反撃
仕事が忙しく、間が空いて申し訳ありません。
できる限り投稿していきますので、宜しくお願い致します。
レイスの斜め後ろに居た男が、ホルスターから銃を抜きながら、壁際に居た2人に怒鳴る。
「撃て!動きを止めろ!」
しかし、怒鳴った男が銃を構える前に慎一郎はその男の懐に迫り、顎を打ち上げて一撃で意識を刈り取る。そのままその男の体を掴んで離さず、その体を盾にして壁際の2人に向かって突っ込んで行った。
とっさに1人が回り込み、慎一郎に銃口を向けるが、慎一郎がトリガーを引く方が速かった。
手に持つのは、盾にした男から奪ったベレッタ。
しかし、最後の1人までは間に合わなかった。
反対側から回り込まれ、肩と脇腹に弾を撃ち込まれる。
それでも慎一郎は怯まず、振り向きざま相手の顔と喉を撃つ。
「慎!」
楽羅が駆け寄り、慌てて慎一郎が撃たれた箇所を見る。
「またあの時みたいな無茶を…あれ?」
今撃たれた箇所、確かに肩と脇腹の所は慎一郎のシャツには、穴が開いている。
にも関わらず、慎一郎の体には傷口が無い。
(ギリギリで躱したの?…いえ、さっき慎と相手の距離は2mも離れていなかった。そんな至近距離で、2発も躱すなんて不可能よ)
「ねぇ、これって…」
「簡単に言えば、俺は弾が当たっても平気なんだ。
待ち合わせの時みたいに、警戒してないならヤバイけどな…まあ、説明は後だ。とりあえず甲板に出るぞ、ソイツらからベレッタとマガジンを貰おう」
楽羅の疑問に、慎一郎は簡潔に答えながら銃とマガジンを拾う。
「お、コイツの防弾チョッキは汚れてないぞ、ほら…着といた方がいい」
「ありがと、それじゃあ…行きますか!」
甲板に出るべく、走り始めてから4分…
慎一郎が前を走り、盾の役割をしながら2人はほとんどノンストップで迎撃しながら進んでいた…
慎一郎が後ろを振り返りながら、楽羅と短いやりとりをした時、
「前っ!」
楽羅がとっさに叫ぶと同時に、慎一郎が前を見て、
「ヤバッ!」
2人は同時に体を捻り、もつれるようにしてすぐ右にあった通路に倒れ込む。
そのすぐ後ろを、
バシューー…
と音が通り過ぎ、
ドッズズ…ン
思わず耳を塞ぐほどの爆音が響く。
楽羅は直ぐに体を起こすなり、
「なによっ馬鹿じゃないのアイツらっ!自分達の船の中でRPGなんてぶっ放してんじゃないわよっ!」
よほど頭にきたのか、ちょっとヒステリックを起こしたように叫ぶ。
慎一郎は落ち着いた声で、RPGを発射してきた相手の心情を口にする。
「連中にすれば、自分達の事を知った俺達を逃がす訳にはいかんだろうし、その上仲間が殺されてるからな。なりふり構わず本気になるには、十分な理由だろうさ」
しかし、せっかくなだめようとしてもその慎一郎の落ち着きぶりが、逆に楽羅の感情を逆なでしたのか、ジト目で慎一郎を見ながらトゲトゲした口調で返す。
「なんでそんな冷静なのよ、っていうかアイツらがRPGなんて使いだしたのは、慎には並の弾をいくら当てても意味が無いって、ばれたからじゃん。
私なんかこの状況だと、9mmを急所に一発でもくらったらヤバイんだから、もうちょっと考えてよね」
慎一郎は溜息をつきながら、
「しかたねぇだろ、時間ねえんだから」
そう呟いて隠れていた通路を飛び出し、再びRPGを構えようとする敵兵に向かって、自分の持つベレッタのトリガーを連続して引きながら走り出す。
その弾の一発が、敵兵の顔に当たる。
慎一郎はそのまま敵兵のそばまで走り寄り、死んだのを確かめてから楽羅に声をかける。
「楽羅、もういいぞ!」
楽羅は駆け寄って来るなり、慎一郎を叱りつける。
「まったく、無茶ばっかりしてっ!」
慎一郎は頭をかきながら思う、
(じゃあどうしろって言うんだ…)
再び走り出した2人は、ようやく甲板に出る事ができたが、問題はどうやって港に帰るかだ。
「ねぇ慎、この船動かせる?」
「いや無理言うな、こんなデカイ船動かせるわけ無いだろ」
「じゃあ、どうやって港に帰るつもりだったの?」
「え?…泳ぐ…とか?」
慎一郎はとにかく脱出する事だけを考えていたので、甲板に出た後の事までは考えていなかった。
「そう、ま、頑張ってね♪」
「…楽羅はどうするんだ?」
「私、空飛べるもの…それじゃ♡」
にこやかに手を振りながら、手すりに足をかけようとする楽羅を、慎一郎は意識を取り戻してから今までで一番焦って止めた。
「うぉい!そこは俺も連れてくとこだろ!?」
「冗談よ、冗談」
「嘘つけコノヤロ、今…ものすげえイイ笑顔だったじゃねぇか」
楽羅は笑顔を崩さずに、怖い顔の慎一郎を見ながら、
「ね、約束覚えてる?」
「ああ、ちゃんと帰れたらって言ってたのだろ?でも一つだけだぞ」
いつの間にか、約束にまでレベルアップしている事に慎一郎は気付かない。
「ふふっ、言質取ったからね?」
楽羅は勝ち誇った顔で笑うと、慎一郎の腕を掴み、海に向かってダイブした。
「イヤッホー!」
「うおおおお!?」
慎一郎が海面に飛び込むのを覚悟して、目をつぶった時、急に体が止まる。
目を開くと、驚くほど近くに楽羅の顔があって、思わず固まってしまう。
「おんぶしてあげようか?」
「いや、このままでいいだろ?」
今の2人の体勢は、楽羅が慎一郎の腕を掴んで支えている状態。
「おんぶが嫌なら、お姫様だっこしてあげる」
「俺の話を聞けよ」
「このまま落としてもいいんだけどな、ドボンって」
「…おんぶでお願いします」
楽羅は嬉しそうに慎一郎を背負い、遠くに見える港の灯りに向かって進み始める。




