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なんでも屋ソード苦労談  作者: 御蛇村 喬
4/8

器用貧乏が知恵と気合いで戦うファンタジー

 「でも、オッサンが……」


 ルシアはそこで言葉を飲む


 ルシアの瞳に赤い光点が映っている。


 それはソードの指に嵌められた四つの宝石の一つ、紅玉ルビーに灯った光だ。


 ソードが瞼を上げたのと同時。


 ヴォヴォヴォウッ


 幾条もの炎の矢が空中に現れる。


「なっ、魔術士かっ!」


 盗賊たちは立ち止まり声を上げた。


「『炎矢えんし』っ!」


 ソードの声を合図に炎の矢達は盗賊たちへと殺到し、避け場のない盗賊達に見事命中する。


「行くぞ、シオっ」


 間髪入れずソードが叫ぶ。


「ギュパァッ」


 すばやくルシアの手から抜け出したシオが答え、ソードと共に浮き足立った盗賊たちへと切り込み、瞬く間に一人を残して盗賊たちを気絶させる。


 ソードは腰の刀を抜き放ち残る一人の首筋に突きつける。


「さて、質問に答えてもらおうか」


「だ、誰が答えるものか」


 盗賊は拒否したが、その顔は引きつっている。


 よく見ればこの男は若かった。


 どう見てもソードより年下だ、20年前の戦争の生き残りなら最低もう30代半ばを過ぎているはずだ。


「ほう、勇ましいな、ならここで死ぬか?」


 ソードが首筋に刃を当てて少し引くと、血の筋が男の皮膚を伝う。


「ヒッ……こ、答える、答えるよ!」


 あわてる男の姿に心中でソードは苦笑し


「よし、まず村人はどこに集めている?、殺してはねぇんだろ?」


「この村で一番大きい建物に……」


 男の答えにソードはこの村の一番見晴らしのいい場所に大きな屋敷があったのを思い出す。


「次に仲間は全員で何人だ?」


「40人……」


「これで最後の質問だ、お前らの目的は何だ?」


「し、知らない、俺たち命令に従っているだけなんだ、この村にいるやつら全員生け捕れっていう……」


 ソードは一つため息を吐き出し


(まぁ、下っ端じゃこの程度か……)


「そうか、ありがとよ」


 言ってソードは男を気絶させる。


「さて、大まかだが情報も入ったことだし、ここらで仕事の話でも……どうした、ルシア?」


 ルシアは先ほどからまったく動かないまま茫としていたがソードの呼びかけで我に返り、その瞳に眩いばかりの光が宿る。


「すっごーいっ、すごいすごいすごいスッゴーーーイ、あたし始めてマホ―見た!」


 興奮して喚き散らすルシアにソードとシオは言葉を失う。


「……あのなぁ」


「見つけたぞっ」


 ソードが言いかけたとき、突然声が上がる。


 そちらを見るとまた新たな一団が坂を駆け上ってきている。


「チッ、もう来やがったのか」


ソードは毒づいてまた集中に入る、次に光が灯ったのは海玉アクアマリンだ。


「『創水そうすい』っ」


魔術が発動し、空中に大量の水が現れる。


「押し流せっ」


 ソードは水にかけている魔術の制御を解き放つと、水流が路地を猛烈な勢いで駆け下り盗賊たちを壁を突き破って中の暗がりへと押し流す。


 この魔術はただ単に水を創り出すだけのものだが、急な坂の上に位置し、且つ家の密集した路地という環境がこの魔術に威力を与えた。


「行くぞ、走れっ」


 ソードは叫び、走り始めるシオが続きルシアも慌てて走り出す。


「ぶぅっ」


 角を曲がったところでルシアはソードの背にぶつかる。


「いきなり止まんないでよう」


 ルシアは鼻を押さえ抗議し、ソードの肩越しに前を見ると、そこには盗賊たちが立ち塞がっていた。


 後ろの穴からも盗賊たちがびしょ濡れで出てくる。


「挟まれちゃいましたよ、ソードさんっ、どうするんです!?」


「危険がピンチだよっ」


 ルシアとシオが喚きだす


「るせぇっ、ちったぁ黙ってらんねぇのかテメェ等はっ!」


 ソードは叫んで二人を黙らせ、指輪に目を落とす、紅玉と海玉から本来の輝きが失われている。


(まだ『喪失状態ロスト』が回復してねぇな……なら)


「降伏を勧告する、そうすればこれ以上手荒な真似はしない……ベルデ帝国騎士の名に於いて誓おう」


 盗賊の一人がソードの思考を遮って口上を謳う。


 年齢は30代後半、格好は盗賊然としているものの、纏う空気が他の盗賊たちとは違う。


「元騎士様の登場か、今時そういうのは流行らねぇと思うがな……まぁ申し出はありがたいんだが・・・」


 ソードはしゃがみこみ地面に手をつく


 ソードの行動が理解できず、その場の全員の視線がソードに注がれる。


「拒否させてもらう」


 ソードが口の片端を上げ不適に笑みを作ると、黄玉トパーズに光が灯る


「『地塁ちるい』っ!」


 声と共にソード達三人の周囲の地面に亀裂が走り、地面が急激に競りあがり、ソード達を家の屋根あたりまで押し上げる。


「跳べっ」


 ソードは叫んで屋根へと跳び移り、シオとルシアがそれに続く。


 ルシアが飛び移った直後、土の柱は崩れ落ちる。


 ソードはシオの手を持ちルシアを脇に抱える


「口は閉じてろ、舌噛むぞ」


「はえ?」


 ソードの言動にルシアはわけが分からず声を上げると、突然に視界が高速で流れ始める


「ぎゃあああ、腕がちぎれる~~~」


 後ろに置き去りになっていくシオの悲鳴


「えっ、え?」


 ルシアが状況を理解できないまま屋根の端が近づいてくる。


ソードは屋根の端で勢いよく踏み切る。


 そして、ルシアは村に14年間住んでいて、始めて空中から村を見下ろした。


 見事ソードは次の屋根に着地し、また走り始める


「きゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 やっと状況を把握したルシアが今頃になって悲鳴を上げるが、ソードは止まらない。


2,3件屋根から屋根へと跳び、次の屋根へと飛び移ろうとしたとき


(遠いな……)


 ソードはそう思うが躊躇せず跳ぶ。


 風を切り宙を駆けるが途中で失速する


(届かない、っていうか……落ちるぅーーー!?)


 ルシアもそれを悟り、表情が凍る

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― 新着の感想 ―
[良い点] 清々しい ラノベなだけに、ではあるのでしょうけれど そもそもアンジェリカやレインフォルトから来た者としては実に明るい景色です。光っとる!笑 [気になる点] シオのギュパァが個人的につい笑っ…
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