Eシリーズの性能
楽羅は淡々とあの機体についての説明を始めた。
「あの機体は、Eシリーズだったかな?正式な名前はまだ決まってないらしいけど、どういうヤツかはお父様に聞いた事があるわ…
まずあの装甲、強化ナノファイバーを編み込んで作ってあって、その表面は摩擦係数を減らす為の特殊コーティング材で覆われてるわ。
しかも、ナノファイバーにさらに処理を重ねる事によって、耐圧、耐熱、耐核、耐電を実用化してあるから、あらゆる局面で使えるはずよ。
しかも一番厄介なのは…小規模の範囲に使用を限定する為に可能になった、超小型のアンチコーティング装置を搭載してるってところね。
さっき、私の最大火力の能力を受けても、全く損傷してないのがいい証拠だわ」
「…何だそのデタラメなハイスペックは…ってか、何で楽羅の親父さんはそこまでアイツの事に詳しいんだ?」
慎一郎のもっともな疑問に、楽羅は溜息をつきながら言葉を続ける。
「あれの開発を可能にしたのは、アメリカ、ドイツ、日本が共同制作って事で、お互いに技術提供しあったからよ。
で、日本チームのメンバーが、お父様の直系グループの会社から出てるのよね。
だから詳しいのよ…
まあお父様にすれば、あれを作る事自体には反対だったけどね。コストが掛かり過ぎるんだって…
だからお父様としては、作るのが目的じゃなくてむしろ…」
「その技術を出す事で、アメリカとドイツに貸しを作りたかった…か?」
「そんなとこでしょうね…実際に最初の機体が作られたのも、MITの実験施設だったらしいから。
見返りにお父様が何を貰ったかは知らないけど」
「親父さんから、何か弱点みたいなの聞いてないか?
何でもいいんだけど、これには弱いみたいな」
しかし、そこまでは楽羅も知らなかったらしく、首を横に振る。
「能力を無効化されるっていう時点で、私にはどうしようもないし…お父様はあれの頑丈さを、厚さ10cm以上のダイヤモンドで覆ってあると思え、って言ってたから…正直言ってお手上げよ」
楽羅はどうしようもないと言うが、慎一郎としてもそんな冗談みたいな硬いヤツを、どうにかできるとは思えない。
しかも、摩擦が起きにくいというのであれば、よほど小さな範囲にとてつもなく大きな力を加えなければ、ヒビすら入らないだろう。




