掛け値なしの天才、あるいは化け物
このいろいろな能力を扱うという事に関しても、掛け値なしの天才、あるいは化け物と言ってもいい人間が居る…
慎一郎がそれを知ったのは、転校してから4日目の午後だった。
この日の午後は普通の授業は無く、学年全体での能力の訓練をグラウンドで行っている。
それぞれが扱える能力をより深く理解し、正確に、よりスムーズに扱えるようにする為の訓練だ。
能力は人によって、使えるようになる年齢に差がある。
だいたい小学校に入ってから卒業までの、6年間で使えるようになる。
しかし、それは自分達の能力に目覚めたに過ぎない。
当然スポーツ等の他のジャンルと同じ様に、きちんと自分達の能力について理解し、それに似合った訓練をしなければ能力は大きくならないし、上手く扱えないと怪我をしてしまう原因にもなる。
だから学校側としては、能力に目覚めた生徒のそれぞれに対し、適切な講師を学校に招いて指導をしているというわけだ。
それは高校生になっても変わらない。
だが、一般的な能力を発現できない慎一郎にとっては意味が無い事なので、グラウンドの隅にある花壇に腰掛け、その訓練の様をただ眺めていた。
前の学校では、訓練が終わるまで暇だったのだが…この日は違った。
訓練が始まって10分程した時…グラウンドに居た生徒全員が、その中央に注目したまま動かなくなった。
そして次に見たその光景のせいで、慎一郎は生まれて初めて頭が真っ白になる、という意味を知った。
なにしろそれは、グラウンドの上空をほとんど覆ってしまうような、直径が200メートルはありそうな…
バカみたいなサイズの炎の塊なのだから…
頭に浮かぶのは単語の連続、
(デカイ…デカ過ぎだろ…隕石? いや、止まってる?爆発?それなら一瞬だ……ならこれは…誰かの能力かよ!!)
その光景は能力によって生み出されたと理解してからは、ほとんど止まっていた頭の回転が急速に回りだす。
(今まで、テレビやネットでも見た事がないような大きさ。これだけのサイズとなると、国内トップクラスのヤツでも発現は難しい…いや、おそらくは無理だ。
だから、学校に教えに来るような講師のレベルじゃあり得ない。
こんな事ができるなら、テレビにでも出た方がはるかに儲かるからな。
なら…これはここに居る生徒の誰かがやったのか?)
そこまで考えたところで、巨大な炎の塊は消え去り、それと同時にグラウンド全体から拍手が起こった。
と、急にその生徒達がモーゼのように割れ始めた。