下山事件にまつわる 其ノ六
大黒デパートを後にした私たちは
ある場所に向かって車を走らせていた。
そこは大黒デパートよりほど近い場所である。
三敏銀行。
園丘がデパートに向かう前に立ち寄った場所である。
銀行に到着し応接室に通された。
少し待っていると一人の男性が部屋に入って来た。
「お待たせして申し訳ありません。
私が支店長の安西です」
「警視庁特報係の浅部と申します」
「国素裸です」
「園丘様の事で聞きにいらしたんですよね?」
「昨日、ここに立ち寄った園丘さんは
安西さんに会いに来たんですよね?」
浅部が安西に尋ねる。
「ええ。そうですよ」
「どういったご用件で?」
「融資の件です」
「融資?」
「ええ。会社で必要になったお金を融資して欲しいという事でした」
続いて私が安西に質問する。
「開店前にですか?」
「お忙しい方でね。その日も挨拶もろくにせず
仕事の話のみでした」
「なるほど。滞在時間も短かったようですしね。
ところで、防犯カメラの映像を見せていただけないでしょうか?」
「防犯カメラ・・?
なぜ?」
「当然、銀行ですので防犯カメラは至る所にあるのでしょう?
園丘さんの様子を確認したいのですが」
すると安西は少し焦ったように
「い、いや・・あるにはあるのですが・・」
「なにか不都合でも?」
「防犯カメラの映像は本店に了承を得てからでないと
・・私の一存では・・」
「おやおや。一般の方を開店前に招き入れるのは許可は不必要でも
カメラの映像を見せるのには許可がいるのですか?
変わった会社ですね」
「い、いえ・・
と、とにかくカメラの映像は後日、お送りしますので!」
「そうですか。ではよろしくお願いします」
横で聞いていた浅部も安西に質問をした。
「ところで、園丘さんとはお付き合いは長いんですか?」
「そうですね。お父上様からのお付き合いですので
かれこれ40年ほどですか。
礼儀も正しい方でしてね、こんなにお忙しい時でなければ
ゆっくり話も出来たんですが・・」
「そうなんですね。何でそんなに忙しかったんでしょう?」
「さあ・・普段は大黒デパートにも行く方ではないんですけどね。
何があったのかは私には」
「そうですか。お忙しいところありがとうございました」
私と浅部は席を立ち、出口の方へ歩き出した。
が、私はもう一つ聞きたい事があった。
「あ!最後に一つだけ。
安西さんは園丘さんが大黒デパートに
行ったことをどこでお知りになったのですか?」
「え!?あっ・いや・・
今朝のニュースで・・」
「それは変ですね。園丘さんが大黒デパートに行ったことは
非公開のはずですが?」
「あ!いや・・勘違いでした・・世間話で!
奥様にプレゼントを買いたいとかで・・」
「挨拶すらしなかったのに世間話ですか・・
あ、いや大した質問ではないのでお気になさらず。
それでは失礼します」
私と浅部は部屋を後にした。
残された安西の表情からは笑みが消えていた。
銀行を出て車まで歩いていく途中、浅部は私に話を振った。
「まだ、発表されていないはずのデパートの件を知っているということは何か隠してるな」
「ええ。ところで浅部さん。
遺体発見現場も見ておきたいのですが」
「すでに現場検証は終わって運転再開されてると思うよ」
その時、浅部の携帯が鳴りだした。
携帯にでた浅部は二言三言、話をすると
携帯を切り私の元へやってきた。
「国素裸くん。鑑識の米田さんからで
園丘さんの遺体に付着していた赤い繊維が何か分かったそうだ。
国素裸くんの睨んだ通りじゅうたんのものだった」
「なるほど。では米田さんに大黒デパートのじゅうたんと
同じものか調べてもらってください」
「ああ、これからデパートに向かうそうだ」
「そうですか。浅部さん
ひとつお願いしてもいいですか?」
「お願い?」
「調べてほしいことがあるんです」
その頃、ある料亭で二人の男が密会をしていた。
一人は警察庁長官 的伊竜司。
もう一人は政財界の大物議員 佐々木英明。
「今回の件は大丈夫なんだろうな」
そう佐々木は的伊に問いただした。
「ご心配なく。今回の事件は例の件とは無関係です」
「私が言っているのは事件をきっかけにあのことが
明るみにでないだろうな、ということだ」
「そこまで気付ける刑事はいませんよ。
仮に気付いたとしても証拠は出てきません」
「何も出来んということか。
なら良いのだが・・」
翌日、私は園丘邸を訪れた。
すると、園丘邸に泊まった野中が慌てた様子で飛び出してきた。
「く、国素裸さん!
これを見てください!園丘さんの書斎からこんなものが!」
そういうと野中は1枚の封筒を手渡してきた。
「脅迫状か・・やはり、あったな」
「知ってたんですか!?」
「想像はしてた。
犯人の目星も付いてる」
「えっ!?」




