23.火事現場での戦い
「要救助者の可能性アリ!家族2名不明!」
「誰だ?」
「老夫婦らしい。見当たらないとご家族の方が」
ごうごうと燃え上がる家屋。この家にまだ2名、要救助者が取り残されている可能性が出てきた。
新米消防士は斉藤は身構える。
全身にまとった防火服。それを着ていても火事場から伝わってくる熱気は防ぎようもない。ヘルメットの下を汗が伝う。
「よし入るぞ。俺が先行、ホース一名、あと新米!お前も付いてこい!ビビるなよ!」
隊長に呼ばれた斉藤は「はいっ!」と返事して、駆け寄る。
火事なんてそうそう都合よく起こるわけがない。いや、起こらないほうがいいに決まっている新米消防士の斉藤にとって、配属されて三か月。初めての出場でいきなりの大火災。
「ドア壊せ――!」
斧を振るってガシガシとアルミのドアに叩きつける!
「ノブ壊してどうする!蝶番だ!蝶番壊すんだよ!」
隊長からの叱責。なにやってるんだと思う。このための訓練は受けたはずなのに。
「開けるぞ、避けてろ」
隊長が開きかけたドアを外に倒す。ガスの爆発は起こらない。
「よし入るぞ!マスク装着!」
奥に見えるドアからブスブスと焦げて煙を吹き始めているのを見て震えがくる。
「捜索だ。離れるな!」
先頭で次々に部屋のドアを開けていく隊長。
ホースで放水しながらバックアップする副隊長。退路の確保に水を撒きながら進む。その二人に挟まれてホースを引きずりながら部屋を見回す斉藤。
「いない」
「……いないな」
捜索を終えて顔を見合わせる。
「おい!どこにいるんだ!」
火の周りは想像以上に早く、救助が間に合わない。
街中はまさに地獄絵図と化していた。
そしてその頃、希星達は追い込まれていた。
◇◇◇
龍太と対面している時に遠くからエンジン音が聞こえて来た。
「ん?この音は……地響きのような、なんの音だ?」
大和に言われて耳を澄ませると、けたたましいエンジン音に混じって、確かに地響きの様な音が断続的に聞こえる。
それがどんどんと大きく、こちらに近づいて来る。
「これは……まずいな」
月偉は少し焦った様な顔をして、音のする方をを見つめる。
「おいおい、ふざけんなよ」
「全員集合ってか?」
「これ、無理ゲー」
「よし、大和、魔法少女になって戦え。その間に私は逃げる」
櫻子が大和を犠牲に逃げる算段をつけ始めた。
「ふはははっ。もし貴様らが生き残れたなら、特別になんだってしてやろう。希星、おまえの靴を舐めてやってもいいぞ。まぁ、勝てたらな!!」
「くっ――」
その時、通りの奥から賑やかな集団が現れた。
「お前達!“期待”しているぞ!!」
龍太のその言葉を合図にブォンブォンと賑やかな音が、火事場にこだまする。
「ヒャッハー!総長、ちゃんと連れて来やしたぜ!」
音と共に現れたのはたくさんのバイク。
ーーー 暴走族とヤ○ザの集団だった。
カラフルで様々な形の髪。体格はご立派ですの一言。中には一見太っているだけの様に見える者もいるが、よく見れば脂肪の下には分厚い金属の様な筋肉がついている。
「ヒャッハー!汚物は消毒だぁ!」
「オレはよー、ひとりでも多くブッ殺したくてウズウズしてんだよ!!」
「ひき肉にしてやるぜ!」
どこかで聞いた事のあるような、某アニメの雑魚キャラセリフが響き渡る。
「どうする?」
「むり」
「逃げる?」
「逃げる」
今は一定の距離を保ち、お互いが牽制し合っている状態だ。希星達が少しでも動くと一気に場が騒がしくなるだろうそんな気配が漂っている。
「ぁ――」
そんな時、瓦礫が落ちる音がした。
「GYAAHAHAHAAAAAAA‼︎!」
「逃げろ!」
場が一気に動いた。
集団が振動を感じるほどに激しい叫び声をあげる。
そのあまりに大きな声量に、希星達は思わず手で耳を塞ぐ。
それと同時に一気にかけだした。
「むりむり!逃げろ!」
「何の武器もない一般人にあれは無理だよ!」
「櫻子!空気砲は?!」
「だめ!数多すぎ!」
脇道を使いながらも必死に逃げる。そのれを笑いながら追いかける様はまさに狩り。
「できるだけ細い道だ!そっちの道へ走れ!」
月偉の声に反応するように全員で細道へと入る。2人並んで走るのが精一杯の道を、バイクが一列になってついてくる。
その先頭には当然のように龍太がギャハハと笑いながらついてくる。
「楽しい!楽しいぜ!逃げ惑え!ギャハハッ壊れろ!破壊しろ~」
キャッハーと楽しそうな声を背に、希星達は細道を抜けた。
抜けた先は、民家密集地帯で大規模火災が発生し、修羅場と化している現場だった。
「しまった!」
「ギャハハッ!派手に燃えてるぜ」
目の前で人命救助のために動いていたであろう消防士達。今も必死に延焼を防いでいる。その現場に逃げてきてしまったのだ。
(確実に邪魔になる!)
建物は崩れ落ちているというのに空間はまだ黒く燃え上がっている。激しい炎だ。これでは遺体の確認さえ難しい。肉の焦げる匂いと火花が爆ぜる音、もうもうたる黒煙。消耗しきった顔をしながらも、それでも消防士達は頑張っているというのに。
この場からこのヒャッハー連中を引き離さなくては!
「ヒャハハハハッ!死ね!派手に死ね!」
その一言に、現場にいた消防士達が一斉に反応した。
「テメェらが放火犯か?!ふざけんな!街をこんなにしやがって!」
消防士、我慢の限界!そう、キレた。
消化活動をしながらも、ヒャッハー集団へ向けて放水が始まった。
ビシャシャシャシャッ!
「うぎゃぁ!やめろ!クソ消防士!」
放水の勢いが凄まじく、倒れるバイクと人・人・人。その中には当然、龍太も含まれる。
「テメェ、ぶっころ……ゔぁぁぁっ」
倒れた拍子に欲念珠が転がった。
コロコロコロコロ
「欲念珠だ!希星、回収しろ!」
ジャババババッ
「放水で流れていくぞ!」
「イヤァァァァァ水止めて~!」
荒れ狂う消防士、逃げ惑うヒャッハー集団、欲念珠を追う希星達。混迷を極める現場で、ついに希星は欲念珠を回収した。
「やったー!欲念珠ゲットだぜ!」
その瞬間、目の前が光り輝いた。
その光から小さな生き物が出てきた。虹色の小さな羽からは、羽ばたくたびにキラキラと輝く粉が舞っている。
「まさか……まさか……あの姿は……」
虹色の小さな羽。キラキラと舞う神秘的な光……。
「ジャーン!またせたのう」
「シュー!」




