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不道徳教育のすゝめ  作者: 山内
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家事労働に対する賃金催促のすゝめ

 一昔前まで家事は女性が無償で行うものだと考えられていたそうですが、現代の高度資本主義社会において、対価を貰わずに労働するなどあってはならない事であります。貴重な短い人生の時間を利用して家事労働に従事しているのなら、それに見合った対価を受け取るのは至極当然でありまして、過去を含めた現代の価値観を一新する必要性を提唱したく思い、筆を取らせて頂いた次第であります。


 かの有名なマルクス経済学におきましては、家事という言葉の後ろに「労働」という文字が続きます。博識な読者諸賢の皆々様に、改めてマルクス経済学について説こうなど、お釈迦様に説法を語るに等しい愚行でありましょう。故に、ここではマルクス経済学について書くのは差し控えさせて頂きたく存じます。


 無給で専業主婦を行う時代に終止符を打つべく、私は奮起する事に致しました。職業欄に専業主婦と書くように、主婦が行う家事は「仕事」であり「労働」であると胸を張って啓蒙しなければなりません。


 内閣府経済社会総合研究所という、聞いた事はありませんが名前からして立派な機関が発行しておりますデータに基づきますと、家事労働の時給は1470円とされております。私に言わせればこの時給でも些か安い気が致しますが、これまでの無賃労働が如何に不平等かを旦那に伝える分には、申し分無いデータで御座いましょう。


 家事だけではありません。あまりこういった事を語るのは憚られますが、この際あえて言わせて頂くと、夜の営みについてもそうであります。旦那が快楽を得る為だけに消費される現実に対して、何かしらで対価を徴収するべきです。妻という立場にいる限り、旦那から性の搾取をされ続けなければならないのは不合理でありましょう。


 我々、専業主婦諸氏が家事労働の対価を請求する時は来た。

 決起せよ!!

 下記のスローガンを共に掲げようではありませんか。


☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟


   家事は労働である。

   労働には対価を。


   我々は奴隷ではない。


☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎☝︎


つけあがった野郎共につけを支払わせて、汚いケツを蹴り上げてやりましょう。



     †



「何が家事を頑張っているから給料を寄越せだ。お前は毎日、家に居て暇なんだからそれくらい当然だ」


 夫は共感能力が欠如しているらしく、私の考えを一蹴して怒鳴りつけました。家事労働をやってもらうのが当然だという風潮が、いかに古い考えなのかを説く事にしました。


「お前こそ、夫が金を稼ぐのが当然だっていう古い考えを捨てろ。都合のいい新しい考えだけを取り入れようとするな」


 言葉を弄して退路を作る、実に女々しい男性であります。私は強行策として家事労働のボイコットを試みる事にしました。彼のような想像力が乏しい人間は、洗濯、掃除、炊事、これら家事労働の一切合切を、当たり前のようにしてくれる人間が居ないくなって初めて有り難みに気付くのでありましょう。


「何が洗濯、掃除、炊事だ。何がマルクスだ。今の時代は洗濯するのに川まで行かないし、こんな狭い家ならお前の買った無駄な物を捨てればルンバで直ぐに片付く。炊事だってお前の浪費さえなければ、毎日ウーバーイーツで好きな物を好きなだけ食える。家事なんて全部ボタン一つで済む話だ。洗濯機と掃除機と電子レンジのボタンを押すだけだ。お前はそのボタンを押す事だけの労力に対価を払えと言っているんだ。お前みたいなアバズレは、きっとそのうち大便しただけでも疲れたから対価をよこせと男に言うだろうな」


 私の旦那は典型的なモラルハラスメント男であります。一時でも彼を愛していた自分が腹立たしく思います。


「もしも俺が家事に対して給料を払うのなら、お前は家賃と光熱費と食費を半分払え。そして欲しい物は全部自分で買え。当たり前のようにタダで飯を食って、当たり前のようにタダで家に住んで、やってもらうのを当たり前だと思っているのはお前の方だ」


 労いの態度を一切見せない夫に対して、家事労働がいかに過酷かを伝えました。国が発行したデータに基づき、時給換算した家事労働を請求し、過去に未払いだった分も含め、不当に搾取している現実を突き詰めたのであります。


「いいか、これだけははっきり言わせてもらう。俺がしている溶接工の手取り分を時給に換算して、1000円以上貰えていたら運がいい方だ。光で目が焼けてヒリヒリして視力は悪くなるし、工場の騒音で耳鳴りが止まらなくてストレスで難聴にもなる。それに、溶接ヒュームを長年吸い続ければ塵肺にもなる。軽い火傷や軽い怪我をしない日がなければ奇跡だ。これだけ体を痛めつけて時給1000円だ。クーラーが効いた部屋で、日も火にも当たらない所で、クラシック音楽を聴きながら、適当に簡単な器械を操って、ノルマも無いのに時給が1470円だと? ふざけるのもいい加減にしろ。俺はお前に一銭も払わないぞ」


 こうも言われてしまえば、彼との結婚生活を続ける意味は皆無であります。私は今すぐにでも自立する決意を固めました。現代の価値観で言えば離婚も珍しい事ではありません。財産の折半だけで済ますつもりはないので、これから弁護士に頼んで慰謝料も請求する旨を伝えました。


「被害者を装って感情論だけで何とかなると思うな。法テラスに相談して嘲笑われるお前のマヌケ面も、ハローワークのパソコンを前にして浮かべる顰めっ面も、俺には容易に想像出来る」



     †



 碌でもないモラルハラスメント男との離婚を果たし、今では私も一人で新生活を営んでおります。包み隠さず申し上げるなら、今の私は夜になると体を売って生計を立てております。そして昼間は家事労働に勤しんでおります。私の願いは半分が叶ったと言っても過言ではないでしょう。


 今ではしっかりと性に関しては対価を受けとっております。


 ところで、一人で暮らしている私は、家事労働に対する賃金はどこへ請求すればよいのでしょうか?


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