18.悪役と遊園地
破壊王ハンマー・ハンマーの組織内。そこの幹部のレンチはボスであるハンマー・ハンマーの前に跪き頭を垂れていた。
「お任せください、ハンマー・ハンマー様!今日こそラブストーンの破壊と欲念珠の回収を阻止し、妖精の仲間を血祭りに上げてみせます!」
「ああ。期待しているぞ、レンチ」
ボスの激励を受け、レンチは部下の怪人を連れて颯爽とアジトを飛び出した。
そして、希星達の住む時代へとやってきた。
当初は部下を連れてこようとしていたが、この時代にやって来れる人員には限りがある。定員5名。その中の1人にレンチは入ることができたのだ。
そして今日、大勢の人間が集まるテーマパークへとやって来た。希星達がここへ来ているとの情報を得たため、ここで大暴れしてやろうと、レンチはたくさんの人で賑わうパーク内に足を踏み入れた。
レンチの外見は可憐な少女だが、悪役は明らかに悪役だった。恐ろしい悪役少女が突如現れ、テーマパークの周辺は騒然となった。
「はーははははは! 逃げ惑え愚かな人間共よ!我は破壊王ハンマー・ハンマー様の組織の一員、悪の幹部レンチ様だ!」
レンチが気持ちよく高笑いしている間に、たくさんの人が集まってきた。
「何?ヒーローショーが始まるの?」
「おねーちゃん、悪者なの?がんばれー!」
「ヒーローどこ?正義のヒーロー!」
「ヒーローショーじゃない!我は本当に悪の組織の1人だ!今から貴様らを滅多滅多のギッタギタにしてやる!全ての建物を破壊し、血の海を作るのだ!」
今までは、ハンマー・ハンマーの幹部とわかっただけで人間達が恐れ戦く様を見ては気分が高揚し、逃げていく姿をただ哄笑しながら眺めていていた。
その気分のままでレンチはこの世界に来ていた。
「おねーちゃん、がんばれー!」
「きゃーっ!こわーい!」
人間達はレンチに怯えるどころか応援してくる。しかも逃げるどころか、ちびっこが集まってくる。それはそうだ。ここはテーマパーク内。さらにレンチはこの時代にはいない黒を基調としたゴスロリミニスカ衣装を着ていた。そんな奇抜な少女はテーマパーク側が用意したイベントとしか思えなかった。だから子供が集まり、可愛い声で「こわーい」と言われているのだが、レンチは自分が恐れられていると勘違いしていた。
「なぜ、怯えながら集まる……?これだけ注目されるのも、それはそれで快感だが……。ふっ、まあいい、私の目的は貴様らゴミ屑人間共ではなく忌々しいアイツらだからな!」
レンチはふんぞり返り肩にかかる長い髪を払った。
そう。レンチの敬愛するハンマー・ハンマー様の破壊活動を毎度毎度邪魔をしてくる小賢しいヤツら。まずはその仲間である目障りなアイツらを消し去らなければ、目的は果たせない。
「我の今日の獲物は貴様らだ!覚悟しろ!」
ビシッ!と指差す先には、興味本位に人が集まっている場所を覗きにきた希星達がいたのだ。
「え?俺たち??」
きょとんとする希星達。しかし、周りの観客はその中の月偉と大和を見て、正義のヒーロー役の役者だと勘違いした。
「あ!正義のヒーローだ!今から変身するの?」
「誰がレッドなの?おにいちゃんがレッド?」
「いけー!わるものをやっつけろー!」
「キャーッ!素敵!美人さんだけど男の人よね?」
「ヒーローって言うより王子様だ!」
「あの筋肉も素敵よ!」
王子様然とした月偉と、男らしい体つきと顔をした大和に、子供だけでなく大人も黄色い声援を送る。
「え?いやいや、俺たち関係ないです。ただの客です」
「おい、俺たちを巻き込むな!ヒーローショーは役者でやれ!」
「さっきからヒーローショー、ヒーローショーうるさい!我は真面目に……」
私は遊びでやってるんじゃないと抗議の声をあげようとした、その時、
「そこまでだ!なんの騒ぎだ!君たち、こっちに来なさい!」
このテーマパークの支配人らしき人と、真っ赤なバトルスーツに身を包んだ本当のヒーローショーのリーダーらしき男と、その後ろに緑・青・黄・ピンクのバトルスーツを着た人達がレンチをビシリと指差し言った。
「我を捕らえに来たのか!ふんっ、やれるものならやってみろ!我はそう易々と捕まらんぞ!」
「はいはい。ヒーローショーで働きたいのなら、裏で話そう。君はなかなか見所がありそうだからね」
「み…みどころ……」
「お給料の話とかしないといけないから、こっちにおいで」
「いや…しかし、我は奴らを倒さねば……」
「はいはい。こっちで倒そうね」
ズルズルと引き摺られるように連れて行かれるレンチ。
「で、君たちもあの子の仲間かい?」
レッドが希星達に声をかけてきたが、それを全力で否定する。
「「「「違います!無関係です」」」」
「そうか。じゃ、楽しんでね」
スチャッと片手をあげ、カッコよく去っていくレッド。
「なんだぁ、ヒーローショーじゃないんだ」
「じゃぁ、あの子は何?天然?」
ザワザワと人々が解散していく。
「なんだったんだろうな。ま、俺たちも行くか」
「希星はテーマパーク初めてなんだろ?どこ行くか希星が決めていいよ」
「じゃぁ、アレがいい!」
欲念珠を集めないといけないのはわかっている。だが、初めて起源町を出た希星に少しくらい楽しむ時間があっても良いはずだとテーマパークを訪れたのだ。
少しゴタゴタしたが、それも旅の思い出。多少のトラブルがあった方が、後で語り合う時に楽しいものだよと言う櫻子に同意して4人はテーマパークを楽しんだのだった。




