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歴史と謎  作者: 村背博秋
第2話 「信長にまつわる〜前編〜」
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信長にまつわる 其ノ七

ー岐阜県ー


岐阜は中国の故事にならい『岐山きさん』、『岐陽ぎよう』、『曲阜きょくふ』の3つの地名から

信長が『岐山』の岐と『曲阜』の阜を組み合わせて、

現在の県名である『岐阜』が誕生したとされている。


全国には47の都道府県があるが、

その中で名前が中国に由来する都道府県は岐阜県だけだそうである。


そして私たちは岐阜県の岐阜市歴史博物館に来ていた。



岐阜市歴史博物館は岐阜城のある金華山麓きんかざんふもとの岐阜公園内にある。

昭和60年に開館したこの施設は

原始時代から現代までの岐阜の歴史を紹介する博物館である。


特に戦国時代を生きた織田信長の生涯を体感できる

天下鳥瞰絵巻てんかちょうかんえまき」や

信長の時代の楽市場の様子を一部原寸大で復元した

「楽市立体絵巻」が展示されている。



館内に入り受付けを済ませると2階へと歩を進めた。

その中央あたり、解説書と共に長篠合戦図屏風は展示されていた。


その屏風を前に私の推理は確信へと近づいていた。


「なるほど・・」


いくつもの屏風絵を見てきてひとつの結論へと辿り着いた。


「なにか分かったんですか?」

野中は私に尋ねた。


「長篠の戦いは我々が常識として考えていたようなものではなかった。

恐らく名古屋市博物館の屏風の方が真実に近いのだろう。

でも、戦国時代の合戦を表したものとしては、どの屏風絵も間違ってはいない。

むしろ様々な状況をまとめて描いたと考えれば、研究材料としては悪くない」


「この屏風にも本能寺の変の謎に関するヒントがあると?」


「例えば、この屏風に描かれている旗に日の丸がある」


「ほんとだ」


「かつて源氏が日の丸を使っていたと言われている。

戦国武将の多くは源氏を祖にする人が多いため

日の丸を掲げていると考えられる」


「織田軍も武田軍にも日の丸がありますね」


「他にも両軍様々なマークが使用されているが

柴田勝家の旗や豊臣秀吉のひょうたんなどは史実で伝えられている通りのもの。

つまり、屏風に描かれている家紋や旗といったものは

特に信憑性が高いと考えられる」


「なるほど」


「それをふまえて織田信長を見てごらん」


「信長はあそこだから・・

あれ?信長の側におかしな人達がいる!」


そこには白装束をまとった3人の男が描かれいた。

さらに背中には六芒星が描かれている。


およそいくさには似つかわしくないその男達は、

誰よりも織田信長に近い場所に陣取り、

その様子から信長にとって重要な人物達であることは

誰の目から見ても明らかだった。


「あの白装束の男達は何なんですか?」

野中は見たこともない出で立ちの人物に好奇心さえ見せ問いかける。


「六芒星の家紋を持つ武将なんて居ない。

あれは神道集団が使う象徴図形なんだ」


「神道集団?イエズス会!?」


「そう、イエズス会も六芒星は使用していてもおかしくない。

忌部氏いんべうじである可能性もある」


「忌部氏?って?」


「古代朝廷における祭祀さいしになった氏族とされている。

そして信長の祖先が忌部氏だとも言われている」


「じゃあ描かれているのは忌部氏なんですか?」


「いや、可能性的にはイエズス会だろう」



私と野中は博物館を出て、岐阜城を遥か頭上に見る岐阜公園内を歩いていた。

岐阜公園は緑に囲まれた庭園であり、信長の庭をはじめ信長居館跡などがある。


「でも、それと本能寺の変とどう繋がるんですか?」

野中が核心となる質問をぶつけてきた。


「前にも言ったように本能寺の変には大きな謎が2つある」


「なぜ光秀は主君、織田信長を討ったかと

信長の消えた死体、ですよね」


「1つ目の謎、光秀の動機。諸説あるが単独犯説はまず考えにくい」


「黒幕説も様々な人物の名があがっています」


「しかし、そもそもあれだけ感謝と忠誠を示していた光秀がなぜ

信長に謀反を企てたのか?逆に信長も光秀のことは

むしろ秀吉より信頼していた。

その二人がなぜ仲違なかたがいをするようなことになったのか?

それが分からなかった」


私は核心である本能寺の変真実を野中に告げた。


「仲違いなどしていなかったんだ。黒幕は存在しない」


「黒幕がいない!?」


「強いて言うなら黒幕は

織田信長自身だ」


「!!!!

つまり、自作自演?」


「僕や野中さんが調べた限り、光秀は信長に変わらぬ忠誠を誓っていた。

そして、信長が光秀にひどい仕打ちをしたというのも疑わしいと。

さらに光秀は戦国一の切れ者と言われるくらい賢い男だった。


にも関わらず何の計画も無いような突発的とも思える本能寺の変を起こした。

秀吉を始め信長の家臣に仇討あだうちされることぐらい光秀なら分かっていたはず。

だが対策をしていた形跡がない。必要なかった、いや

それが、計画の内だったんだ」



信長、本能寺の変の真実。

その推理を語り私は岐阜城を仰ぎ見ていた。



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