器用貧乏な男が悪知恵と手数で戦う姑息なファンタジー
ベタなファンタジーですが、まぁごゆっくり。
清々しい朝
聞こえてくる鳥たちの囀り
板張りの壁の隙間から差し込む清々しい日の光
そして外を闊歩する髭面の無骨な男たち・・・
「どこをどうしたら昨日の平和そうな村がこういうことになるんだ?」
壁の隙間から外の様子を窺い、男は声を潜める。
「なかなかどうしてバイオレンスの香りあふれる平和な朝ですな」
わけのわからない見解を述べたのは珍妙な生物だ。
一応声量を絞ってはいるものの、男の方とは違い、どこかこの状況を楽しんでいるように見受けられる。
「この状況のどこに平和っつう言葉が当てはまるんだよ……ンなことより今回は状況を悪化させるようなことはすんじゃねぇぞ、シオ」
男は動物を睨み付ける
「人聞きの悪い、オイラがいつそんなことをしたっていうんですか、ソードさん」
「いつもだろうが……」
男は深いため息をついた
男の名は先程呼ばれたとおりソード、齢は二十歳ほどだろうか、この世界では珍しい黒髪黒瞳で顔立ちはやや鋭い。
腰に携えている緩やかな弧を描く独特の反り刃をした片刃剣と、黒と赤を基調とした風変わりな服の下からでも鍛錬の程が見て取れる体付きから戦士なのだろうが、身長が160cm程度と戦士としては小柄だ。
その右手の四指にはそれぞれ宝石の指輪が嵌められている。
動物の方はシオ、しかし本名かどうかはあやしい。
身の丈は1m程、姿は直立歩行する犬という言葉がそのまま当てはまる。
人語を解し流暢に操る上に奇妙な能力を有し、奇怪な行動でトラブルを起こしてはソードを苦しめて楽しんでいる謎の怪生物だ。
ソードとシオは壁際から納屋の中央に移りしゃがみこむ。
「ギュパ、しかし、昨日のことに何か関係があるんですかね?」
シオの言葉にソードは腕を組み昨日のことを思い出す
ソードは流れの何でも屋を稼業としている。
何でも屋というのは早い話が各地で起こっているトラブルの解決や、臨時の労働力などといったことを依頼でこなす者達のことだ。
根無し稼業の二人は次の町を目指し街道を進んでいたのだが、途中で凶暴な魔獣の群れと出くわし、数が数ということもあり、逃走することとなる。
獣道を走り回り、逃げ切ったのはよかったのだが、道に迷い、さ迷い歩いた挙句に出たのはかなり行程を引き返した場所だった。
次の町に辿り着くのは不可能だったため、二人は仕方なく立ち寄る予定のなかったこの村に行き着くこととなった。
夜が更けていたため宿は開いておらず、ソードたちは納屋を無断で借り、そこで一夜を明かした。
そして今朝、ソードたちが起きると村は盗賊に占領されていた。
「ギュパァ、しかし、いくらオイラ達が疲れていたとはいえ、まったく気付かない間に村一つ落とす手並み、ただの盗賊ではありませんね……」
「ああ、恐らく騎士崩れ、しかもかなり統率の取れた奴らだ」
騎士崩れとは、20年程前までこの大陸の実に8割近くを版図に治めたベルデ帝国の残党の総称だ。
彼らは元騎士を中心に集まりいくつもの小組織を形成し盗賊に身をやつした。
多くは生活の術を知らぬが故にそうしたが、中にはベルデ帝国の復興をもくろむ者たちもいた。
今回の騒ぎを起こしているのは恐らく後者だろう。
「ギュパ、そうなると厄介ですな……どうします、いっそのこと捕まっちゃいますか?」
「ンなわけにいくか、捕まったらまず逃げられない状況になるだろうし、そうなれば俺はよくて奴隷として売っぱらわれるか、悪けりゃ殺される、お前もその手のマニアに売られるか見世物小屋、悪けりゃ毛皮のコートだ」
「ギュパァ、コートは勘弁願いたいんですけど……」
シオが率直な感想を漏らす
「だったらこの場を穏便に切り抜ける方法を考えろ」
その言葉にシオはソードの肩に手を置いて首を左右に振る
「ソードさん……穏便とか平穏とかいう言葉がソードさんから一番遠い場所にあるって事をそろそろ自覚したほうがいいですよ」
「うるせぇ……」
ソードは怒りと声を押し殺し、頬を引きつらせる。
そんなやり取りをする中ソードとシオの頭に何かが降ってくる。
ソードはそれを手にとって確かめる
「……木屑?」
「ギュパ、そういえば造りは立派ですがかなり古いですよねこの納屋」
シオの言うとおり納屋はかなり古びていた。
「まさか崩れたりしねぇよな………」
「まさかぁ」
二人はほぼ同時に天井を仰ぎ見る。
その時、1人と1匹の予想が見事に的中し天井が凄まじい音を立てて崩れた。




