表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エスパーワールド  作者: 碧鬼


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/105

プロトタイプE3…

ドガァ!


基地の司令室で、机を殴りつける音が響く。


「馬鹿な!それぞれの目標に対し、機関砲すら意味をなさないというのか!」


最早冷静でいられなくなったクルーガーは、自身の苛立ちと焦りを抑える事ができなくなっていた。


「大佐、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?なぜあの子供達は、逃げようとせずにこの基地と正面から戦っているのでしょうか?」


そう、クルーガーもその事をずっと考えていた。

あれだけの力を持っているのであれば、逃げる方が遥かに簡単なはずだ。


「…おそらくだが…あの子供達にとっては、逃げた後の事が問題なのだろう。

我々は命令次第で新たに装備を整え、再びあの2人を狙うだろう。

そうさせない為には、逃げるよりもこの基地と正面から戦い、我々の戦力を確実に断つつもりなのかも知れん。そうする事で、こちらに対して自分達の力を誇示するつもりだ。

現に、今我々はあの2人に対して有効な手を打てないでいる」


「…しかし、このままでは…」


クルーガーは苦虫を噛み潰したような顔で悩んでいたが、やがて開き直ったように顔を上げ、


「船に連絡して、プロトタイプE3を出させろ」


その言葉に部下の1人が声を上げる。


「しかし、あれを使う権限は…この基地にはありませんが…」


「かまわん!このままではどうにもならん。それにこの状況ならば、最高の実戦試験運転になる」


…………………………………………………………………



絶え間なく撃ち出されていた機関砲の集中射撃が、急に止まった。


「あれ?」


不思議に思いながらも、今のうちに海上の敵兵をどうにかしようと、楽羅は後ろを振り向いた。

その目が、沖から近づいてくるそれを捉えた。

それほどスピードは出ていない、むしろ遅いと言ってもいいだろう。

だがそれは、海面すれすれを低空で飛行しながら近づいてくる。


(飛んでる?船やボートじゃない?…何か光った)


光の尾を引きながら撃ち出された物体は、


「ミサイル!?」


とっさに火球を打ち出して、ミサイルを迎撃する。


ズッドドドドオォ!


巨大な水柱を上げながらミサイルが爆発する。

その海水のしぶきの中を、ミサイルを打ち出してきた見た事もない機体が進んでくる。

外見は、戦車からキャタピラと主砲を取り除き、それを2両用意してその腹を張り合わせたような、そんな無骨な外見。


(いきなりミサイルなんて物騒なのを使うなんて…でも、あの機体を今基地内に入れるわけにはいかない。

これ以上慎を危ない目にあわせられないもの)


「悪いけど、海上で灰になってもらうわ」


楽羅はそう言いながら、海上を進んでくる機体に向かって手をかざし、


ゴオッ!


海上の機体を中心に、さっき発現させた巨大な火柱を立ち上らせる。…が、


「え?嘘でしょ?」


楽羅は驚愕する。なぜなら、炎の中から平然とその機体が現れたからだ。

しかも見た目には、どこにも損傷した箇所は見られない。


(どういう事?大きさはさっきと同じだったけど、火力とそれに伴う熱量は倍ぐらいあったはずなのに…

まるで、何でもない事のように平然としてるなんて)


「…何でもないように?」


自分の考えに引っかかりを感じて、思わず口に出してから、


「まさかあれって!」


自分の勘が当たっているのなら、あの機体はヤバ過ぎる。


「今のうちに確かめなくちゃ」


楽羅はそう呟くと、今度は両手を突き出し、己の今発現できる能力のその全力を出す為に、能力と意識を集中させ、そして…


カッッ!!


楽羅と相手の機体を結ぶ直線上を中心に、その辺りの海上、海軍基地を含めた全てが真昼以上の光に包まれた。

海上の兵士達が思わず目を閉じ、顔を手で覆うほどの、楽羅自身も瞼を固く閉じて顔を背けるほどの異常な光量。

その熱量は最早、炎と呼べるような段階ではなかった。温度が高くなり過ぎ、炎を構成する分子同士が離れて原子になり、さらにその原子核にある電子がとどまれなくなるほどの、超超高温状態。

いたる所からフレアと呼ばれる超高温の炎を撒き散らし、相手の機体を襲うその現象の名は…プラズマ。


その光が通る真下の海水は、触れてもいないのに余熱だけで一瞬にして沸点を超え、水蒸気爆発を起こしながら気化していく。

やがて、10秒にも及ぶプラズマの放射を止め、さすがに荒く息をつきながら、楽羅が呟く。


「はあっ、はあっ…ちぇ…やっぱりね」


プラズマの直撃を受けてなお、その機体は海上に浮かんでいた。

動きは止まっていたものの、何事も無かったかのように…

ここにきて、初めて楽羅の口から弱音が漏れる。


「ちょっと、ヤバイかな…勝てないかも…」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ