いや、守居(かみい) (てる)の笑顔は……


 「さくたろうくん!さくたろうくん!」


 ――確かに、昔……いや


 「騒ぐなって……傷に響く、俺は瀕死なんだぞ」


 ――現在(いま)も俺の求めていたものであった


第54T話「DARK HERO」後編 END

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