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俺にヒロインは訪れない  作者: 流風
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5.新たな街へ

 希星すばるは、ラブストーンが指し示す方角へ向かって再び移動を開始し、都市へと辿り着いた。


「うわぁ…。大きな街だなぁ。俺、こんな所初めて来た」


 たくさんの建物と、人、人、人。そして、たくさんの布製品が並んでいる。どうやらこの都市の名産品のようだ。上を見上げても、横を見ても色とりどりの布が目を楽しませてくれる。

 通り過ぎて行く人達も皆、おしゃれな服装をして楽しそうにしている。明るい雰囲気に包まれているこの街では、問題は起きてないようだな。そう思いながら、腹を満たし情報も得られる食堂へと足を踏み入れた。


「いらっしゃいませ!」


 可愛い看板娘が元気に出迎えてくれた。いい…。良いよ!


 昼の混雑の時間を少し過ぎたくらいの時間で、店内もゆとりある空気が漂っている。空いてるカウンター席に座り看板娘に日替わりを注文する。希星すばるは料理が来るまで水を飲みながら周りの会話に耳をすませてみた。


「最近、うちの子が反抗期で…」

「腰が痛くてよ〜」

「また、女の子が行方不明らしいわよ」

「そこの角の占いの館の美人占い師さん、行方不明になったって。あぁ…私の目の保養が…」


 どうやら、この街では誘拐事件が発生しているようだ。美人占い師さんかぁ。気になる。


「お待たせしました。今日の日替わり定食です」


「ありがとう。ねぇ、今この街に来たばかりで教えてほしいんだけど、誘拐事件が発生してるの?」


 可愛い看板娘の顔が曇ってしまった。


「…はい。1週間くらい前から人が行方不明になる事件が発生してて…。神隠しだって言う人もいるんですが。いなくなった子は皆んな若くて美しい人ばかりで…。もっと賑やかな街だったんですが、みんな怖がってしまって、少しずつ活気も減ってきているんですよね」


 これより賑やかだったのか。希星すばるは今でも人混みに酔いそうなのに…。そうか。これ以上賑やかなのか。

 生活できないな。

 仕事が残っているという看板娘に礼を言い、希星すばるはそっと水を飲み食事をしながら再び耳を澄ませることにした。




 特に新しい情報も得られないまま、食事を終え、食堂を出て近くの占いの館に行ってみた。人気の占い師だったらしく、店付近で占い師を心配する声がよく聞こえた。占いの館に辿り着いたが、当然店は閉まっていた。


 店前で主婦であろう数人の女性が、路上にたむろして年齢に見合わない黄色い声で高笑いし、井戸端会議をしていたが、希星すばるが横を通りかかると、意味不明なドヤ顔で舐めまわすように見てきた。


(うざっ)


 主婦達の視線は無視だ。無視。

 しかし、占いの館前で店舗の様子を伺っている希星すばるの姿を見て、主婦達は会議を中断した。


「あら…あなたも占いに?残念だけどルイ様は神隠し事件に巻き込まれたみたいで留守なのよ」


 片手を頬に当てながら心配そうに言っている。占い師はルイちゃんっていうのか。可愛い名前だな。

 主婦は…特に井戸端会議をしている主婦は情報をかなり握っている。希星すばるはこの主婦達から話を聞き出す事にした。


「そのようですね。残念です。いつから行方不明なんですか?」


「2日前からよ。最後に白いローブの人と一緒にいたっていう噂もあってね…。占い師仲間とどこかに行ってるだけならいいんだけどね」


「白いローブですか…。凄く美しい人だって聞いたんですが…」


「「「そうなのよ!」」」


 主婦達は声を揃えて凄まじい剣幕で喋り始めた!


「あんな綺麗な人見た事ないわ!」

「綺麗で長い黒髪を横に流すように編み込んで…」

「神秘的な美しさがまた…」

「「「サイコーなのよね〜」」」


 彼女達はすでに希星すばるの存在を忘れてしまっていた。再び占い師について井戸端会議を開始し始め………どこか出てきたんだ?!一人が菓子を取り出し、皆んなに配り、食べながら井戸端会議を続けている。凄いな…!家に帰って座って話せばいいのに。しかも会話の内容がとりとめがなく、理論がなく、果てしない話だ。


 女性のパワーの凄まじさを見せつけられ、引くように希星すばるは占いの館を後にした。




 日も落ち始めてきたため、希星すばるは安宿を探し、チェックインを済ませた。この街に来るまでそれなりの移動距離だった。食事なしの宿だったため、屋台で買った物で夕飯を済ませ、疲れた体を共同浴場で清め、希星すばるは早い時間に就寝する事にした。



 するとその夜、不思議な夢を見た。


 ーーーたすけて


 ーーーつかまってる


 ーーーせかいを すくうと よげんされた


 ーーーわたしは うらないし


 ーーーびきちょう にいる


 ーーーおんなのひと たくさん つかまってる


 希星すばるは飛び起きた。夢?夢なのか?ビキチョウ?世界を救うと予言?もしかして、ヒロイン3人のうちの一人からのSOSか?占い師って言ったな。もしかして、美人占い師?

 いやいや、ただの夢だしなぁ。


 そう思いながらもチェックアウトの際に宿の主人にビキチョウを知っているかと聞いてみると、


美祈町びきちょうだろ?ここから続く谷間を越えた所にある町だな。行くなら注意しろ。変な宗教が流行ってるらしくて、行くと勧誘されるぞ」


 宗教勧誘か…。気をつけよう。

 しかし、夢に出てきた町が実在するとは。やはり、あれはただの夢じゃなかったのかもしれない。気になるな。

 もし、ヒロインが美人占い師だったらどうしよう。颯爽と救出してカッコいいところを見せないといけないな。


 希星すばる美祈町びきちょうを目指す事にした。





読んでいただいてありがとうございます。感想など頂けたら嬉しいです。

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