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エスパーワールド  作者: 碧鬼


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44/105

今、この時から…

慎一郎の言葉を聞いていた楽羅は、目を閉じて深く頷いて、そして華が開くような笑顔になり、


「やっぱり…慎は慎だね」


「どういう意味だ?」


「貴方は、私がずっと憧れつづけた…私の理想像そのままでいてくれた…だからね…」


楽羅は椅子から立ち上がり、


「あの時、船でした約束覚えてる?」


慎一郎の手を握って、緊張した声でそれを切り出す。


「ああ、大丈夫。ちゃんと守るさ、でも俺にできる事だけだぞ」


「分かってる…言ったでしょ?慎にしかできない事だって」


楽羅は慎一郎の手を握ったまま片膝をつき、そのままの姿勢で慎一郎を見上げると、今までずっと秘めてきた想いを口にする。


「ずっと、慎の事が好きだった…そしてこれからもその想いは変わらない。…だから…

今、この時から私は貴方を主人とし、永久に愛すると誓います。

どうか、私を生涯の伴侶とする事を約束して下さい」


そう言って片膝をついたまま、慎一郎の手の甲にキスをした。

慎一郎はしばし呆然としていたが、楽羅の肩が震えている事に気付いて、


(本気か…いや、それはそうか、冗談でこんな事を言う奴じゃない。

何で俺なんだ…こんな所に住んでるなら、俺なんかよりもよっぽど良い男に出会うだろうに。

そりゃ…俺だって楽羅の事は好きだ。

一緒になれるなら、どんなに幸せだろう…とは思うが、俺なんかじゃ不釣り合いもいいとこだ。

…いや、違うだろ!馬鹿か俺は!

選んだのが他ならぬ楽羅自身なら、俺も己の本心で応えるのが筋だろうが!

自分じゃ不釣り合いだとか言って、カッコつけて逃げてんじゃねえよ!!)


慎一郎は楽羅の手を引いて、立ち上がらせると、そのままその体をそっと抱き締める。

泣いている楽羅が、その涙を見せない為に顔を伏せているのなら、まずはその涙を止めなければならない。

慎一郎は楽羅の背中を、優しくたたく。

そのまま自分の気持ちを伝える…


「楽羅…ありがとう。

俺の事を好きでいてくれて、本当にありがとう…

俺も楽羅が好きだ…

ごめんな…俺鈍いから…苦しかったろ…

大丈夫、俺はここにいる」


慎一郎は、どうにか楽羅を落ち着かせようとして、背中をさすったりしたが、楽羅は慎一郎の言葉を聞いた途端に、声を上げて泣き出した。


「うっくっうええぇ…ずっどあいだがっだぁっずっどざびじがっだああぁああぁ…ずっどずぎだったっ…

ずっどぐるじがっだっ…もうどこにもいがないでっ…

おねがいだからっずっとそばにいでっ…」


慎一郎はどうする事もできず、ただ楽羅が泣き止むまでずっと抱き締めて、背中を擦る事しかできなかった…

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