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『エンジェルフライト』の書評

タイトル:「天職」

自分にしかできない仕事=天職なんじゃないかな…。

 Calling(召命、天職)という言葉が、脳裏に浮かんでは消えた。ここまで生きてきた20年、私はこれでよかったのか。就職が決まり、4月1日を待つ学生とも社会人ともいえない不安定な時期の私に、本書はそう問いかけてきた。天職とは何だろう。私に出来ることはあるのだろうか。私がしたいことは何なのか。就職活動中に何度となく己に聞いてきたが、その答えを出すことなく現在に至った。生活していくために、私は就活をした。

 国際霊柩送還士という仕事は、肉体的・精神的に厳しい仕事である。昼夜問わず鳴る電話、ご遺体から離れられず、遺族の悲しみに触れることになる。海外から帰ってくるご遺体は病院で亡くなる場合とは異なり、今にも起きてくれるのでは・・・そう思わせる眠るような表情は少ない。精神的に耐えられる人は限られる仕事だ。

私にとって専門性とは、ある人しか持ち得ない技術を指すと考えていた。だが、熱意や人生観、根源的に自己を確立する精神的な側面において、ある人にしかできない仕事があった。精神など年月が経てば関係なくなると考えていただけに、専門性とは何か訳がわからなくなった。国際霊柩送還士は日々ご遺体と接する。忙しい中で、ご遺族のことを考え、細部まで意志を汲み取り慮る。私には出来ない…直感的にそう感じた。残された者が、区切りをつけられるように、「さよなら」を言えるように、彼ら・彼女らは仕事にあたる。のしかかる使命は重い。

 裏表紙には『愛する人を膜すことの悲しみや、死のあり方を真正面から見つめる』とある。だが、私には“死”という重く哀しいテーマよりも、国際霊柩送還士という“仕事への誇り”に心揺さぶられた。この仕事ができる人は多くいない。誰にでもは出来ない仕事、彼・彼女らにしかできない仕事である。プロフェッショナルと言わずして何と言おうか。

 手に職を、そう考える若者は多い。だが、専門職とは何を指すのか。国際霊柩送還という仕事を知ることで、私が抱いていた価値観は大きく変化した。死という若者には触れにくいテーマを主軸に読むのではなく、仕事への責任と誇りについて考えを巡らせながら、本書を読んでみても面白いと思う。

人生を変えるような本はありますか?と聞かれたなら、国際霊柩送還士という仕事を描いたノンフィクション作品を、私はおすすめするだろう。

(記述:平成27年2月11日)


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