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エスパーワールド  作者: 碧鬼


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藤原の能力

藤原が山道を半分まで駆け上がった時、左側の木々の間からいきなり飛び出してきた大柄な欧米人の2人組とぶつかりそうになる。


「おっと」


藤原が足を止める間もなく、2人はそれぞれ手をかざして能力を発現させてきた。

1人は50cmほどの火球を3つ同時に放ってくる。

しかしその炎は藤原の体まで届く事はなく、まるで壁にぶつかったように弾けた。

そしてその直後に、


ビキッ!


ガラスにヒビが入った時のような音と共に、藤原の左肩に傷が奔った。

藤原は傷にはかまわず、火球を打ち出してきた男に手をかざして、


ゴスッ


火球を再び放とうとしていた男の側頭部が鈍い音を立て、そのまま地面に倒れて昏倒する。


藤原の能力は、見えない壁を発現させるというもの。

目には見えない鉄板のような物を発現させる。

大きさは手の平位から、自分の身長と同じ位のサイズまで調整できる。

強度は鉄板とほぼ同じ。

利点は、見えない為に相手にとってはどういう能力なのか判断できにくい事。

そして、能力としては極めて単純な部類に入る為、発現させる時に掛かる負荷が極端に少ない事と、発現させられる枚数が多い事。

仮に、藤原の能力の力を3000として、発現させる時に掛かる負荷を2とするなら、単純に計算して1500枚の鉄板を発現できる計算になる。

ちなみに…それを昔楽羅に話した時に、無理やり付けられた能力の名前はサウザンドプレート。

せっかく名前を付けるならもう少しひねって欲しいと抗議したが、聞き入れてはもらえなかった…

慎一郎と共にヘリの爆発に巻き込まれながらも、吹き飛ばされてすらいなかったのは、この能力をあらかじめ発現させていたからだ。

ヘリに能力を掛けていなかったのは、ヘリの表面積が人よりもかなり広い為、多くの枚数を発現させなければならず、襲撃されるか分からない段階からそれをするには、精神的な負担が大きいと思っていたからだ。


そして今は火球を弾き、その相手をプレートで殴りつけて昏倒させた。

だがもう1人の能力は、そのプレートを貫通して肩に傷を負わされた。


「2対1というのは話ができませんでしたが、これで少しは話を…英語は通じておりますか?」


男と距離を取ったまま、藤原は英語で対話を試みた。

男はそれには答えずに、再び手をかざして、


キッキキンッキキン


今度は藤原の体に傷が奔る事は無く、耳障りな金属音が連続的に聞こえる。


「先ほどは3枚重ねているのを貫通されてしまいましたからね…今度は丸い曲面型に形を変えてみたのですが、上手く貴方の能力を弾いているようです。

貴方の能力も私と同じで目には見えませんが…細い針状にして貫通力と威力を高めているのですか?

私のプレートを3枚とも貫いたにしては、肩の傷がそれほど大きくはなかったですからね。

まあそれは置いておいて、貴方の素性を話しては貰えませんか?

その為に貴方を気絶させる事無く、こうして会話しているのですが…何が目的でここに居るのかだけでも構いませんので。

もしどなたかに雇われているなら、その雇い主以上の礼金を払いますが?」


どうにか相手から情報を聞き出そうとした藤原だったが、相手の男は一切無視して今度は藤原との距離を詰めようとして…


ゴンッ


「グッ?」


額を強打してその場にうずくまってしまう。


「無理ですよ、貴方の前後左右周囲2mをプレートで囲んでありますから。

交渉はしないという事ですね?残念です」


藤原はそう言いながら男の真上からプレートを落とし、昏倒させる。

そして周囲のプレートを消し、男に近寄ってポケットとサイドバックを調べ、液晶端末と無線機を見つけた。


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