表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/103

この世界では

「俺には、何の能力も発現させる事ができません」


二学期の始業式の日、転校初日には定番の自己紹介で言った最後の一言がこれだった。

言うかどうか、迷いはあったが…いずれ皆には知られてしまう事ではあるし、最初に言ってしまった方が後が楽だと思ったからだ。


この世界では昔、超能力を扱える人間は異常だった。

だが、80年程前から産まれる人間のほぼ全てが、超能力を扱える者になった。

そうでない人間が産まれる確率は、1000万人に1人。

つまり、超能力を扱えない人間の方が異常になったのだ。


これが、慎一郎に友達ができない最大の理由。


慎一郎は、能力を扱えないわけではないが、他の人と同じ様に火や氷を出したり、あるいは手を触れずに物を動かしたりというような、普通の能力ではない。

仮に慎一郎の能力を周りの人に見せたとしても、それが本当に能力によるものなのかを、判断するのが難しい。

それ程に、慎一郎の能力は地味で見栄えがしないし、高校生の日常においては使い道が無い。


だから慎一郎は、小学校の頃から今に至るまで…


「自分は能力を発現させる事ができない」


と周りに言ってきた。

発現とは、(現れ出る事)

目に見える能力を扱えない慎一郎に対して、周りの生徒は壁を一枚作っている様な感じで、会話なども避けている節がある。

それは前の学校でも、転校してきたここでも変わらなかった。

正直なところ、周りの生徒からしてみれば、慎一郎にどう接していいのか分からない…というのが本音なのかもしれない。

もっとも、学校を卒業し社会に出てしまえば、能力を扱う仕事にでもつかない限り能力が発現できない事自体は、それほど重要ではなくなるだろう。


しかし、まだ自分達にとって能力が(特別)である10代の生徒達にしてみれば、話は別。

能力というのは、友達のキャラクター…個性の一部であるような、重要なファクターを担っている。

だからよほど物事に達観している者か、あるいはよほどの変わり者でなければ、慎一郎に話し掛けたり友達になろうとする生徒は居なかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ