2.未知との別れ
「小僧、理想と現実のギャップに直面し、悩むのは人間皆ある事じゃ。しかしな、理想と現実とのギャップにぶつかった時、そこからまた努力し少しでも理想に近づくようにする者、そこで諦めたりプランを変更したりする者などさまざまな選択肢が発生する。そんな時、小僧自身がどうするかが大事なんじゃぞ」
「いや、お前が人間語ってんじゃねーよ!そもそもそのギャップって、おっさんの見た目だからな!」
「ん?ギャップ萌えか?」
「違うわ!!!」
ダメだ!ボケとツッコミみたいになっている。見た事もないこの生き物に恐怖は感じないが話が進まない。
さっき、この世界を救ってくれって言ってたよな?
「なぁ、カレイ・シューさん。あんたはどうしてここにいるんだ?」
「わしの事はシューと呼んでくれ。そうじゃ、お主に未来を救ってもらいたいんじゃ」
シュー曰く、未来は破壊王ハンマー・ハンマーが「ヒャッハー!汚物は消毒だー!!!」と言いながら破壊活動を繰り返し、まさに地獄のような有様になっているらしい。なんだかそんな世紀末漫画があったなぁ。
「未来を救えるのは、希星と3人の女(だったらいいね⭐︎)達だ。早く仲間を集めて世界を救ってくれ」
女?!女って言った?!
世界を救えるのは俺と3人のヒロイン?!
これはあれか、俺のラブロマンス物語の始まりか…?
これから3人の女の子に出会っていく。
女の子のピンチの場面
『希星さん、助けてくれてありがとうございます』
今日みたいな夜の山を歩かないといけないかも
『希星さん、怖いの…』
男は俺一人。つまりヒロイン3人からきっと…。
『希星さん…私…希星さんの事が…好き…』
いい!凄く良い!
「世界のピンチなら仕方ないな。シューさん、俺、頑張るよ」
キラキラとした目、サムズアップした右手、チョロいというか単純というか、大丈夫なのかと不安になる。
「お…おぅ!頼んだぞ!小僧!」
龍二の事もあり、詳しい話を聞くのは山を降りてからにしようと言うことになり、希星は龍二を背負って下山を始めた。
「龍二くんは龍太と違って細身で助かった」
龍太と年の離れた龍二は中学三年生の細身の男の子だ。龍太を背負って下山は無理だが、龍二は小柄なため普段から山で足腰を鍛えている希星には余裕があった。
(もしもシューの話が本当だとして、これからヒロインの女の子達と出会ったら、女の子をおんぶする事もあるのかな?いや、女の子ならお姫様抱っこかな?ぐふふっ。腕の筋力も鍛えとかないと。『ダメよ!おろして。私、重いから…』『全然重くないよ。このまま走り出す事も出来るくらい軽い軽い。大丈夫だから俺に体を預けてて…』な〜んてね!だめだ!妄想が止まらない!!)
ぐふぐふと、気持ちの悪い笑いを浮かべながら、下山していると、突然、全身黒タイツ男が現れた!
(も○もじくん?!)
「俺はハンマー・ハンマー様の部下、リベットーだ!御命、頂戴する!」
時代劇か?!
ハンマー片手にリベットーが襲いかかってきた!
リベットーが2階くらいまでの高さまで大きくジャンプ!人間には真似できないアニメの世界のジャンプ力を見せつけて飛びかかってきた!と思ったら、この暗闇。そのまま崖下へと落ちて行った。
あ〜れ〜
リベットーをやっつけた
「なんだったんだ………あれは……変態か…?」
「あれはリベットー。未来から来たハンマー・ハンマーの使者の一人だ。リベットーは倒せたが、おそらく希星達を抹殺しようと刺客が次々と送り込まれているだろう。気をつけるのじゃ」
「まじか……素直にキモい」
刺客?あんなのばかりなのか…?自滅したよな?しかし、あんなのに未来は壊滅的危機に陥っているらしいし…今回はラッキーだっただけで本当は強い…?
とりあえず、未来から刺客を送られて来ている事はわかった。シューも嘘をついているわけではなさそうだ。ヒロインに出会う前に殺されないようにしないと!
気を引き締めて下山を開始する。覚悟を決めていたが、リベットー以外の敵は現れず、希星は龍二の家に着いた。そしてタイミング良く龍二も目が覚めた。
龍太はどうやら町中を探しに行っているらしく留守だった。かわりに、龍二の母が家から出てきた。
「龍二ちゃん!良かった!無事だったのね!」
「ママぁ〜」
でた。マザコン親子。
「あら、希星、まだ居たの?邪魔よ」
でた。歩く高慢ちき。
「帰ります。では、おやすみなさい」
こんな時間までこき使って酷い話だ。とっとと帰ってシューに話を…
「ゴキブリ!!!」
龍二の母が突然シューを分厚いタ○ンページで叩き落とした。
カレイ・シューは しんでしまった
「シュー!!!!」
龍二親子はそのまま家へと消えてしまった。
「シュー!大丈夫か?!なんて事だ…ゴキブリと間違われるなんて…」
「希星よ…ワシはもうダメだ…。いいか、良く聞け…。世界中に散らばった6つの欲念珠を回収してくれ。欲念珠が回収した力を集めなければハンマー・ハンマーには勝てない…」
という遺言と、欲念珠の在処を指し示してくれる石『ラブストーン』を希星に残し、カレイ・シューはその生涯を終えた。
「シュー……君の事忘れないよ…たぶん」
カレイ・シューの遺言で、希星の住む場所から一番近い欲念珠の在処は猫柳という町の外れの動物園だという情報を得て、希星は世界を救うべく旅立つこととなった。
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