アンチコーティング装置を見つけるまでの慎一郎
慎一郎は機関砲の厄介さに嫌気が差し、まず先にそれを黙らせるべく、機関砲を据えてある建物にたどり着くや、とにかく砲台のある屋上を目指していた。
途中で発砲してくる兵士を殴り飛ばし、手榴弾すらもものともせず、建物内を走り回る。
ようやく見つけた階段の手前に、2人の兵士が立っていた。
彼等は、今まで自分に向かってきた兵士達とは異なる点があった。それは、
「何でお前ら手ぶらなんだ?あと背中に背負ってるそれ、ランドセルみたいだな。…そういやランドセルってのは元々は軍隊の装備品だったらしいから、別に不思議でもないか。ま、いいか、とにかく先を…」
慎一郎は、そいつ等を殴り飛ばすべく足を進めるが、
ドンッ!
「ぐっ!」
その兵士達との距離が2mほどになった時、慎一郎の体を衝撃が襲った。
不意打ちに近いそれをまともにくらい、数m後ろまで転がってしまう。起き上がる間に頭を忙しく回転させ、その衝撃の原因を探る。
(何だ今の?…コイツら手に何も持ってなかったのに、どうやって俺を吹っ飛ばしやがった?コーティング装置が効いてるから、能力って事は無いはず…
いや、あれか?あのランドセル。
おそらくはアレを使って衝撃波でも打ち出してるのか?それとも、アレのお陰でアンチコーティングの効力を無効化してるのか?…多分後者かな)
そこまで考えたところで、慎一郎は再びゆっくりと足を進める。
「お前らのそれ、誰でも使えるのか?有効半径は2mってとこだろう?」
そう言いながら相手の攻撃範囲に入り、
ドンッ!
再び衝撃が慎一郎を襲うが、今度は飛ばされる事なくその場に立っていた。
「どういう事だ!?」
兵士達が戸惑いを見せる。自分達の能力が不発だったのか…いや、現に目の前の少年の回りの床にはヒビが入っている。ならばなぜこの少年は飛ばされるどころか、倒れてすらいないのか?
「残念だったな…能力だとしても、その程度の威力なら俺の相手にはならねぇ」
そう言いながら兵士達を殴り倒し、階段を駆け上がる。
屋上に出る為のドアの前までたどり着くと、そっとドアを開けて機関砲の台座を確認する。
けたたましい音を響かせながら、2門の機関砲が海に向けて弾丸を撃ち出している。
(俺が死角に入ったんで、楽羅に狙いをつけてやがるな。あの馬鹿デカイ発射音のおかげで、俺には気付いてない)
それだけ確認したところで、一気に機関砲の台座まで走り、砲撃手を台座から引きずり出して、その兵士をもう一つの台座に居る兵士目がけて、
「うおりゃあ!」
投げ飛ばした。
慎一郎はコンクリートの分厚い壁も打ち抜く、その力で投げ飛ばされた兵士は、体感した事もないスピードで仲間にぶつかり、そのまま2人とも数m弾き飛ばされて動かなくなった。
「ふん、さっきしこたま機関砲の弾を撃ち込まれたんだ。少しは俺がくらった衝撃が理解できたか?くそったれめ!」
慎一郎はそう吐き捨てると、次の建物を目指して屋上の手すりを飛び越えようとするが、そこで足を止める。
「さっきのランドセル兵士、砲台の近くには1人も居なかったな。てっきり機関砲を守ってるもんだと思ってたが、…待てよ、ランドセル兵士は階段の前じゃなくその手前に居た?」
慎一郎は踵を返して走り出す。
(他の建物にはランドセル兵士は居なかった、つまりライフルや手榴弾のように普通のヤツが持てる安物じゃないって事だ。
値の張る装備と、それを使いこなせるだけの能力を持った兵士。どっちも軍にとっちゃあ貴重なはずだ。
それだけのものを使って守ってるのが、屋上の機関砲じゃないとすれば…ひょっとしてここが当たりか?)
さっき駆け上がってきた階段を飛ぶようにして降り、
(何か見落としてるのは無いか?)
慎一郎が注意して周りを見回すと、階段とは反対側の壁にスイッチのような物があった。
近づくと、手の平ぐらいのサイズのプレートに数字が並んでいる。
「いかにもって感じだな」
もちろんセキュリティ番号など分からないので、スイッチごと壁を打ち壊す。
壁の向こうには、幅が2mほどの通路があり、数人のランドセル兵士がこちらを見て驚愕している。
その兵士達が臨戦態勢になる前に慎一郎は間髪入れずに動き、一度も動きを止める事なく兵士達を蹴散らして通路を抜ける。
その先にはドーム状の空間があり、その中央にはダルマ落としのように円柱を3段に重ねた大きな装置があった。
「見つけたぞ、多分これが当たりだろ?」




