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同じそらの下に

作者: 黒宮湊

これは、私が中学生の時に初めて書いた、本当に、一番最初の小説です。

なので、文がまだ拙いです。

すみません。

恋愛小説を書くのは苦手な私ですが、この話だけはうまく書けたのではないかと思っています。

恋愛小説を書くのは、今回が初めてで最後だと思います。

そんな私が心を込めて書いた恋愛小説、どうぞ、御覧になってください。

 私には好きな人がいる。


 彼は病気で入院している。


 私は毎日お見舞いに来ている。


 だけど、


 彼に会ったことは一度しかない。


 友達のお見舞いに来た時にあいさつをしただけ。


 私の一方的な一目惚れ。


 こんなのストーカーみたいだって思ってる。


 だけど、


 いつも彼の顔を見たくなる。


 だから、


 私は今、ここ(病院の中庭)にいる。




 窓から見える彼の顔。


「…もう一度話してみたい……」


 けど、友達は退院している。

 もうお見舞いに行くような人はいないし、彼に会うために病院に入っていく勇気なんて私は持ち合わせていない。


「…こっちに気付いてくれないかな……」


 彼はいつも空を見ている。

 少し悲しげな顔をしながら…。

 その視線を下にしてくれたら……私がいるのに…。

 私だって『空』なのに…。


「あ、もうこんな時間…」


 そろそろ暗くなってきたため、私はその日はもう帰ることにした。


 私は写真部に入っている。

 最近の写真は空ばっかり。

 理由は、彼がいつも空を見ているから。


 彼と同じ空を見たい…。


 そう思って空を撮ったのが始まりだった。


 彼は空を見て何を思っているんだろう…?

 私の頭の中は彼の事ばっかり。

 勉強にも集中出来ない。

 これが…

 いわゆる『恋』なのかな…。




 今、6時間目の授業中。

 この授業が終わったら掃除して部活。


 ……早く彼に会いたい…。


 といっても見てるだけだけどね…。


「……はぁ…」


 授業の事なんて頭に入らないから、私はずっと空を見ている。


 今、彼も見ているかもしれないから……。




 部活が終わった私はすぐに病院に来た。

 もちろん、彼を見に。


「今日も空を見てるのかな…?」


 そう思って彼の病室の窓を見た。


 ……彼の顔が無い…。


「今日は体調悪いのかな……」


 そう思った私は帰ろうとした。


 だがその時、


 私は、空を見つめる彼を、目の前のベンチで見つけた。


「あ…!」


 思わず発してしまった声に彼が気付いた。

 そして、声をかけてくれた。


「君、いつもここにいるよね? 友達か家族のお見舞い?」


 か、彼が私に話しかけてくれた!


 私は嬉しくてしょうがなくて、本当に嬉しくて、嬉し過ぎて顔がふやけてしまう!


「あ…! えっと…!」


 あなたを見に来てます。


 なんて言えるわけない…。

 私は返答に困った。

 すると彼は申し訳なさそうにこう言った。


「あ、いきなり声かけられても困るよね…。僕はあそこの病室からいつも窓の外を見てるんだ。その時にいつも君を見かけてたもんだから……」


 私に気付いてた!

 いつも私がいる事を知ってた!


「あっ。そういえば前に、ロビーで会った事あるよね?」


 そんな事も覚えていてくれた!

 今日の私は幸せ者だ…!


「あ、はい! あります!」

「やっぱり? 良かった。間違えてたらどうしようかと思った」

「あってますよ!!」

「アハハ…! 元気だなー」

「あ…!」


 しまった!

 嬉しすぎてハメを外した!


「そろそろ戻りますよー」


 そんな私と彼が話していた時、看護師さんが彼を呼んだ。


「あ、もうそろそろ病室に戻らないと…」


 彼が行ってしまう…。

 もっと話したかったな…。

 そんな少し寂しげな顔をした私に彼は言った。


「今度は病室においでよ」

「え? いいんですか?」

「いいよ。待ってるから、いつでもおいで」

「は…はい!」


 やった!!

 彼と話せただけじゃなくお友達になっちゃった!

 こんなに幸せな事は無い!


 そんなウキウキ気分で私は帰路についた。




 次の日、

 休日だったため、私は少しオシャレして1時に病院に行った。


 病院に着いて彼の病室を見る。

 彼は今日も空を見ていた。


 その顔はやはり悲しげだった…。


 するとその時、彼が私に気付いて手を振ってくれた。

 私はすぐに振り返した後、病室へ向かった。



 病院の中に入り、彼の病室に行こうとしたけど、彼が何号室か知らなかった…。


「何号室なんだろ……?」


 私がどうしようか考えていたら、急に後ろから声がした。


「203号室」


 その声に私が振り返ると、そこにいたのは彼だった。


「あ…!」


 彼はニコッと笑ってくれた。

 そして無言のまま歩いていき、私は静かに彼についていった。



 彼の病室の前に着いた。

 そこには『緑川 天』と書いてあった。


「てん…くん?」

「僕の名前は『天』と書いて『そら』って読むんだ。」

「そら…!?」


 漢字は違うけど同じ名前だったんだ!

 何という奇跡!!


「あ、そういえば、君の名前は?」

「あ…。『空』って言います…」

「へー! 同じ名前なんだ! 凄いね!」


 自分の名前を言うのがなんか少し恥ずかしかった。

 でも、何故かとても嬉しいと思った。



 私は彼の病室に入った。

 そして彼は……、天君はベッドに座った。


「僕はこの窓からの景色が好きなんだ」


 知ってるよ。


 そう言いたかったけど、そんな事は言えない。


「綺麗な景色ですね」


 今、天君が見ていた景色を私は見ている。

 この窓からの景色は病院の中庭が見えて向こうの方に山が見える。


 そして、空がよく見える。


「僕はここからよく空を眺めてるんだ」


 それも知ってるよ。

 でも…天君はいつも悲しげな顔で空を見つめている…。


「…空を見て何を考えているんですか?」


 私はいつも疑問に思っていた事を思わず聞いてしまった。

 すると天君はまた悲しげな顔をして、こう言った。


「何で僕なんだろう……ってね」


 それから天君は自分の病気について話してくれた。


 天君は現在17歳で、生まれつき心臓が悪いらしく、移植をしてくれるドナーを探しているらしい。

 小さい頃から入退院を繰り返していて、学校にも少ししか通えていないらしい。


「思いっきり運動してみたいし、友達とたくさん喋りたい」


 天君のしたい事は、私には簡単に出来てしまう事だった。

 そんな事ですら天君は出来ない。

 それが、天君が空を見ながら考えていたこと…。


「変わってあげたいな…」


 ふとこう言った私に、天君は嬉しそうな顔をした。


「空ちゃんは優しい人だね。今どきそんな事言う人滅多にいないよ」


 名前を呼んでくれた。

 嬉しかったけど、私の顔は暗いままだった。

 だって、そんな事を聞いて笑うわけにはいかない…。

「会ってからまだ1日しかたってないのに、随分と前からの友達みたいな気がするよ」


 天君は嬉しそうに言ってくれた。

 私も嬉しかった。

 こうやって天君と話せている事が何よりも幸せ。


 でも天君は、私が思っている以上に辛い人生を歩んで来ていた…。

 今の私の顔は、ひきつり笑顔だった。

 今、天君の前で思いっきり笑顔でいる事は、酷だと思ったから…。



 それから私たちはずっと話していた。

 でもその日は母に買い物を頼まれていたので、4時に病院を出た。

 帰りの道は悲しくもあり、淋しくもあり、そして嬉しくもあった。

 胸の中は幸せでいっぱいで、頭の中は天君の事でいっぱいだった。


 恋って、幸せなのに切ないものなんだね。



 私は母と父と弟と妹の計5人で暮らしている。

 妹は小学生になったばかり。

 弟は中2。

 母と父は働きに出ている。

 そして私は高1。


 いつも母と父の帰りは遅い。

 だから、家事のほとんどは私がしている。

 そんな私が家に帰ると、妹と弟が宿題をしていた。


「私も勉強しないと……」


 帰ってきてすぐに私は急いで夕飯を作った。

 そして皆で夕飯を食べた後、二階の自分の部屋に行った。



 机にはついてみたものの、頭にあるのは天君の事。


「同じ名前だったんだ…」


 漢字は違うけれど、本当に奇跡だ。

 彼との繋がりは、すべて『空』だ。

 私は自分の名前を初めて誇らしく思った。


 そして私は空を見た。

 太陽が沈んだ今はもう空は暗い。

 でも、星が綺麗だった。


 きっと彼も今、同じ空を見ているんだろう…。




 私はその日から毎日、彼に会いに行った。

 『見に』ではなく『会いに』。


 でも最近、彼を近くで見ていて分かった事がある…。

 ………彼は日に日に弱ってきている…気がする…。


 私は病院についたら彼の病室の窓を必ず見る。

 彼が空を見てたら元気な証拠。

 それを確認してから彼の病室へ行く。

 彼が苦しい時に行ったら迷惑になるから…。


 それに、彼は2日連続で顔を見せない事はない。

 その事に私はとても安心していた。




「幸せだなー…」


 最近、毎日が充実している。

 幸せ過ぎて怖いくらいだ。

 そんな私が机に視線を下ろした時、机の上のカメラが目に入った。


「あ、そうだ! 私が撮った写真を見てもらおっ!」


 そう思い立った私は写真入れから数枚の写真を取り出した。

 空の写真5枚と飼ってる金魚の写真3枚。


「見せたら何て言うだろう…?」


 私は楽しみで楽しみでしょうがなかった。




 次の日。

 私はいつもより早めに病院に向かった。

 病院について彼の部屋を見たら、天君の顔は無かった。


「今日…大丈夫かな…?」


 私は心配しつつ、ちょっと速歩きで彼の病室に向かった。



 病室についてノックをしてみた。


「どうぞ」


 彼の声がした時、私はほっとしていた。

 もしかしたら…、と思っていた自分がいた。


「失礼します」

「今日は早いね」


 彼はベッドに寝ていた。

 昨日より声が擦れているような気がした。


「今日は天君に見せたいものがあって…」


 そう言って私は写真の入った封筒を渡した。


「何だろう?」


 彼は慎重に封筒を開けて、そして嬉しそうな顔をした。


「空だ……」


 天君に呼び捨てで呼ばれたみたいで、私は少し気恥ずかしくなった。


「そ…その写真…私が撮ったんです…」

「へぇ~。そうなんだ。凄く綺麗だよ」


 天君は嬉しそうに空の写真を見てくれていた。


「この金魚飼ってるの?」


 金魚の写真を笑顔で見ている。


「はい。竜金だから『竜』って言う名前なんです」

「アハハ…! そのままじゃん!」

「フフッ…!」


 彼が笑ってくれると私も思わず笑ってしまう。

 彼の魔法にかかってしまったように…。


 こんな楽しい日々が毎日続いてほしいと思った。

 でも、今日の彼は顔色が悪い…。

 きっと体調が悪いのに無理してるんだ…。


 そう思った私は、いつもより早めに帰る事にした。



 ……私が病院を出た後…、病院が少し慌てていた気がした……。



 ご飯を食べてすぐに部屋に戻って明日持っていく写真を選んだ。

 天君の喜ぶ顔が早く見たいから、その日は9時に寝た。

 でも、明日は学校があるという事に、寝る直前で気付いた。




 学校にいる間、私はずっとそわそわしていた。


「早く学校終わらないかな…」


 そして今日も空を見ていた。

 今、天君が見ている空を…。




 ようやく部活が終わり、私は急いで病院に向かって走って行った。


「今日も喜んでくれるかな…?」


 楽しみばかり膨らんでいた。




 病院についた私は彼の病室の窓を見てみた。

 何故か、今日も彼の顔が無かった…。


「あれ……?」


 私は嫌な予感がした。

 今まで2日続けて彼の顔を見なかった事は、一度も無かったからだ…。


 私は急いで彼の病室へ向かって走った。

 そうでない事を祈りながら……!!





 ……そして…、




 私の…悪い予感が…当たってしまった……。



 彼は……



 天君は………ベッドにいなかった……。




 天君の代わりに……、そこには花束が置いてあった……。




「……う……そ…………」


 私は信じられなかった…。

 信じたく無かった…。

 昨日あんなに笑っていたのに…。

 あんなに幸せそうだったのに…!!


 私の目からは涙があふれていた…。

 幸せだった日々がこんなにも早く終わってしまうなんて…考えたくもなかったし……こんな事に……一番なってほしくなかった…。


「……これ…?」


 よく見ると机には手紙が置いてあった。


 『空ちゃんへ』と書いてあった。


 私は、その手紙に涙が落ちないように、上を向いて読んだ。




『空ちゃんへ。

 手紙を書こうか迷ったけど何も言わずにいくのは嫌だったので書きました。

 率直に言いますが、僕はもう長くないみたいです。 空ちゃんがこの手紙を見てる時にはいなくなってると思う。

 ごめんね。

 空ちゃんといる時間は、とても楽しかったよ。

 空の写真を見せてくれてありがとう。

 空ちゃんは将来きっと良い写真家になれるよ。


 あとね、本当は空ちゃんがいつも僕を見てたの知ってたんだ。


 でも、


 僕も空ちゃんを見てたんだよ。

 知ってた?


 いつも空を見るフリをして空ちゃんを探してた。

 前に挨拶してくれた時に可愛い子だな、礼儀正しい子だなって思ってたんだ。

 まぁ、いわゆる、一目惚れってやつ。


 これで最後になるけど…、僕は空ちゃんがずっと好きだったよ。

 たくさん話してくれてありがとう。

 恋をさせてくれてありがとう。


 じゃあ、お元気で。

 風邪引かないでね。

 天                     』




 私は涙が止まらなかった…。

 天君が私を好きだったなんて全然分からなかった…。

 初めて会った時から…両思いだったなんて…!

 もっと早く言ってほしかった…!

 もっと前から会いたかった…!

 もっとたくさん話しておいたらよかった…!!

 そしたら…!!

 こんなに後悔しなくてよかったのに!!!


 彼の手紙には所々に滲んだ所があった。


「天君も…泣いてたんだ…」


 手紙を読み終わり、天君のいたベッドに伏せて泣いてる私を看護師さんが見つけて慰めてくれた。

 でも、その優しさが私をさらに泣かせた…。


 天君の突然の死が、まだ私は信じられなかった…。




 その日、家に帰ってから私は部屋に閉じこもった。

 こんなに悲しい事は無い…。

 好きな人に……天君にもう会えないなんて…。


 何もやる気が起きなかった…。

 何も考えられなかった…。

 だからその日の夜…私は眠る事が出来なかった……。



 次の日、

 なんとか学校には行ったものの…やる気が出ない…。

 何も考えられない…。

 授業中はいつも以上に上の空だった。


 ただ…ずっと空を見つめた。


 もしかしたら、天君もどこかで見ているかもしれないから。


 彼と同じものを見ていたい…。

 彼と繋がっていたいから…。


 だから…、


 今日も明日も…毎日…毎日…


 私は…空を見続ける……。


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