序章
皆様始めまして。
碧鬼と申します。
このたび初めて小説を投稿致します。
少しでも多くの方々に、この作品を読んで頂ければ幸いです。
宜しくお願い致します。
軍服を着た兵士が2人、通路の先に身を隠しながら慎一郎と楽羅に向かって発砲してくる。
しかし、前を走る慎一郎はかまう事なく駆けて行き、その兵士2人を至近距離から仕留める。
あえて弾を避ける事はしない、弾が楽羅に当たってしまう事を防ぐ為だ。
そうやって敵を迎撃しながら、2人はとにかく船の甲板に出るべく、足を止めずに走る。
だが、思うようには進めない。
当たり前の事だが、乗った事もない大型船の通路はまるで迷路のようだ。
ようやく見つけた階段を駆け上がった時、船全体が動いた事を感じて楽羅はレイスから奪った時計を確認する。
21時52分、閉じ込められていた所を飛び出してから、約4分が経っていた。
「ねえ、今のって!」
楽羅は前を走る慎一郎に向かって大声で問う。
「ああ、どうやら船が本格的に動き出したんだろうな」
慎一郎が振り返りながらそう答えた時、
「前っ!」
楽羅がとっさに叫ぶと同時に慎一郎が前を見て、
「ヤバッ!」
2人は同時に体をひねり、もつれるようにしてすぐ右にあった通路に倒れ込む。そのすぐ後ろを、
バシューッ…
音が通り過ぎ、
ドッズズンッ!
思わず耳をふさぐような爆音。楽羅はすぐに体を起こすなり、
「なによっ馬鹿じゃないのあいつらっ!自分達の船の中でRPGなんてぶっ放してんじゃないわよっ!」
よほど頭にきたのか、ちょっとヒステリックを起こしたように叫ぶ。
慎一郎は落ち着いた声で、RPGを発射してきた相手の心情を口にする。
「連中にすれば、自分達の事を知った俺達を逃がすわけにはいかんだろうし、その上仲間が殺されてるからな。なりふり構わず本気になるには十分な理由だろうさ」
しかし、せっかく楽羅をなだめようとしてもその慎一郎の落ち着きぶりが、逆に楽羅の感情を逆なでしたのか、ジト目で慎一郎を見ながらトゲトゲした口調で返す。
「なんでそんな冷静なのよ、って言うかアイツらがRPGなんて使いだしたのは、慎には並の弾をいくら当てても意味が無いって、ばれたからじゃん。私なんかこの状況だと9mmを一発でも急所にくらったらヤバイんだから、もうちょっと考えてよね?」
楽羅の文句に慎一郎はため息をつきながら、
「しかたねえだろ、時間ねえんだから」
そう呟きながら、隠れていた通路を飛び出し、再びRPGを構えようとしている敵兵に向かって、自分の持つベレッタのトリガーを連続して引きながら走り出す。
その弾の一発が敵兵の顔に当たり、側まで走り寄った慎一郎が敵兵が死んだのを確かめてから、
「楽羅、もういいぞ!」
声をかけられた楽羅は駆け寄ってくるなり、慎一郎を叱りつける。
「まったく無茶ばっかりしてっ!」
慎一郎は、
(じゃあどうすりゃいいんだ…)
と思いながら頭をかく。
2人がこんな状況になっている原因、その発端は1ヵ月以上前にさかのぼる…