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魔王軍の幹部になったけど事務仕事しかできません  作者: 悪一
3-3.貴様は祖国を裏切った?
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報告します

「……偽物だと?」

「左様です、陛下」


 魔都に戻ってきて、真っ先に偽アキラのことを魔王ヘル・アーチェ陛下に伝えた。


 魔都に人間の諜報員が侵入しているということは、陛下の身に何か危険が及ぶのではないかと考えたからだ。

 事態が事態なので、クレーメンスさんを介してではなく、俺が直接陛下に伝えた。


「随分君も有名になったものだな」


 俺の報告を聞いた陛下が真っ先に聞いたことが、これである。自分の身が危険、なんて考えはどうやら微塵も考えていないらしい。


「そりゃそうさ。先の戦いのように最前線で私が倒されることはあっても、暗殺なんかで私は死にはしない。フグを調子に乗って三匹食べた時は死ぬほど腹が痛かったがな」

「何やってるんですか陛下……」

「若気の至りだ」


 まぁ、この魔王を生身の人間が倒せるとは思えないな。

 銃砲の直撃を受けても死なず、化学兵器を一身に浴びても死なず、フグ毒を丸飲みしても腹を下すだけ。


 こんなんチートやチーターや!


「伊達に千年生きていないからな。最初の百年なんて、朝食の代わりに毒りんごを食べさせられたことなんて何度あったことやら」

「……大変ですね」

「あぁ。大変だよ。なにが大変って五回に一回は親が仕込んだものだからな。免疫つけるためだとか言って」


 とんでもねぇ親である。

 いや、もしかしたら陛下の両親が陛下を暗殺しようとしていたのではないかと勘繰りたくなるほどだ。


「しかしそんな親も二〇五年前に仲良く死んだから、今は毒りんごなんて食べてはいないがね」

「え、それって八〇〇年くらい毒りんご食べ続けてたってことじゃ……」


 俺がそう突っ込むと、陛下は肯定するわけでもなく否定するわけでもなく、ただ肩を竦めた。こういう反応見せる時の陛下はだいたい真実を喋っている。


 ……急いで魔都に戻った甲斐はなかったかもしれない。


「とまれ、偽アキラとかいうスパイが魔都にいることはわかった。一応全軍に注意喚起すると共に、君の人相書きを大陸の隅々まで届けさせようか。無精髭を生やしたアキツ・アキラなんて私は好きじゃないからね」

「ありがとうございます、陛下」

「気にすることはない」


 よし。これで偽アキラの身動きはとれなくなるだろう。

 そもそも、俺の顔を知っている奴が多い魔都じゃ自由な行動は出来ないから不安もないから、あとは捕まえるだけだ。


 辺境のド田舎で偽物としてチヤホヤされていればまだ幸せだっただろうに。

 だが俺は偽アキラの存在を知った。あとはそいつの目の前で橋の上から「ドーン!」と飛び出して、そのまま「ギョワワワーン!」とクリアするだけである。ビシっと決め台詞も――、


「アキラ、戻ってこい」

「っと、失礼しました。ちょっと峠を攻めようかと」

「何を言っているんだ君は……」


 陛下は目頭を押さえて呆れたように首を振った。

 いかんいかん、真面目に仕事しよう。


「コホン。ともあれ、人間の方、偽アキラが魔都の街中をうろつくことはないと思います。問題は――」

「問題はツレの方。そうだろ?」

「はい。コレットと言う名の、鳥人族の裏切り者がいるらしいです」

「……裏切り者か。なかなか面白そうじゃないか」

「面白がっている場合ですか」


 自分の身が危険に及んで――るって認識はないんだった。

 物理的にも魔術的にも無敵の魔王だ。サリンで殴ってもギリギリ生きている陛下にこれ以上何をするつもりなのかと。


 ただ「コレット」という名の鳥人族なんて、何人いることやら判別がつかない。

「コレット」という名前自体が珍しくないし、そもそも本名であるかも不明だ。偽名を使われてしまえばわからなくなる。


 カラスの鳥人族全員が容疑者ということだが、魔王城にもいるしなぁ、そういう奴。


「なにか身体的特徴はあるのかい?」

「住民によると、長い黒髪で黒目、黒い翼のカラス系で、とびきり可愛い鳥人族としか……」

「魔都に何人いることやら。兵站局にもいるよな?」


 あぁ、うん。いますね、カラスの子が。

 まぁ陛下の紹介で来た人なんだけど。最近失恋して髪の毛短くしたことが女子の間で話題になってたよ。


「君という人間がいながら他に彼氏を作るからだ」

「兵站局ハーレム計画まだ潰れてなかったんですか?」


 だから男を入れて欲しいと言っているじゃないか! それに、誰が誰を好きになろうといいじゃないか。


「いやぁ、君が魔王軍に残した功績は多大だからね。金、酒、女を与えてやるのが君主の技量というものだよ?」

「どれも大量にあっても困るだけです。物には限度というのがありまして」


 金は生活と趣味に困らない程度にあればいいし、俺は酒飲まないし、ソフィアさんは可愛い。

 これ以上望むのは罪というものじゃないか?


「…………ソフィアくんは幸せだな」


 幸せ……に思ってくれてるかなぁ……。そこだけは自信がないのだが。

 ある日突然別れを切り出されても、俺は心臓が止まるだけで驚きはしない。


「何を言って――じゃないな。何を考えているのやら。数年前の彼女の事を知っている身としては、あれは十分に幸せだろうよ」

「……そう言っていただけると、心が救われます」

「礼なら孫の顔を見せてくれることで妥協しよう」

「何考えているんですか、陛下」


 もうそれ完全にお義母さんじゃないか。


 ……いや、もうお母さんではあったか。


更新遅くなったのはCSで頭文字がDのアニメを見て周回遅れでハマったからではありません。決してありません。書籍化作業で意外と忙しくて更新する余裕がなかっただけでForth Stageまで一気見したわけでは断じてありません。エボⅢカッコイイ。


(こんなに長くする予定じゃなかった偽アキラ編、まだまだ終わらない模様です。次回はまたコレットちゃん視点で書く予定……)

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