全力の突き
上部のハッチを開き、ガトリングガンを装備するE3に対し、慎一郎は闘争心をむき出しにして迫る。
ガトリングガンの弾丸を全く意に介せず、機体の側面に回り込むと、間を置かず両足を踏み開き、己の最速で突きを打ち込む。
ゴガァッ!
普通ならば聞く事の無い異音。
その突きは、慎一郎がいままで船や基地内で力任せに、ただ単純に兵士達や壁に打ち込んでいたものとは、明らかにかけ離れた一撃。
全力で、と言った言葉通りに、己が今まで十数年かけて修練し、練り上げてきた技を使った最速の一撃。
E3の機体はガトリングガンを装備した時から、空中に浮いてはいない。
慎一郎の打撃によって後退してしまうのを防ぐ為だ。
浮かずに地面に機体を据えているだけで、十分なはずだった。
なぜなら機体の堅牢さを維持する為の頑強な装甲と、アンチコーティング装置などを全て合わせた機体の重量は、10トンを超えているからだ。
だが、慎一郎が練り上げた技の一撃の威力は、その機体を数十cm動かした。
さらに一撃。
コンクリートの地面を削りながら、E3の機体は後退する。
それでも、その頑強な装甲にはヒビ一つ入らない。
「ちっ、なんつう硬さだ」
慎一郎は呟きながら、機体の背面に次の一撃を打ち込むべく回り込むが、その体をいきなり押し潰すような衝撃が襲い、4m以上飛ばされた。
どうにか起き上がり、再びE3に詰め寄るが、今度はその機体に触れる前に、真上からの衝撃に襲われる。
その力たるや、慎一郎でさえも膝をつくどころか、這いつくばってしまうほどの圧倒的なもの。
「ぐっはあっ!」
慎一郎はどうにか転がって体を移動させ、とにかくその場から後に距離を取る。
(くそったれ、どうなってやがる?
ランドセル兵士が使った衝撃波とは、桁違いにダメージが体に残ってる。
そもそも、能力による衝撃波とは何かが違う。
耐えようとしても、体自体が言う事をきかなくなる感じだ)
慎一郎が距離を取った為、E3が再び機体を浮かせて進んでくる。
(あいつ、たった数mでも浮かなきゃ移動できないのか?…そういや脚とかキャタピラとか付いてないみたいだしな。
いや待て、そもそもあの機体どうやって浮かんでるんだ?どこにもロケットとかに付いてる噴射ノズルとか無いぞ、殴った感じは相当な重さだった。
…何か根本から違う原理で浮いてるとしたら?
……もしかしてあの機体!)
慎一郎はいきなり走り出し、空中に浮かんで進んでくる機体を思いっきり蹴り飛ばした。
今度は衝撃が体を襲う事はなく、E3は最初の時のように後退する。
それを見た慎一郎は、予想が確信に変わるとともにそれを口にする。
「てめぇ…重力制御装置まで積んでやがるな?」




