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俺にヒロインは訪れない  作者: 流風
22/25

21.最後の敵




 夕方の河川敷。花火大会を前に賑わうそこを、俺はひとりで歩いていた。手には先ほど屋台で購入したコーラとフランクフルト。


 安物であろう肉汁もないパサパサ感のある質の悪いものも、祭りの時に食うとこんなにうまいのはなんでなんだろうな。


 俺が育った町とは違い、この仕舞町は人口が多い。

 最近、放火が相次いでいるから中止になるかと思ったが、人とはたくましいものだと感心する。

 祭りを開催する市民の言い分はこうだ。


『こんな時だからこそ祭りで騒ぐぞ!』


 というわけで祭りが開催される事になった。人が集まるからちょうど良いと思い、現地で着替えるのも面倒なので、俺の戦闘服である格好いいマスクと、マント、黒い上下服という格好で河川敷まで来たわけだが。


 まさか違和感無くに祭りに参加出来るとは思わなかった。遠巻きにされてるけど何かのコスプレかと思われてるんだろうな。コーラうめえ。あ、輪投げの屋台がある。一回やってみたかったんだよなあれ。おっちゃん、一回お願い。五回投げれるんだ。ああくそ、全部外した。


 少し人ごみから離れ、しみじみと花火大会の喧騒を楽しみつつ、たこ焼きとコーラを楽しむ。

 そんな男の側で楽しげな声が聞こえてきた。


「#月偉__るい__#、すごいな!屋台いっぱいだ!何食う?何食う?」


「落ち着け!屋台はな……屋台飯は何食っても高いんだ。希星すばるは金持ってるのか?」


「なに?!はっ!たこ焼きが相場の倍……!?」


「祭りでケチケチすんなよ。イベント代だと思って払えよ」


「いや、しかしな櫻子、これからいくら金が必要になるかわからないから、節約しないと。花火見るなら、飲み物と食べ物はスーパーで買ってくれば……」


「しみったれた男はモテないぞ!大和!おっちゃん、たこ焼き4つ!」


「「櫻子!」」


「ギャハハッ」


「お前ら!欲念珠の捜索はいいのか?!」


「祭りでその話はなしだろ、大和!」


不意に後ろから騒がしい声。その声に思わず口元が上がる。


「ターゲットも祭りを楽しんでいるようだな」


 この連中に組織の幹部はやられまくったらしい。最強の敵…というか、他の幹部が弱すぎるだけな気もするが。まぁいい。今だけだ。最後の宴を楽しませてやろう。

 手元のコーラを飲み干し、祭り会場を後にしたのだった。



◇◇◇




「おい、大和あれ煙?」


 今現在、ラブストーンが指し示す仕舞町へとやってきた希星すばる達。ついて早々に祭りがあると聞きつけ、欲念珠の捜索そっちのけで楽しんだ。

 希星すばるは父親の借金もあり、地元の祭りをあまり楽しめていなかったから、ここぞとばかりにはしゃいでいたが、それを上回るかのように櫻子が酒を飲みまくった。

 

 そんな宴の後の怠さを残したまま欲念珠の回収をするため街の中を捜索中に希星すばるが一筋の煙を見つけたのだ。

 後部座席にいる大和へと声をかけ、二日酔いでグロッキーになっている櫻子以外でその煙を見つめていると、徐々に煙が大きくなっていった。

 パトカーや消防のサイレンの音がうるさくなる。


「あれが、噂の連続放火か?」


「おそらくそうだろう。それにしても、警察が警戒してただろうに、良く放火できたな」


「とりあえず、現場へ行ってみるか」


 #月偉__るい__#の運転で現場に近づくも、警察が通行規制をはっており、現場に近づくことができなかった。


「欲念珠はきっと火事現場にいる犯人が持ってるよな。どうする?」


「どうするっていってもなぁ……」


「私の空気砲を一発ぶちかましてやろうか?」


「それこそ犯人と間違われて捕まるわ!やめろ!」


 希星すばる、#月偉__るい__#、櫻子、大和のいつもの会話が車内で繰り広げられている中、不意に背後で大きな音がした。


 ドドーーーンッ!!


 地面が軽く揺れるほどの爆発音。火災現場から離れた場所で大きな煙が上がっていた。


「おい、あれ……」


「あっちだ!欲念珠はあっちにある!ラブストーンが反応してるし!」


「マジかっ!いくぞ!」


警察・消防ともにこっちの火災現場へと集中している。つまり、あっちは手薄。


「まずいな……風向きが…」


 火事現場の風下には住宅街がある。逃げ遅れた人がいれば大惨事となってしまう。

 そうこうしていると、あちこちから小さな煙が上がり始めた。


「これ以上の火災を起こさせてはダメだ」


「よし、大和、櫻子お姉様の命令よ!今すぐ魔法少女に変身して水魔法で消化しなさい」


「できるか!そんな事!」


 火災を抑える術など希星すばる達には持ち合わせていない。

 とりあえず犯人確保と思い、ラブストーンの反応を見つつ、月偉るいは右へ左へハンドルを切って行った。


 すると路地の小道に差し掛かった時、不意に目の前に人影が現れた。

 それは非難するでもなく、火をつけるでもなく、ただただ煙を眺めているだけの男。見覚えのあるそのシルエットに、希星すばるは思わず呟いた。


「………龍太?」



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