誇大広告のすゝめ
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この文章を読んだ人間は
頭がよくなること請け合いであります
最後まで読めば
貴方様も賢くなられるでありましょう
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私の股に産毛すら生えていなかった幼少の頃、世間では3D映画が流行っておりました。小学校では3D映画を見てきたと自慢する輩が、赤と青の3Dメガネを自慢げにひけらかし、とにかく凄かったと吹聴してまわるのです。テレビからは3D映画のコマーシャルが何度も流れ、子供達の中で一大旋風を巻き起こしておりました。
私は3D映画の広告を初めて見た時の衝撃を、今でも鮮明に覚えております。スクリーンから伸びる手、驚いてポップコーンを落とす客、同じメガネを掛けて一体感が生まれる館内は、まさに映画の世界に入り込んでいるようでした。
3D映画を見た級友は、まるで自分自身が映画に出演していたかのように誇らしげで、映像技術の進化を必死に訴えるのであります。様々なメディアは3Dの時代が到来したと語り、私はその時代に乗り遅れているのだと実感せざる状況に追い込まれてしまいました。
私の親は映画館などに連れて行ってくれるなんてことは滅多にありませんでした。しかし、幼い私はどうしても3D映画が見たくて、父親に頼み込んで連れて行ってもらう事になりました。巷で話題のスパイキッズ3-Dを見て、教室で級友に自慢する自分の姿を思い浮かべただけで、私の自尊心が満たされるほど楽しみでした。
心待ちにしておりました3D映画は、実に陳腐でチープであり、子供ながらに子供騙しだと思いました。どうやら私は期待しすぎていたようです。スクリーンから手が飛び出る事もなく、ポップコーンはそもそも買ってもらえず、3Dメガネは掛けているだけで不快感に苛まれ、味わったことのない眼精疲労が蓄積されただけでした。
私は学校で3D映画は子供騙しだと、クラスメイトを含めた有象無象に伝えました。勿論、そんな事を言っても周りの人は私を疎むだけでありまして、異常者だと認定されるのが関の山でした。
その他にも、私は様々な広告に騙されて生きてきました。テーマパークだって大した事はないですし、飲めば痩せる薬なんて存在しませんし、無料のマッチングアプリではまともな恋人なんてできません。不動産にはおとり物件がありますし、スマホ一つで楽に稼げる手段なんてのもありません。全米は涙しませんし、衝撃のラストは高が知れています。
読者諸賢の皆々様もそういった経験はないでしょうか?
こういった誇大広告は物事だけとは限りません。広告を打つのは資本家だけに限らず、個人でも誰かに対して誇大広告をしているのです。彼だって思っているより貯金が少なかったし、彼女だって化粧を落とせば別人だ。自分を大きく見せようとする小さな人間で溢れかえっている世の中で勝ち残るには、如何に誇大な広告を打てるかが勝負になってきますし、それが詐欺まがいな広告でも致し方ありません。
些か誇張が過ぎると流石に見破られてしまいがちだと思われますが、全くもってそんな事はございません。誇大広告が基本となったこの世界において、中途半端な誇張では他人の気を引くのは難しいと思われます。
謙虚が美徳とされた時代は終わりを告げたのであります。
皆様も誇大広告を打とうではありませんか。