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歴史と謎  作者: 村背博秋
第1話 「赤ずきんちゃんにまつわる」
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赤ずきんちゃんにまつわる 其ノ九

飛行機の音が響く空港でクリスを見送った私は

野中に更なる確信の推理を伝えていた。


「クリスには聞かせたくなかった話だったんです。

でも、あなたには伝えとこうと思いまして」


「売春小屋・・そして赤ずきんちゃんもって・・」


「と、するならば、おばあさんはルイ14世の子供を

身ごもってなかった可能性もあります。もしくは

ルイ14世との子供は居た。しかしその子供

つまり孫である赤ずきんちゃんは、売春小屋を利用した

客との間にできた子供ということも考えられます」


「そんな・・」


「つまり、最悪の場合、王家の血筋の人間と売春小屋を利用した

見ず知らずの男との間にできた子供が現代にまで繋がってるということです」


野中は唖然とし、言葉をつまらせながら私に問いかけた。


「じゃあ、クリスも・・?」


「そもそも赤ずきんの話で、おばあさんと赤ずきんちゃんが

狼に食べられてしまうという所がすっきりしなかったんです。

男はよく狼に例えられます。

つまり食べられるとは・・・そういう事を指すのではないのでしょうか?」


「でも、そうだとしたら・・それって大変な事実じゃ・・」


「そうなんです。実はもう一つ分からないことがあるんです。

それは最初にクリスと野中さんを空港まで送り届ける途中のことです」


「!!尾行!」


「そう、小山さんの時は彼をあざむくくための僕の演技でしたが、

最初の時は確かに何者かに後をつけられていたんです。

それが何者かが分からなかった。


しかし、赤ずきんちゃんが王家と買春客との間にできた子供で

その血脈けつみゃくが現在まで受け継がれてきたとしたら・・

フランス政府にとってはとんでもないことです。死んでも秘密は守りたいでしょう」


「尾行がフランス政府っていうのは、あながち嘘じゃなくなると・・?」


「可能性です。でも、例えフランス政府だったとしても

クリスが無事戻れば問題はないと思いますよ。

証拠もない話ですから、クリスさえ無事なら大丈夫でしょう」


「そんな・・だったら赤ずきんの話って・・とっても悲しい」


「赤いずきんを被らなければいけなかったのは、

自らの意思ではなかった。そして、望んだ結婚もできなかった女性が、

望んでもない仕事をし、望まぬ男との間に子供をもうけた。

その血を繋いできたんです」


「赤ずきんのおばあさんの運命は他にはなかったんでしょうか?

魔女という無実の罪によって追放された結果

悲しい人たちを生み出してしまったなんて・・」


「それが歴史というものです。例え違う歴史になっていたとしても

必ず誰かが悲しい思いをする。それを後世のの者達が

どう受け止めるか、それが大事なんじゃないでしょうか」


「そうだとしても・・歴史って残酷ですね」

野中の目には涙が滲んでいた。


「歴史の成り立ちっていうのは案外、単純なんです。

野中さんが歩んできた歴史も辛いこともあったんでしょう。

でも、大事なのはその後に出会った人たちの受け止め方なんです。

今いる仲間を大切にしてみたら?

そうすれば悲しい歴史も色あせてしまいますよ」


国素裸くにすらさん・・」


その望まぬ想いの連続が物語となり、赤ずきんを生んだ。

それは事実かもしれない・・

そんな悲しい歴史にクリスもまた巻き込まれた一人なのかもしれない・・


現代に語り継がれる物語は歴史の一端でしかない。

その裏には知られざる想いが隠されている。


でも、それでも私は良いような気がした。



その後、私は野中を送り届け依頼は完結した。


思いもよらぬ推理劇は幕を閉じたわけだが、

田所教授たちは相変わらず童話の研究にいそしんでいるらしい。



数日後・・


事務所で退屈を持て余してる私の所に、突然 野中がやってきた。


「どうしたんですか?野中さん」


国素裸くにすらさん!私をここで雇ってもらえませんか!?」


「はい?」


国素裸くにすらさんと行動を共にして、

もっといろいろ知りたいって思ったんです。

国素裸くにすらさんといると面白いことがありそうな気がして」


「面白いって・・」

案外、天然なのか・・?そう思ってしまった。


「いや、でも、そんなに仕事があるわけじゃないし、

貧乏事務所だし・・」


「給料は少しでいいですから!」


って、ちゃっかりもらう気だ。


「でもね・・」


「じゃあ、相棒って形でいいじゃないですか!」


「相棒?」


「いわゆる、共同経営みたいな。だから相棒!」


「はい?」


「それに私、知りたいんです。歴史の真実を。

歴史は現代の人の、ある意味都合で書き換えられてしまう。

でも、事実は一つなんです。そしてその事実の先に私たちは生きている。

だから、間違った歴史だとしても、自分の手で確かめたいんです」


「でも、ここに居たからって・・」


「じゃあ決まりです!明日また来ますね」


そう言うと野中は帰っていった。


何か大きな嵐が過ぎ去ったような・・

そんな感覚に襲われ、疲れが一気にやってきた。


仕事もしてないのに・・




                     赤ずきんちゃんにまつわる 完


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