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秘密の習いごと (天気予報士編)

作者: ゆきのり

 あぁ、まただ。

 僕の隣にいる時、彼女はよく空を見上げる。

「どうしたの?」

 僕がいつものように聞くと、

「雷のにおいがする」

 彼女もいつものように天気予報をする。

 僕が彼女に想いを伝えるまでは、ずっとうつむいている印象しかなかったから、顔が上を向いていることは良い傾向と言えなくはないんだけど・・・・・・

「変だと思ってるでしょ?」

 ズバッと言われて、一瞬 言葉が出なかったので、

「やっぱり」

 次の言葉を彼女に取られてしまった。

「すごいと思ってるよ。だって、天気予報って言うより天気予知ってレベルだもん」

 苦し紛れに聞こえるかもしれないけど、それは真実だった。彼女が口にした天気は、その後 ほぼその通りになる。そのおかげで、天気以外の予報も鵜呑みにして大変な目に合ったことが何度かある。例えば、テストのヤマを教えてもらった時とか・・・・・・

「そっちのせいだからね」

 彼女が言った言葉の意味を理解できずにいると、

「天気ばっかり気にするから」

 そう言われても、全然ピンと来ない。

 彼女はフフッと笑って歩き出す。どうやら正解を教えるつもりはないらしい。

 僕は、彼女の後ろを歩きながら真剣に悩み続ける。彼女と過ごした記憶を新しいモノから順番にさかのぼる。どんな時でも結局は楽しい思い出だな、とにやけてしまいそうになって、余計な想いを振り払うために頭を振る。

「私、ちゃんと答えられるようになったでしょ?」

「あっ!」

 僕は、彼女のヒントと一番古い記憶のおかげで答えにたどり着いた。

 そうだ、女の子に話しかけることが苦手な僕が彼女に声をかける時は、

『これから、どうなるかな?』

 空を見上げながらのそれがいつも最初だった。

「ね?」

 彼女は抜群のタイミングで振り向き、太陽のように笑った。

 そうだ、彼女は僕の心の天気を読むこともできる、凄腕の天気予報士だった。

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