無読のすゝめ
本を読めという大人は多くとも、本を読むなという大人は少ないかと思いますので、私の役割的には後者の方を薦める他ありませんが、それをこういった文芸サイトで説くとなりますと、些か敵を作り過ぎてしまうのではないかと恐れ多くもありますが、それに臆していては話を進める事もできませんので、どうか悪しからずご容赦下さい。
世の中には読むべき書物が沢山あるというのに、読者諸賢の皆々様におかれましては、わざわざ拙作である当作品を読むとは、活字中毒であること請け合いであります。
私はそれを憂いて厳しい事を書かせて頂きますが、先ず初めにこれだけは伝えておきたく思います。こんな下らない拙作を読むくらいならば、洗濯機の説明書でも読んでいる方が有意義でありましょうに、わざわざ私の作品を読んで下さる事には感謝感激雨霰、深謝拝謝で幸甚至りまする。
さてもさても、活字中毒である読者諸賢の皆々様におかれましては、恐らく洗濯機の説明書をも読んだ上で、当作品をも読む程で御座いましょうから、治療が必要なのは明白であり、拙作以外の活字を断つきっかけとなるよう、筆を取らせて頂いた次第で御座います。今回は「無読のすゝめ」とさせて頂きます。矛盾のすゝめはまた今度書かせて頂きます。
ここからが本題でおま!
私は読書というものを全くしない質なので御座いますが、幼少の頃より「本を読め」だの「新聞を見ろ」等と、周りの偉そうなだけで全く偉くない人間に再三再四と言われたものです。古くて読みにくい小説を学術書か何かと勘違いしている知識階級の輩や、偏りすぎて捻れている記事を真実と思い込む阿呆共は、文字は読めても空気までは読めないらしく、人に対して活字を読む事を勧めてくるので御座います。
この世界を動かしているインテリ共が、あまりにも読書を勧めるが故、私も若い時にはそういった輩に触発されて、一度だけ活字の大海原を航海したものですが、浸り溺れて苦しかっただけで御座いました。読書とは浪費した時間に見合わない娯楽であります。活字を読んだくらいでは賢くはなりませんでしたし、何か新しい気付きがある訳でもなく、強いて言うなら疲労感というものだけを得る事が出来ました。失った時間と得た疲労に辟易として、私は一冊を読むのが精一杯で御座いました。後にも先にも、私は「ハリーポッターと賢者の石」以外の小説は読んだ事が御座いません。
とはいえ、私も読書を通じて身につけたスキルが一つだけ御座います。それは、読めない漢字をスルーする能力であります。本を読み始めた最初の方は、言葉の意味や漢字の読みを調べながら丁寧に進めておりましたが、ヴォルデモートと戦う頃には、解らない言葉は目にも留まりませんでした。
本来、読書とは無駄に元気な自分を咎める為の罰であり、何もしていないという事実から現実逃避する手段の一つなのではないかと愚考致します。今の時代に活字が娯楽として成り立っている訳もなく、適度な疲労感と達成感を味わう事で、充実した一日を送っていると勘違いするための行為こそが読書で御座います。或いは、読書という苦痛に快感を覚える、自虐的嗜好の持ち主が好む行為で御座いましょう。どうしても活字を楽しみたくなったら、留置所や刑務所にでも入って、自弁のお菓子でも食べながら読めばいいので御座います。
読者諸賢の皆々様も、読書などという無駄な事はやめて、活字中毒の治療に励む事をお勧め致します。いきなり活字を断てとは申しませんし、少しくらい活字を読んだところで弊害は少ないかと思いますので、もしも何かを読み解きたくなった暁には、私の書いた拙作を見て頂くようお願い致します。有り体に申しますと、私の書いたもの以外は見るなという事で御座います。よみどころが欲しいなら、よんどころないので当作品を見て頂きたく思います。
かくも読書に対してネガティブなキャンペーンを行っておりますと、恐らく活字中毒者の方々から「この本は本当に面白い」と申し出があるのは予見出来ますので、それに対しての反応をする前に、私は先手を打たせて頂きたく思います。先ずは大半の時間を読書で浪費している、活字ジャンキーの読者諸賢の皆々様に、読書の代替となるような趣味をお教え致します。私がお勧めする趣味、それはショート動画で御座います。
ここからは「ショート動画のすゝめ」と第して、ショート動画の素晴らしさについて書かせて頂きたく思います。
今の世界を形成しているのはショート動画であり、その多岐にわたる内容や使われる音楽としましては、どれもがトレンドを押さえているのであります。逆に申しますと、ショート動画に上がらない事象は「無」に等しく、有象無象でしか御座いません。これ即ち、ショート動画さえ見ておけばいいので御座います。
私は寝る前の二時間と起きてからの二時間、その他、空き時間があればショート動画を見る事に費やしており、たまの休日等は起きている間はずっとショート動画を見ております。
是非とも、読者諸賢の皆々様もショート動画を見て頂きたく思います。
エロいだけの中途半端なダンス、煽動じみた内容のトピック、何かを上げて何かを下げる話、他人が他人を叩くエンタメ、それら全てが雑多に流れてくる、七色というよりはドス黒くなった情報の濁流を前にして、思考を停止しながらスライドしていくのは、実に贅沢で御座いましょう。この濁流では溺れる事も苦しむ事もないのであります。
溢れ出すアドレナリンだかドーパミンだかを前にすれば、何かをしなければならないという焦燥感を抱く必要は御座いません。自分が流していると勘違いしながら、ただただ流されていけば良いのです。
掛かりまくったエコーチャンバーを前に、自分の思想が正常だと安心をして、合わせられた興味や好みを前に、ただただ流されていくので御座います。安心して頂きたい。何も考える必要は御座いません。
我々にはもう活字など必要ないので御座います。
「この小説は面白い」
「この書籍を見てくれ」
「この本を読まないのは損をしている」
「この話で人生が変わった」
本当に面白くて素敵な小説ならば、恐らくは映像化されるので御座いましょう。件の作品が映像化された上で、素晴らしい評価を得られたら、恐らくはショート動画にも無断転載されるでしょうから、私はその切り取られた名シーンを見させて頂きます。それで充分で御座います。
※私の作品だけは必読でおま!
※私の作品は有毒、じゃなくて有読でおま!




