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なんでも屋ソード苦労談  作者: 御蛇村 喬
7/8

器用貧乏が根性で生き残るライトファンタジー

凄まじい轟音が収まり、静寂があたりを包む。


しばらくソードはその場でじっと佇んでいた。


静寂が近づいてくる足音にかき消され、やがて盗賊達が集結する。


(ざっとみて25人、最初に倒した奴等のこととアジトに残している人数分を考えると妥当な数だな)


 ソードは刀を抜き放ち正眼で構え


(さて、こいつらをどう料理するか・・・だな)


「それは、あくまでも抵抗するということか?」


 口を開いたのは、少し前に口上を謳っていたあの盗賊だ。


「それ以外に何かあるか?」


 答えと共にソードは不敵な笑みを返す


「やれ、だが決して殺すな」


 男の指示に従い盗賊達が動き出したそのとき、突然盗賊の一人に黒い影が喰らいつく。


 体長5メートル近い漆黒の毛並みの犬、それが影の正体だ。


 魔獣と呼ばれる異世界からこの世界に帰化した来訪者、その中でもヘルハウンドと呼ばれる凶暴な種だ。


 その場の全員の動きが止まる


 その間にも犬の数は増え、二人、三人と犠牲者が増えていく。


「ウオオオオオオォォォォォォ!」


 ソードが叫び声をあげ、今にも盗賊に襲いかかろうとしていた魔獣に跳び蹴りを見舞う。


 魔獣は吹き飛んで壁に激突して倒れ、光の粒子となって空気に溶け消える


 ソードは一瞬戸惑うが、すぐに状況を思い出す


「何してやがるっ、死にたくなけりゃとっとと逃げろっ!」


 ソードの言葉に盗賊達はもとより魔獣たちまで動きをとめる。


「な……あ、うわああぁぁ!」


盗賊の一人が逃げだすと、堰を切ったように我先にと盗賊達は逃げていく。


 残ったのはソードと魔獣たちのみとなる。


 妙なことに盗賊を追うものはなく、死体を食らうものもいない、ただソードの周りを囲み待機しているように見える。


 「……こいつら、昨日俺たちを散々追い回してくれた奴らか……」


 ソードは呟く。


(しかし、なぜ死体が消えた?、そしてどこから現れたんだ……それに、盗賊を追うやつも死体を食うやつもいない……俺だけを目標にしているとしか思えない動き……何者かの命令に従っているとでもいうのか?)


 凶暴な魔獣を手なずけることなど、そう簡単にできることではない。


 むせ返るような血の臭いの中しばらくソードと魔獣達は睨み合っていた


「ソード殿とお見受けするが間違いないかな?」


 突然にかけられた言葉にソードがそちらを向くとそこには三人の男女の姿があった。


(こいつら、いつの間に……)


 ソードは一瞬動揺するが、すぐに口の片端を上げ余裕の笑みを作る


「俺の名を知ってるとは博識だな、無名の何でも屋風情に何の用だ?」


 言っている間にもソードは相手を観察する。


 一人はローブでフードを目深に被っているため顔は見えない。


 ソードから見てその右隣には軽薄そうな剣士風の男、左には鋭い印象の女で、奇妙な手甲と足当てをつけている。


 いずれも油断ならない空気を纏っている。


「まずは、非礼を詫びよう、私の名はディム、召喚術士だ、後ろの二人はシェラとハースト」


 ローブの男が言ってフードを脱ぐ


 現れたのは剃り上げられた頭に顔に彫られた特異な刺青、そして鋭い眼光を放つ痩せた男の顔だった。


「召喚術士……禁術使いなんざ始めた見たぜ、昨日の魔獣もお前らの差し金ってことか」


「その通りだ」


ディムの答えにソードは顔をしかめ


「何の目的があってこんなことをする?」


「あなたにある場所までご同行願いたいので、このような方法をとらせてもらった」


「わけがわからねぇな、これだけのことができるなら力づくで俺を連れて行きゃいいだろ、他人を巻き込むことはないはずだ」


 ソードは正直な言葉を紡ぐ。


「あなたが朱雀流蹴殺法の使い手であることは存じている、そして、正直に我々に従うような性格でないことも……な」


 ディムの言葉にソードの表情が険しくなる


「どこでそれを聞いた……?……それを知っている人間はそう多くはないはずだ」


「今はそんなことはどうでもいい、あなたには我々に従うしか選択肢はないはずだ、我々には村人という人質がいる、あなたが見殺しにするというのならそれで構わないが」


 表情をまったく変えないディムをソードは歯噛みして睨みつける


(くそ、こんなことならシオたちと一緒に行くんだった……無事でいろよ、ルシア、シオ)


 ソードは刀を軽く放り投げ、手を上げる


「わかった、俺の負けだ」


「『魔石』も外してもらおう」


 抜け目のないディムの言葉にソードは内心で舌を打つ


「わあったよ」


 ソードが指輪に手をかける


「ソードさーん、助けに来ましたよー」


 その時、突然空から声が降ってくる。


 その場の全員の視線が上に向くと、そこには、蝙蝠の皮膜を背からはやしたシオが飛んでいた。


 そしてシオの腹部が『開く』


「『シオ流暗殺活人拳“絨毯爆撃”』っ」


 シオの腹部から何かが次々に落とされる、それは、丸いオーソドックスな形の導火線式爆弾だった。


「なんじゃそりゃあああぁぁぁ!」


ソードは叫ぶが早いか地面に手を付き、最速で魔術を完成させる。


「『地壕(ちごう)』っ」


 魔術の発動と共にソードの足元の地面が窪み、ソードの体は地中に没する。


 ソードは上を見て自分の上に落ちて来る爆弾がないことを確認して穴の中で耳を塞いでしゃがむ。


 爆弾が地面にぶつかる音が振動として伝わってくる


 そして、少しの間の静寂のあと……


 耳を塞いでなお鼓膜を揺さぶるほどの爆発音の連続と衝撃が大地を振るわせ、やがて余韻を残しつつも収束する


 「……終わった……」


 シオは地面に降り立って皮膜をしまい、もうもうと立ち上る土煙と光の粒子をみ見つめ呟く。


「なにが……、“終わった”……だぁーっ!!、俺を殺す気かぁっ!」


 埃まみれで穴から這い出たソードがシオに尤もな非難を浴びせる


「ギュパァ、あの程度で死ぬようならオイラの相棒は務まりませんよ」


「普通に死ぬわっ!、つぅか相棒なんてのはお前が勝手に言ってるだけだろうが!」


 ソードは更なるツッコミを入れる。


 飄々としつつもシオは楽し気だ


「楽しそうなところ恐縮だが、我々を忘れてもらっても困るのだがな……」


 土煙の中から会話に割り入ってきた声にソードとシオは視線を巡らすと、薄まっていく土煙の中から、無傷でディムたち三人が現れる。


「ギュパ、あなた達が誰か知りませんが、村の人たちは解放しましたし、魔獣も全滅、まだやる気ならお相手しますが?」


「いや、今回は遠慮しよう」


 シオの言葉にディムはそう答えて幾何学的な図形の描かれた紙を地面に一瞬で広げ『術言』を唱える。


 儀式はあっという間に完成し『術陣』の中央に黒い穴がぽっかりと口を広げる。


 その中から現れたのは巨大な怪鳥だった。


「今回は引かせていただく、またいずれ近いうちに……」


 ディムは言って怪鳥に跳び乗る、シェラ、ハーストもそれに習う


 3人が乗ったと同時に怪鳥が羽ばたく。


 それによって生み出された強烈な風が土煙を巻き込みソード達を襲う。


 目も開けられない程の嵐が去った後、二人が見たのは遥か遠くに飛び去った怪鳥の姿だった。


「……とりあえず、終わったな」


ソードは言って倒れるようにして仰向けに寝転ぶ。

空の青が眩しい。


「ソードさん、まだ寝るには早いですよ、まだ一仕事残ってますし」


 シオの言葉にソードは寝転んだまま、辺りを見回すと、盗賊達の死体が目に入る。


「まだ俺を働かせるってのかよ……つっても弔ってやらんわけにもな……」


「ギュパ、いいじゃないですか、今日はベッドで寝れそうですし、ちなみに屋敷にも5,6人……」


「やれやれだ……」


ソードはため息混じりに立ち上がり、シオと共に作業に取り掛かった。



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