表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺にヒロインは訪れない  作者: 流風
2/25

1.未知との遭遇

 昭和の日本。起源町という田舎町の少し郊外にある丘に希星すばるという青年が母親と一緒に住んでいた。 山師の仕事をしながら細々と暮らしていた希星すばるは、彼女いない歴=年齢という、青春を謳歌したくてたまらない24歳の青年だ。


 夜10時頃。そろそろ眠りにつく人達も出始める時間。

 周りに人家がないため、今日も静かな夜だった。田舎町の郊外に住む希星すばるの耳には、普段なら田んぼから聞こえる虫の音だけが聞こえてくるだけだ。


 ジーーーーーーーーーーーーーーーーー


 仕事も終え風呂も入り、肉体労働で疲れた体を休ませようと希星すばるが眠っている時だった…。

 今日も何の虫か未だにわからないが、ジーという虫の音を聞きながら希星すばるが寝ていると……………。


 ピカーーーーッ! ドーーーーンッ!!!


 凄まじい光と地面が揺れる程の轟音が響き渡り、希星すばるは飛び起きた。最初は近くで雷でも落ちたのかと思った。しかし、雨は降っていない。今日は晴天だった筈だ。


 慌てて外を見てみると、近くの山から細く煙が上がっている。


 母親に様子を見てくると伝え、希星すばるは麓の集落へと走った。そこでも住民が集まって情報交換が行われていた。そこで聞いた話によると、どうやら近くの山に隕石が落下したらしい。


 その隕石を見ようと、すでに何人かの住民が山へと向かっているらしい。希星すばるも隕石を見てみようと野次馬根性で山へ向かうが、役場の職員達が危険だからと山への入り口を封鎖しており、希星すばるは近づく事ができなかった。


 仕方なく家に帰り、再び眠ろうとした所で、ドアを『ドンドンッドンドンッ』と叩く音と『おい!希星すばる!』と叫ぶ声が響き渡った。

 希星すばるは心配顔で部屋から顔を覗かせている母に「大丈夫だから寝てて」と声をかけ、溜息を吐きながら玄関へと向かった。

 玄関には近所の龍太が怖い顔をして仁王立ちしていた。


「てめぇ!なんでとっとと出てこねぇんだよ!」


 小柄で童顔な希星すばると違い、縦にも横にも大きな龍太。希星すばるの幼なじみであり、起源町一の金持ちである龍太の父に、希星すばるの父は多額の借金をしていた。子供の頃はそれが原因で龍太の奴隷のような扱いを受けていた。3年前に借金は返済したが、今でも龍太の横柄な態度は続いており、また、希星すばる自身も龍太へ逆らう気力が湧かずにいた。


「おい!龍二が隕石を見に山に行ったまま帰ってこないんだ!お前、探しに行け!!」


 今は深夜2時前。丑三つ時と言われる時間帯だ。

 そんな時間に山に行け。いやいや、怖すぎるだろう。すでに山に様子を見に行ってた人達も帰宅している。断りたかったが、


「龍二が心配じゃないのか?!早く行けよ!!」


 ガンッと壁を殴る龍太。ガキ大将がそのまま大人になったような龍太を宥める事も諦めさせる事も難しい。このままだと、自分も母も眠る事ができない。

 仕方ないと諦め、希星すばるは山へと龍二を探しに行く事にした。


 一人、山に向かうと、山の入り口の封鎖は解けていた。大人達が見張っていたのだから山の中に入ったとも思えないが…。ただ、ここへ来るまでの間も出会わなかった。仕方ない。諦めて山の中へと入って行った。

 山師の希星すばるにとって、山の中は歩き慣れた場所だ。それでも、深夜の山は希星すばるの知っている山とは違っていた。

 希星すばるは山を知っているからこそ、夜の山の危険さも知っていた。


(長居するような場所じゃないな。とっとと見つけて帰ろう)


 鳥の鳴き声すら聞こえない。木々の隙間から僅かな月明かりがあるだけの山の中、パキンッという枝を踏み折る自身の足音を響かせながら歩を進める。

 しばらく歩くと、やたらと木が折れ、地面が荒れている場所にたどり着いた。


(この先が隕石が落ちた場所なのかな?)


 少し歩くと、突然空がひらけた場所に出た。月明かりが差し込んで明るい。下を見ると地面に大きな穴が開いている。こういうの、クレーターって言うんだっけ?

 ふと、視界の端に何かが映った。気になりそっちを見ると、龍二が倒れているのが目に入った。


「龍二くん?!」


 慌てて駆け寄り見てみると、外傷は無さそうでただ気絶しているだけだった。


(良かった…。死んでたらどうしようかと思った)


 とりあえず無事で良かった。

 希星すばるはせっかく来たのだからと、クレーターを覗き込もうとしたその時、鳥の鳴き声すらなかった山の中で、謎の羽音が聞こえて来た。


(何の音だろう???)


 クレーターの中を覗くと中から何か小さな生き物が出てきた。虹色の小さな羽からは、羽ばたくたびにキラキラと輝く粉が舞っている。


「まさか……まさか……妖精……?」


 虹色の小さな羽。キラキラと舞う神秘的な光。見た目は可愛い美少女系妖精……。


「おう!小僧!ワシは未来からやって来たカレイ・シューじゃ!小僧よ!この世界を救うのじゃ!」


「は?!まさかのジジイ!!可憐で純朴な美少女系妖精じゃないの?!」


「なんじゃそりゃ?!お前は夢見る童貞少年か?!」


「悪かったな!ジジイ!」


 カレイ・シューって…加齢臭か?!ライターサイズ…シルバニアファミリーサイズって言えばいいのか?手のひらサイズの髭モジャドワーフ系ジジイに綺麗な羽が生えている。


「俺の理想をぶっ壊すんじゃねーよ!!」


読んでいただいてありがとうございます。感想など頂けたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ