赤ずきんちゃんにまつわる 其ノ四
「赤ずきんちゃんが・・実在していたんですか?」
田所教授の側にいながら、しかもクリスの世話を頼まれていた野中がこの事実に気づいていなかったのか?
それはいささか疑問ではあったが、一応に驚いてはいるようだった。
「あくまで、ここにある資料から推測するとです。
そして、クリスはその末裔・・」
「そんな・・」
「そう考えるとクリスが狙われていた理由も納得がいくし誰が狙っているかも分かる」
「田所教授」
「そう、そして野中さん、あなたもクリスが田所教授に狙われていることに薄々は気づいていた。そうですね?」
「確信はありませんでしたが・・」
私達は田所教授がいると思われる図書室に急いだ。
図書室に飛び込み荒い息のまま田所教授を探す。
歴史や童話のコーナーなどを探すが田所教授は見つからない。
「どこへ行かれたんでしょう?」
少し焦り気味の野中を横目に私は自然と赤ずきんの本を探していた。クリスのことも心配であったが、赤ずきんの謎に引き込まれていたのだ。
それに気付いた野中がクリスを探さなくていいのかと問い掛ける。
「クリスが本当に赤ずきんの子孫だとすれば危険な状況ではないと思いますよ」
私の返事にどうして?という顔をする野中。
その時、野中は一人の女性に声をかけられた。
「梓!どうしたの?今日はクリスと一緒じゃないの?」
「ええ・・ちょと・・」
声をかけてきたのは野中の友人である佐々木である。
佐々木の問いに苦笑いを浮かべ返事を濁らせる野中であった。
が、すぐさま野中は佐々木に質問を返す。
「ところで、田所教授を知らない?」
「田所教授?岡山先生のところじゃない?借りてた本を返すとか言ってたから」
「岡山先生というのは歴史を教えていらっしゃる先生なんです」
佐々木と話していた野中はこちらに向き直し説明をした。
野中はさらに続けた。
「岡山先生のところに行きますか?」
「いや、もう少しここで調べたいことがある」
ところかわり、とあるアパートのとある一室で一人の少女が寂しそうな表情を浮かべて座り、うずくまっていた。
クリスである。
その傍らには手をつけられていないと思われるコンビニ袋が二袋。無造作に置かれていた。
ジュースやお菓子やパンなどの入った袋には目もくれず、ただ一点を見つめるその眼差しは何を思っているのだろうか?
その頃、私は赤ずきんについての自分なりの結論に近づきつつあった。
「だとするならば・・赤ずきんの真実は、悲しいな」
赤ずきんの資料を手に悲しき歴史の一部をかいま見た気がした。
「何か分かったのですか?」
野中が静かに尋ねる。
「赤ずきんの裏には悲しい物語が隠されてるのかもしれません。しかもそれは現代にまで続く」
「現代にまで?」
「ええ、それだけではなく、もしかすると我々の力の及ばぬ大きな組織が絡んでる可能性も・・」
「大きな組織!?」
「田所教授の元へいきましょう」
私と野中は田所教授がいると思われる岡山准教授の元へ向かった。
長い廊下を歩き、岡山准教授の元へ向かう途中で田所教授の助手である小山と
もう一人の助手の奥寺と出会った。
「国素裸さん、野中さん、田所教授は部屋に戻ってきましたよ」
私たちを見つけると小山はそう言い、続けて奥寺を私に紹介した。
「国素裸さん、こいつは僕の悪友でもある奥寺です」
「奥寺さん、よろしく」
「よろしくお願いします。クリスは一緒じゃないんですね、野中さん」
「ええ・・」
「こんなところではなんですから、教授の部屋に行きましょう」
奥寺にうながされ私たちは田所教授の部屋へ向かった。
部屋に入ると椅子に座っていた田所教授は立ち上がり私たちの方へ歩み寄ってきた。
「君が国素裸くんか、小山から聞いたよ。私を探していたんだって?
野中くん、クリスはどうしたんだい?」
私に近づきながら握手を求めるように手を差し出し、田所教授は質問を投げかけてきた。
その質問に間髪入れずに野中が応える。
「そのことで教授を探していました!クリスをどこへ連れて行ったんです!?」
「なんのことだい?」
目をまあるくして応える田所教授。
「とぼけないでください!教授がクリスを連れ去ったんでしょう?」
その言葉に側にいた小山と奥寺も驚きを隠せない様子でいた。
「待ってくれ、私にはなんのことだか!」
必死に否定する田所教授に詰め寄る野中。
そこに私が割って入った。
「ちょっと待ってください。僕に話させてください。
田所教授、あなたはクリスのことを調べていました。そして野中さんにフランスに行ってもらいクリスを日本へと連れ出しました。そうですね?」
「ああ、だがクリスを連れ去ったなどとは身に覚えがない」
「教授!まだそんなことを!」
「野中さん、まあ落ち着いて。
田所教授はクリスを連れ去った犯人ではありません」
「えっ!?どういうことですか?」




