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歴史と謎  作者: 村背博秋
第1話 「赤ずきんちゃんにまつわる」
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赤ずきんちゃんにまつわる 其ノ一

二年前・・・


カァ・・カァ・・


ここは、ヨーロッパのある地域。

カラスも鳴くような林の中。

カサッカサッと枯れ葉の上を歩き、

一人の日本人女性が一軒の古びた屋敷を訪れた。


「あなたがクリス?」


「・・・・・?」


____________________________________________________________


そして、現在の日本。


と、ある昼下がりのことだった。


私が営んでいる探偵事務所に、一人の20代くらいの女性と

明らかに外国人と思われる、16、7歳くらいの女の子が訪ねてきた。


私は、あまり冴えない が悪くわないこの街の片隅で

個人の探偵をやっている 国素裸(くにすら)ちノニ というものだ。


今時、探偵?

なんて思われるかもしれないが、これが意外と需要が有る。


ほとんどが浮気調査や盗聴器捜索みたいなもんだが・・

たまに奇妙な依頼も舞い込んできたりするから辞められない。


今回の依頼もそんな奇妙な依頼の一つである。



野中 梓と名乗ったこの女性は挨拶もそうそうに

本題を口にした。

「この子を無事、祖国まで帰してほしいんです」


「どこの国の子なんですか?」


「フランスです」


少し赤みがかった髪と青い瞳のその少女は

名をクリス・マンシニというそうだ。


「無事、帰してってことは、命でも狙われているんですか?」


「確信はありません。でも、その可能性があります」


なんでも最近、よく後を付けられたり

盗聴器を仕掛けられたりしているらしい。


しかし、命を狙われているという確信がないため

警察に保護を頼むわけにもいかず、この探偵事務所を訪ねてきたという訳だ。


「報酬の方は無事帰ることができたら、半分お支払いします」


そう言って彼女は封筒を差し出してきた。

その中には数十万ほどのお札が入っていた。


「こんなに!?」


「早めにお願いしたいのです。

 もしかすると、刻一刻を争うかもしれません」


「わかりました。そういうことなら、早速いきましょう」



飛行機のチケットは既に持っているということで

早速、車に乗り込み約2時間ほどかかる空港まで

ボディガードを兼ねて送り届けることとなった。



野中とクリスを

空港まで送り届けることになったわけだが気になることがあった。


それは、クリスの手にしっかりと握られた本だ。

なぜカバンに入れず、手に持っているのだろう?

そのことを含めて、いろいろ聞きたいことはあった。


「クリスの手の本はなんだい?」


車中で私は本のことを尋ねた。


しかしクリスは答えなかった。

代わりに野中が口を開いた。

「あれは日本の赤ずきんちゃんの本です」


「赤ずきん?」


「ええ、どおってことのない普通の本ですが

 これが目的でクリスは日本に来たようなものです」


「どういう事です?」


「それは・・・」

野中は口をにごした。

それを見て私は話題を変えざるえなかったのは言うまでもない。


「ところでクリスは日本語はわかるの?」


「多少は喋れますし、理解はしています」


「そうなんだ。それより、狙われているということに

 心当たりは?」


「それは・・・」

彼女は再び口を濁した。

しかし、ボディガードをする以上、そのへんの理由は知っておきたいところだ。


「心当たりがあるんですね?」


「はっきりとは・・・」


「そう・・ですか・・」


国素裸くにすらさんは、赤ずきん、知ってますか?」


クリスが初めて口を開いた。


「もちろん。子供の頃に読んだことがあるよ。

 日本人なら大抵の人は知ってるお話じゃないかな」


「赤ずきんの話、どうおもいますか?」


「そうだな・・・お母さんの言いつけを守らなかった子が

 狼に食べられる話。それをもってして、子供たちに何か をさとす。

そう普通の人は考えてるよね」


国素裸くにすらさんは違うんですか?」


「そうだな、俺ならあの話を介護問題ととらえるね」


「介護!?」


「そう、介護。

 発展した国がたどる道。年寄りが増え、離れた場所に追いやる。

 そして、介護を必要とする。が、やり手はいない・・

 なんてね。預言書みたいなものかなって。ノストラダムスみたいに。」


「そんな風に考えたことなかったです」


「でも実際、現実問題として日本も直面してますよね。

 おかしいと思いませんか?赤ずきんのおばあさんが

 なぜ、森の奥で一人で暮らしているかって?」


と、その時 私はあることに気づいた。


「付けられてるな・・」


「えっ!?」



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