器用貧乏で姑息なファンタジー
「あたしはルシアだよっ」
少女は元気よく名のる。
見た目以上に幼い性格の少女にソードは少し呆れるがもっと大事なことを思い出す。
「あのなぁ、この村は今盗賊に占領されてんだぞ、ンな呑気なことでいいのかよ……そもそもテメェも納屋に隠れてたんだろうが」
ルシアは首を傾げ
「なんのこと?、あたしはあそこでお昼寝してただけだよ」
「………………」
ルシアの答えにソードとシオは黙する他なかった。
複数の足音の接近に気づいたソードとシオは素早く来た道を振り向く。
ルシアもとりあえずそちらを見る。
少しして、角を曲がってこちらに向かってくる盗賊たちの姿が現れる。
「チッ、もう来やがったか」
ソードが毒づく
「あのおっさんたち、誰?」
ルシアが緊張感のない声を上げた。
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村で一番大きな屋敷、その一室に五つの人影
「……たった一人の男のために村一つ陥とすとは、酔狂としては少々大げさだな、“英雄殿”は何を考えている?」
最初に口を開いたのは体格のいい壮年の男だ。
顔の半分を覆う髭と、ボロボロの鎧と格好は山賊然としているが、その鋭い眼光と纏う空気、そして腰に差しているよく手入れされた剣の柄に入っているベルデ帝国の印章が、彼がかつてベルデの元騎士であったことを語っている。
「お前がそれを知る必要はない……」
感情を含まない声で答えたのは壮年の男と対する位置に座っている男だ。
顔と姿は逆光になる位置にいるためよく見えないが、その瞳から発せられる、凍えるような冷たい視線だけはハッキリと窺える。
まるで人外の者と対峙しているような不気味な感覚が悪寒となって背中を走りぬけ、壮年の男は目の前の男から視線を外す。
「………………………………………………」
気不味い沈黙が部屋を押し包む。
少しして、ノックの音が静寂の中響く。
「入れ」
壮年の男の言葉に従い、一人の男が入室してくる。
男は壮年の男に何かを耳打ちし、早々に退室する。
「……どうやら、お前達の探している男が見つかったようだが、現在逃走中とのことだ」
壮年の男の報告に冷たい目の男は目を瞑り
「……ディム、お前に任せる」
振り向きもせず後ろの三人に対し言う。
「……8年ぶりの再会と聞いたが……」
応じたのは目深にフードを被ったローブ姿の男だ。
「昨日姿は確認した、今はそれで十分だ」
あまりにそっけない男の背をディムは睨み
「いくぞ、シェラ、ハースト」
ディムはローブの裾をたなびかせ退室していく
「はい」
「どーれ、行きますかね」
残る二人もそれに続いた。
そして、冷たい目の男も席を立つ
「まて、本当に“英雄殿”は約束を守るのか?」
呼び止めに冷たい目の男は胡乱げな視線を壮年の男に落とし
「約束……確かベルデ帝国の復興だったな」
言って掌を壮年の男へと向ける
「?」
動きの意味と男の意図が理解できず壮年の男は眉をひそめる
だが次の瞬間、自らに吹き付ける強烈な冷気と目の前に現れた巨大な氷の槍に顔色を変える。
「なっ、貴様っ!」
「あの男にその意思はない……これが答えだ……『貫け』」
氷の槍は容赦なく壮年の男の腹を貫き、椅子を砕いてその体を壁に縫いとめる。
不思議なことに血は一滴も流れていない。
「それが貴様の夢の墓標だ」
男はやはり感情を欠いた声で、もう動くことのない壮年の男に語りかけ、部屋を後にした。
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「結局こうなっちまうのかよ……」
迫りくる盗賊たちを前にソードはつぶやき目を瞑る。
「ソード、何やってんのっ、やばそうなオッサン達が来ちゃうよっ」
抜き身の剣を手に迫り来る男達にルシアも流石に冷静ではいられない。
「ルシアさん邪魔しちゃだめです」
パニクるルシアをシオが止める
「でも、オッサンが……」
ルシアはそこで言葉を飲む
ルシアの瞳に赤い光点が映っている。
それはソードの指に嵌められた四つの宝石の一つ、紅玉に灯った光だ。
ソードが瞼を上げたのと同時
幾条もの炎の矢が空中に現れた。




