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悠久の一  作者: さむちゃん
第二章 決意する異邦戦士
15/18

13 廃棄物処理論 二

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 大陸東部 トーロ・コロから西へ610km 24日目 自機標準時0102 海抜50m

 北緯30度 東経55度 川沿いの窪地

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 帰途につくまであと58分しかない。私は再び奴らの天幕周辺まで戻ってきていた。エク・ヴェリの姿を探すと彼は先ほどの歩哨していた場所に立っている。

 周囲に人の気配は無く、誰かが物陰に潜んでこちらを伺う様子も無い。エク・ヴェリは誰にも先ほどの出来事を話していないのだろう。彼は信頼に値する人物のようだ。

 私は少年の背後から接近して静かに声をかけた。


「協力に感謝する。エク・ヴェリ、いや振り向くな、そのままでいろ……よし聞いてくれ、お前は俺、いや私の信頼を勝ち得た。今までの私の非礼を詫びる。そして信頼には信頼を以って報いようと思う。お前たちは何を望む?」


 周囲の気配を探りながら少年はこちらに振り向いた。


「あの戦士はどうされたのですか、お答えしにくければいいのですが、彼が死んだとわかれば若干騒ぎになるかと思います。よろしければ騒ぎだすかもしれない団長を上手く丸め込んでこちらの都合のよい方向に考えを誘導することもできます」


「ん……?ああ、あれは川にいる、今頃は痛みも感じない世界にいるだろう。それはともかくお前には重ねて詫びる、疑ってすまなかったな。だがここは私にとって敵地だ、少しでも発見される危険を排除しておきたかった。」


「そうですか……ご心配もっともです、貴方の立場も理解できます。厚かましいようですが僕らの望みはひとつです、全員解放されて故郷に帰りたい。僕たちはこの境遇にあることを望んでなどいないのですから」


 エク・ヴェリは声を潜めて私に告げてきた、彼の願いに応えるべく私は声を抑え、


「お前たちの解放に繋がるかはわからないが私はこの一団を本国に戻すことなくひとり残らず始末するつもりだ。その後の生きる道はお前たちが決めろ。私がここにいる時間は今回はそう長くない、奴らが寝静まっている内に気づかれないようあと何人かは葬り去る。歩哨を受け持っているお前たちに悪影響がでないようにするにはお前の力が必要になるかもしれない、その時は頼りにしている」


「わかりました……あの戦士は川に用足しにいきその時に水獣に襲われて溺れ死んだ事にします。場所はどこですか?次の夜番の交代まで時間があるので確認しておきたいのです」


「ここから離れて問題はないのか?」


「理由付けはいくらでも出来ます、彼らからすれば逃亡さえしなければ問題ないみたいなので。僕から見れば戦士たちは油断しきっていて滑稽なことなのですが」


「わかった、ついてこい」


 私はエク・ヴェリを伴って再度あの川石のある場所へやってきた。

 現場をみた少年は衝撃を受けたようで若干興奮気味だったが、


「あの戦士は……もう水底ですね……それに、これは……すごい、川石がふたつになっている。貴方は恐ろしい戦士なのですね、失礼ですがお名前をお聞かせくださっても?」


「すまないが今は名乗れない。お前たちが生き残れたら名乗ることにしよう。ここの川の流れはそれほど速くない。沈んだ物を引き上げるのはそれほど苦ではないだろう?」


「ええ、そうなのですが。しかしここ一帯の水場は昼夜問わずに水獣が闊歩しているので誰も近づきたがらないというのが普通です。ですから戦士たちも余程のことが無い限り丸腰では近づかないのですが……でも大丈夫です、言いようはあると思います。その辺りは僕にお任せ下さい」


 エク・ヴェリは一考したあとそういって現場の様相をひと通り見て回った。1m半程度に割れている川石を動かそうとするが叶わない。


「改めて見ても信じられません、この石を叩き割るのでは無く断ち切るなんて。ヴイラ王都の大将軍にもできないことでしょう」


 彼は興奮気味になって独り言を呟いているようだ。私はそれには気にも留めず、


「ここなら誰にも聞こえないか。聞けエク・ヴェリ。私の目的はこの走竜侵攻団をトーロ・コロに入れないことだ。それだけなら今ここで闇夜に乗じて全て始末するだけでよいのだが、何者かの手で全滅したとあってはヴイラ本国が疑いをもちトーロ・コロに害が及ぶかもしれない。だから全ての戦士たちを事故にみせかけて始末するためにお前たちの協力が欲しい。どうだろう?」


 エク・ヴェリに問いかけると彼は少し考えたような素振りを見せたあと何かを決意したのだろう、すぐに語り始めた。


「わかりました、喜んで協力しましょう偉大な戦士よ。実は私たち奴隷のひとりがこの一帯に土地勘があって道先案内人となっています。戦士たちに土地勘のあるものがいませんから一団の進む道を意のままに向けさせることもできると考えています」


「……」


 私は頷いて沈黙を保ち続きを促す。


「貴方が罠を仕掛けてそこに一団が入り込めば多大な被害が出るでしょう、ですがこれだけの集団を一度に全滅させるのは大掛かりな罠が要ると思います。先ほどのお話ですとただの一人も本国に戻られると良くないとおっしゃいました。しかもあまり時間の余裕がありません、そうすると全ての戦士をいちどきに始末するには無理がある、そうではありませんか?」


「……そうだ、一度の事故で全滅させることは天災並の災害でも起きない限りは難しいだろう。一度で駄目なら数回に分ける、ということで道中で少しづつ数を減らそうかと考えた。しかしそうなると数を減らした一団は不安に駆られ本国に連絡して戦力の補強を行うかもしれない、それは私にとってもっとも避けねばならない事態だ」


「そこで僕は考えました。一団を狭い道へ導いて小さな罠にかけて分断します。後ろの集団には道先案内人を除いた僕を含めて4人の奴隷人足が居られるようにします。団長はなぜか先を急ぐ傾向があるので恐らく後ろの集団にはあとから追うようになんらかの指示が出ると思います、そのとき後方の集団にいる僕が上手く残った一団を誘導し大きな罠へ飛び込ませて一度に始末すればよいのです、これなら前の集団は最低でもその日が暮れて野営するまでは何の疑問も持たないと思います、どうでしょう?」


 この少年は一団を分断して罠にかけ団長に疑われること無く数を減らせるという策を示したのだ。少ない時間に余裕が生まれることに加え私が罠を大量に用意しなくてよい分労力は少なく理に適っているように思えた。これを私との数回のやりとりで策定するとはまったく恐ろしい智慧者だ。

 その策の成功は彼ら奴隷の中に道案内人が居るということで高確率で保証される。

 私が用意するのは罠の被害が奴隷たちに及ばないようにする事と一団を最初に分断するための仕掛け、そして残された後方集団を始末するための罠を用意するだけでよい。場合によっては足を封じた後方集団を全員射殺してもよいのだ。

 それが首尾よくいけば奴隷たちの幾人かはひとまずこの一団から解放される。生まれた時間で新しい策を立てつつ、さらなる罠を仕掛ける余裕ができることは間違いない。

 私はエク・ヴェリの提案に乗ることに決めた。彼の智慧は少年のそれではなく佐官級の戦術戦略眼を持った指揮官に等しい。

 裏付けを得るために私は彼に聞こえないようにCaesarに伝えてその策を分析させた。


「アイン、この作戦計画によれば当機がこのあとトーロ・コロに帰還する予定が若干遅れる可能性があります。集落にいる先行隊5人の行動がそれにあわせて予測しにくくなりますが問題ないでしょうか?」


「ああ、それは問題ないと踏んでいる。巨獣を引き込んで襲撃されると厄介だが奴らが自力で撃退できる規模なら集落に大きな被害は出ないだろう」


「わかりましたアイン、それではここに到達するまでの地形情報を整理して分析し分断地点を設定します。次に後方集団の移動を止め襲撃に適した地形を選定します、お待ちください」


 Caesarが分析結果を出すまで待つとして、私はエク・ヴェリに視線を移すと彼は怪訝そうな表情でこちらをうかがっていた。そういえば考えこみすぎて彼に返答していなかったな。

 私は彼に非礼を詫びる。


「すまない、これからの予定を考えていた、おおむね了解した。最初の分断を仕掛ける場所はこちらで設定する、仕掛ける際の目印と合図を決めておこう、目印は…」


 その時Caesarから作戦計画が提示されてきた。私はそれを読んで決行可能と判断してエク・ヴェリと実行計画を練り上げていった。


 次の授業は派手になりそうだ。


 ……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 大陸東部 トーロ・コロから西へ540km 24日目 自機標準時0158 標高190m

 北緯30度 東経56度 丘陵地帯の狭路

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 エク・ヴェリとの打ち合わせが意外とかかったが、無事トーロ・コロへの帰路についた。結局あの哀れな生徒1だけしか葬れなかったがそれはいい、地獄への道連れは増やす予定であるから寂しいことなどない。私の手ですぐに地獄の入り口は大盛況になると思う。

 帰還の道中に最初の罠である分断想定地点があるそこへ立ち寄って第1の策を準備する。用いる策は「落石」で連中のいくらかを巻き添えにしつつ分断すれば第1段階は完了だ。しかしそのためには一団が通過する時間までに私自身が分断地点にいなければならない。

 かなりな大立ち回りでかつ時間との勝負だ。MB-14CQCで岩場を切り割りそれを運びつつ山肌の斜面に並べる。そして一団が通過するであろう山道には伐採した立木を無造作に配置して奴らの足を鈍くさせて落石のタイミングを調整する。上手くいけば数人の戦士を葬ることができるだろう。

 30分後、2時間目の授業準備は整った。次は後方集団の卒業式予定会場を造らなければならない。そこでCaesarが移動を始めようとする私に、


「アイン、作戦行動中ですが忠告します。アインは先日よりほとんど睡眠していません。どこかで休息を取らないと今後の作戦行動中に重大なミスを起こしかねません。作戦計画によれば次のトラップ設定地での作業が終われば休息可能と判断します。そこで当機の自律自動制御での移動機能を用いつつ仮眠を取ることをお勧めいたします」


 全く気付いていなかったがそういえば私は昨日の朝はほとんど眠れていなかったのだ。今は作戦開始前で精神的に高揚状態であるからいいとして、何か少しでも油断が生じればその場に寝込んでしまっても不思議のない状態であるとCaesarが告げてきた。無理はいけない、Caesarの提案を素直に受け入れることにしよう。


「わかったCaesar、自分のことは他人のほうがよくわかるとはよくいったものだ、仰せに従うよ。次の作業が終わったら仮眠する。その間TASをAI制御で少しでも先へ移動させてくれると助かる」


「了解しましたアイン、睡眠前に導入剤を処方します。自動制御移動時の震動や衝撃程度では影響のない状態で休息可能です。


 私がTASの自動自律制御での移動機能を使用することは今回が初めてになる。宇宙空間内のオートパイロットと基本的に同じではあるが重力影響下では少し意味が違っていた。

 残充電量をチェックしつつ問題なければ復路を完全自動パワーアクチュエイト制御で移動できる。

 何を意味するかというと単体行動での休息と移動を同時に行えるという非常識的行動が取れるのだ。これもTASが過去のパワードスーツと一線を画す存在であることの証左であった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 大陸東部 トーロ・コロから西へ530km 24日目 自機標準時0257 標高220m

 北緯30度 東経56度 丘陵地帯の狭い盆地

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 移動を終えた私は次の目的地である周りを植生に囲まれた狭い窪地を見下ろす斜面にいた。ここで罠に嵌めた後続隊の足を完全に封じて殲滅する。

 私は10人程度の戦士たちが入り込むことを想定して進路も退路も断てるよう同じく落石を配置した。

 300mほどの窪地の空間に奴らを閉じ込め、MB-14の連続狙撃で射殺する。撃ち漏らしが出たら接近してMB-14CQCで斬り捨てれば晴れて卒業式は完了だ。

 準備が滞り無く終わるとCaesarが自動自律制御移動の行程をHMDに映し出していた。


「アイン、ご覧の通りに復路を設定しました。承認後当機は想定外の事態が発生した場合を除き自動自律制御でパワーアクチュエイトを駆動し移動を開始します」


 いつもの経口摂取用ストローが延びてきてそれを口にし睡眠導入剤入りの水を飲み込んだ私は身体の力を抜いて目を閉じる。それと同時にパワーアクチュエイターが自律駆動した。

 地面を踏みしめる音だけが伝わってきて私の意志とは関係なく滑るように静かにTASが移動を始めやがて加速していくと睡眠導入剤の影響なのか私の意識は薄れていった……


 ……


―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 大陸東部 トーロ・コロ西5km 24日目 自機標準時0528 標高30m

 北緯30度 東経60度 街道筋

―――――――――――――――――――――――――――――――――――


 私が目覚めた時、TASはトーロ・コロの集落からおよそ5km西を東に向かって速度を落としながら跳躍していた。

 目覚めたのは体の節々が痛みを覚えたからだ。向かう東の方角の空は明るみ始めていてまもなく日の出だろう。私は痛みに呻きながらCaesarにリクエストした。


「Caesar、体中が痛いぞ、完全脱力していてパワーアクチュエイターを使うとこうなるとは思っても見なかった。どうにもいい気分じゃない、鎮痛剤をくれ」


「おはようございますアイン、少しお待ちください……こちらをどうぞ、5分もすれば効果は現れます。ところで集落周辺3kmに多数の大型熱反応が検出されています。対応はどうしますか?」


「なんだって、巨獣か?すぐに分析して報告してくれ。それはともかく一度停止しよう……Caesar、自律自動制御中止だ」


 私は鎮痛剤入りドリンクを飲み込みながらCaesarに命令を下す。


「了解しましたアイン、自律自動制御歩行中止します。各部冷却のため5分間のインターバルを行って下さい。警告、残充電量50%。搭乗者は当機の稼働継続を望む場合充電行動を優先するよう要請します」


 充電容量(バッテリー)消費がかなり大きかったようだ、自動自律制御は当分の間使えないだろう。あと2日持たせるならば余程の緊急事態が起きない限りは問題無い計画だが果たしてどうなるか……


「分析完了、アイン、当機より11時方向、トーロ・コロ西方2km地点で巨獣複数個体と多数の人員が戦闘状態にあると観測されました。これ以上の情報収集にあたるには更に接近し3次元音響(ソナー)センサーによる分析が必要です」


「分析は続行、走竜兵団の5人を確認したら照準固定(ロックオン)、500mまで接近したら樹上で精密射撃体勢を取り待機する」


「了解しました。パワーアクチュエイター各部インターバルチェック終了、異状ありません」


 私はまだ痛みの残る身体に鞭打って観測地点への移動を開始した。先日朝とはうってかわって気力は満ちて戦意は高い。戦士にも休息は必要なのだ。


 ……


 果たして巨獣と集落の戦士たちに加え5人の走竜兵団が移動を繰り返しながら戦いを続けていた。大きさ8mほどの精悍な身体をもち土気色を帯びて時折赤褐色に光る肌を持つ姿。そして威圧感あふれる頭部はほとんどが顎部でそこから覗く大きな牙が戦士たちに獰猛に襲い掛かってくる。


 Caesarの分析ではマジュンガサウルスの個体らしい。私がかつてあの島で斃した牙頭の巨獣アルゴアサウルスとは違い少し小さいが凶暴であると想像できる。

 500mほど離れて観測している私に彼らの叫び声や怒号、指揮する戦士たちの鬨の声が聴こえてくる。


「大きすぎる!えい、投槍だけでは足りないぞ!」「穂先が折れた!黒石の槍が通じないぞ!」「投石だ!投石で頭を狙え!」「一箇所に固まるな、踏み潰されるぞ!散れ!」


 口々にわめいているが有効打を繰り出せない様子だ、そこへ加速をつけた走竜兵たちが一斉に騎乗突撃を敢行した。およそ20km毎時の速度で青銅の穂先にさらに錘をつけた太い槍で同時に吶喊した。 激突音が響くと巨獣は怯んで足が止まった。走竜兵たちは手綱を絞って一斉に方向転換し予備の槍を手にとり直していく。それをみた集落の戦士たちは勢いづいたのか次々と遠間から投槍を放ち始めた。

 空を切る投槍は数本当りはしたものの巨獣の固い皮を貫けずに地に落ちていく。巨獣は走竜兵たちの与えたダメージが大きかったのか移動速度が大きく落ちたようだ。

 それを見た走竜兵たちは再び囲うように距離をとって再突撃を図ろうとしている。一方、投槍が効かないとわかった集落の戦士たちは長槍と長盾を構えて周囲を囲い込み始める。

 ここが決め場になるだろうと感じ、私はMB-14を構えた。走竜兵のひとりに狙いを絞る。彼らの突撃の時を待つ。

 まもなく態勢を整えた走竜兵たちは一斉突撃にかかった。巨獣に殺到し次の瞬間強烈な打撃音が響いて錘付き青銅槍が深く巨獣の身体に食い込む。そしてひとりが走竜の手綱をひいて反転する瞬間、私はMB-14でその手綱を狙撃した。高初速で撃ちだされた2mmの弾頭は狂いなく手綱に命中する。

 走竜の一体が反転できず巨獣に衝突した。騎乗していた戦士は振り落とされ走竜は身体をくねらせながら足早にその場を離れていく。体勢を完全に崩した戦士に巨獣の大きな顎が開かれて覆い被さっていく。

 ばき、という音がしたかもしれない。哀れな走竜兵のひとりはそこで無惨にも巨獣の餌食になった。噛み砕かれた鎧が破片になって辺りに散らばる。引き裂かれた肉と血潮が地面を叩き戦士の断末魔の悲鳴は巨獣が何度か顎をつかうとすぐに消えた。

 しかし巨獣の受けたダメージも相当であったようだ、動きはゆるやかになっていき、やがて力尽きたのか地べたに倒れ伏した。集落の戦士たちが歓喜の声を上げ槍を構えて突進していく。

 結局彼らの長槍が十数本巨獣の身体を貫いてトドメを刺せたようだった。


「俺がやった!」「いや俺の槍だ!」「黙れ、俺こそ栄誉ある巨獣を斃した偉大な戦士!」「この愚か者ども!それより先に我らに加勢してくれた偉大な走竜の戦士を助け出せ!名誉の戦死だ、丁重にな」


 相変わらず口々にわめいている集落の戦士たちを叱咤するソータ・タッタの姿もあった。ひとまず集落の安全は守られ、同時に私の目論見も大成功に終わった。事故にみせかけて奴らのひとりを葬ることができたのだ、残された走竜兵たちにはまったくのアクシデントにしか見えなかったであろう。

 

 だが私は考えさせられた。彼ら走竜兵団の実力を垣間見ることができたのだが圧倒的すぎる。もちろんTASと比較してではなくトーロ・コロの戦士たちと比べてだ。少なく見積もっても1人で30人以上の戦力に匹敵するだろう。

 装備の質、統制され訓練された動きはこの一帯の文明圏では脅威的な戦力であることが証明された。さらに本体の侵攻団はこの5倍はいるのだ、到底トーロ・コロの戦力では防ぎきれないだろう。

 トドメを刺した集落の戦士たちは口々に走竜兵たちを讃えて喜びの歓声を上げているが、それがあと数日で敵になると知ったらどれだけの絶望が襲うか想像に難くない。

 次は同じ手は使えないかもしれない。私はMB-14を収めHMD越しに彼らの姿を観測しながら、次の一手を打つべく喜びに震える集落の戦士たちを他所に彼らより先にトーロ・コロへ入るために足早にその場所から離れることにした。

2時間目(レッスン・ツー)終了。残り28だ。

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