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3

 身長は自分より五センチくらい低い。165センチといったところだろうか。髪は、黒の気配は全くない、薄い茶色で、前髪が目にかかるか、かからないか、くらいの長さをしていた。顔は整っていて、男性と言われれても、女性と言われても、納得ができる。中性的な顔立ちだ。

 その体は触れてしまえば、すぐ崩れてしまうように弱くって、小さくて、悲しかった。

 彼はこちらを見ながら、微笑んでいるままだった。

「耳は聞こえてるんだね?」一応もう一回聞いておきたかった。

『うん』綺麗な字がノートに染み込んでいく。そして疑問を口にする。

「じゃあ、なんで、喋れないの?」

彼は一瞬だけ、困り眉になって目を細めた。でも、瞬きをしたら、またあの笑顔に戻っている。

『秘密』

その字を見て、教えたくないのなら聞くまいと口をつぐんだ。沈黙を守る代わりに、彼の左手を手の中に収めた。彼は驚いていたが、不快と思っているわけではなさそうだ。空いている手で彼の指先に触れる。驚いたのか指先がびくっと震えた。親指以外の四本の指先をゆっくり触って、彼に言う。

「おにーさん、ギター上手いでしょ?」彼は悪戯っぽく笑って、『まあね』と綴った。

「弾いてよ」

『いいよ』

両手を彼の指先から離し、近くの古い椅子に腰かけた。彼は手でコードの形を作った。

 ちょっと悲しい曲調で、一音一音が丁寧に弾かれていることがわかる。エレキギターのアルペジオ。聞いていてとても心地が良い。

「ありがと」

彼は手でグッドの形を作る。

「ここ、入っちゃだめ?」彼は『ぼくが決めることじゃない』と書いて、見せてくれた。安堵したが、彼が次のページに『ただ、』と書き始めていることに気付く。

『ただ、条件があるよ』

「え、なに?」

気が抜けて、情けない声が出てしまった。彼がペンを握り、ノートに走らせようとした時、開いていた扉から誰かが入って来た。

「誰、その子?」優しい声が聞こえる。

『入部希望者』

「へえ、なるほど」

どうやら、喋れない彼と顔見知りのようだ。さっき、入って来た彼は顔をジロジロ見てくる。

前髪をあげられて

「美形だね」

と言われた。そう言っている彼も中々の美形だ。そして彼が口を開こうとする。すると、また誰か扉から入ってくる。

「こんにちは、先輩たちは今日部活、ないんじゃないんですか?」

入って来た彼がそう尋ねる。前髪と眼鏡で顔がよく見えない。

「そだよー」

美形の彼がそう答える。今じゃないだろうが、脳が混乱し始めてしまったので、聞く。

「三人とも名前言ってよ」

「確かにそうだね」

「じゃあ俺から」自己紹介なんて一番最初に言うタイプではないが、言い出したのは自分だから口を開く。


「浅木律。あさき、じゃなくてあさぎ。呼び方はなんでもいいよ」


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