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 CG専用ソフト顔負けの多機能さで好評を博したキャラクターメイキング機能だが、肝心のゲーム本編はというと、システム云々ではなく、ゲームの世界設定について、猛烈な批判を受けたことがあった。

理由は、このゲームに登場する主要国家群が、実在する国をパロったものだったからだ。

 見せ掛けだけの自由と平等の国やら、勝ってるほうの勝ち馬に乗って領土や資源を掠め取ってばかりいる卑怯者の代名詞のような国やら、三枚舌外交を駆使して世界に紛争の種をばら撒いてきた国やら、呼吸するように易姓革命を繰り返してきた国やら、受けた恩を仇で返し、条約よりも国内法を優先させる価値観の共有できない自称先進国やら、もう設定を聞いただけで現実世界のどこの国をモチーフにしているのか、まる分りである。

 それだけなら、別に珍しいことじゃない。既存の小説や漫画にだってよくある設定だし、至極ありふれている。

 問題なのは、その国々の一つ、八紘やひろ帝國という国の設定についてだった。

 これが、どこからどう見ても、かつての大日本帝國を髣髴させる国家なのだ。

 なにしろ、国旗が日章旗だし軍旗に至っては、かつての帝國海軍の軍艦旗や、現在の海上自衛隊の自衛艦旗などで使用されいてる、十六条旭日旗をそのまま使用しているからだ。

 他の国々は、元の国が何なのか連想できる程度のものでしかないが、この八紘帝國だけは、連想も何も、あまりにも見た目どおりだった。

 それについて、国内の自称「有識者」や、某国の「平和を愛する諸国民」の方々が黙っておらず、グンクツノアシオトガー、カコノカナシイレキシガーなどとやかましく騒ぎ立て、一時期ちょっとした話題になった。

 ゲームのタイトル『インペリアルセンチュリー』からも分るとおり、この八紘帝國がゲーム世界における主役国家という位置付けだということも、それに拍車を掛けていたのかもしれない。

 そんな国内外からの非難を受けた運営サイドはというと、弁明や謝罪をするどころか、癇癪を起こす彼らを挑発するかのように、大いに煽り立てた。

 あろうことか、運営公式サイトに、開発者のインタビューとして、「本当は大日本帝國としてそのまま出したかった。理由は、地球上の全ての国が滅亡しても、日本だけは未来永劫存続していると思うから」などというディレクターの発言を掲載したのだ。

 しかも、八紘帝國の元首皇命すめらみことは、人類が地球上で生活していた頃から既に世界最古の歴史を誇っていた、とある国(言うまでもなく、日本のことだ)の元首(これも言うまでもなく、天皇のことだ)の末裔という設定までぶち上げたのだ。

 その結果、自称「有識者」や某国の「平和を愛する諸国民」の方々は、更なる火病を発症してしまい、ネット上では彼らの発狂ぶりをネタに大いに盛り上がったりした。

 ゲームのプレーヤー数が爆発的に増加したのも、この一件で大々的に名が知れてからだったように思う。

 すげなく扱われた「有識者」と「平和を愛する諸国民」の方々は、運営サーバに対して得意のDDos攻撃を行ったが、運営側は、即座に国内の特定の新聞社や「平和を愛する諸国民」の国別ドメイン――具体的に言うと.cnや.kr――のブロックを行った。

 それでも、日本国内や第三国のプロキシ、VTN(踏み台サーバ)を経由してしつこく攻撃してくる輩も存在したが、ある時期を境に攻撃がぴたりと止み、時を同じくして、「平和を愛する諸国民」の偉大なる祖国の基幹ISPのサーバ群が、原因不明の不具合を起こし、大規模なインターネット接続障害を引き起こした。

 それ以降、運営会社に対する攻撃は無くなり、これについてネット上で出所不明の噂が飛び交ったが、やがてすぐに下火になって有耶無耶のうちに収束してしまった。

 ニホンノウケイカガーなどと騒ぎ立ててサービス停止に、あわよくば謝罪と賠償を引き出そうと目論んでいた一部の人々に出来たのは、ネトウヨオンラインなどという蔑称でレッテルを貼って、多少なりとも自分達の溜飲を下げることだけだった。

 そんな一連の経緯があったものの、ゲーム自体はわりと面白いので、俺も含めて、気にせずプレイしている人のほうが殆どだ。

 噂では、八紘帝國以外の国に所属して、帝國に敵対する行為――例えばPKなどの宙賊行為を行って憂さを晴らしている極左の人もいるらしかった(とある左翼活動家が、バカッターで自慢げに暴露していたらしい)

そういうプレイは、まあ、ありだと思う。

 PK行為が可能なのははゲームの仕様だし、あくまでゲームの中で憂さを晴らすだけというのであれば、官邸や米軍基地前でキチガイのように奇声を発したり、中指を立てたりすることに比べれば、ある意味健全だろう。

 少なくとも、リアルで他人様の迷惑にはならないのだから。

 


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