3.旅立ち
希星は母に旅に出ると伝え、愛車のバイクであるスーパーカブに乗り猫柳町へと向かった。
猫柳町に唯一ある動物園に向かったが、近ごろ動物が凶暴化し、人間に襲いかかるという事件も多発していて、警察により動物園が閉鎖されていた。
「くそ〜。ここまで来て入れないなんて」
シューがくれた欲念珠を指し示してくれる石『ラブストーン』は弱々しく淡く短い光を動物園に向かって示している。
しかし…ラブストーンか。希星はシューのネーミングセンスの無さに1人嘆いていた。
ま、ここで悩んでいても仕方ない。とりあえず町で情報収集&腹ごしらえだ。動物園から町へと向かい歩き始めたその時、
ポッポ〜
空からのウ○チ爆弾。しかも尋常ではない量!!
「ゔわぁぁぁぁ!!!」
「君、大丈夫か?!」
既の所で飛びのいたが、3箇所爆撃を受けてしまった。
「大丈夫かい?最近、動物達が凶暴化しだしたから注意するんだよ」
「凶暴化って、アレの事?!」
爆弾攻撃を受けた。泣きたい気持ちになりながら、商店街を目指し歩く。すると、大量のカラスが空から降下してきた。
「ゔわぁぁぁぁ!!!ヒッチコックじゃん!鳥じゃん!リアルに怖えよ!」
昔の映画で、ヒッチコック監督の『鳥』というホラー映画があったが、その状況がリアルに起こっている。逃げるように近くの定食屋へと転がり込んだ。
「大丈夫かい?あんた?」
食堂の女将が心配顔で近づいてくる。
「なんなんだ??あれは?俺、すっげぇ数の鳥に攻撃されたぞ!」
「最近そうなんだよ。しかもこの街の動物だけが攻撃的になって。おかげで、閑古鳥が鳴きっぱなしだよ」
女将がついた溜息はとても重いものだった。確かに、あんな状態じゃ街を歩くのも大変だ。そもそも、仕入れも難しいのでは?そう思っていると、店の奥から声がした。
「…お前は鳥か」
「だれだ?!」
声がした方を見ると、顔面に赤く綺麗な縦縞をいく筋も作った男4人が座り、こっちを見ていた。
「ギャーッ!妖怪!」
「妖怪とは失礼な。お前の仲間だ。お前は鳥、俺達は猫だがな」
仲間?そうか。こいつらも動物に…。
「…大変だったな」
「ふっ…いつもの事だ」
水の入ったグラス片手にカッコつけられても、その縦縞で台無しだ。
女将に日替わりランチを注文し、縦縞達の近くのテーブルに座ると質問された。
「あんた、なぜこの街に来たんだ?」
「そこの動物園にどうしても行きたかったんだ。警察によって封鎖されてて入れなかったけどね…」
俺の話を聞き、縦縞ズは驚きの表情となった。
「おまえ…そうか…おまえ…動物愛好家か…」
「へ?」
「そうか…。それなら、この街の惨状を見て傷ついただろ?」
「以前はこんな事なかったんだぜ。動物達も大人しくて可愛くて」
「動物園にもふれあい動物広場があって、子供達が動物に触れられる場所があったんだ」
「俺もあの動物園に大好きだったミーアキャットがいたんだ。この騒ぎになった後、裏山からこっそり入って会いに行ったんだが…もう…俺の愛するあの子じゃなかった」
ん?
縦縞ズの話を静かに聞いていると、一人が気になる事を言ってきた。
『裏山からこっそり入った』
あれ?侵入できるの?
「なあ、動物園は裏山から入れるのか?」
「あぁ。入れるぞ。ただ、この状況だろ?山の動物も動物園の動物も凶暴だから行かない方がいい」
山の動物…そうだった。野生の動物ってなんか怖い。
「な…なぁ…あんた、動物園に入って五体満足で帰ってきたんだよな…?」
「ふっ…。身も心もズタボロにされたよ…」
何があったんだよ!それが知りたいのに、教えてくれない。その後も何度も聞いたのに、絶対に口を割らない。ひたすら遠くを見つめている。怖い!
しかし、動物園に行かないと先に進めないのも事実。運ばれてきた日替わりランチを食べながら、希星は覚悟を決めた。そんな希星を見ていた縦縞ズは、希星の動物達への愛の深さを再確認し、また、憐れみの眼差しを向けた。
「もしも、動物園に行くのなら、一つだけ言っておく。奴らを、動物と思うな。非現実的な世界だが、現実だと言う事を忘れるな」
4人全員が手を合わせ、希星に向かって無事を祈った。
だから、こえーよ!!!
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