宿屋【葉里の宿】
「え、えぇと、一応これで登録は完了よ。分からないことがあったらいつでも聞きにきてね」
「はいっ!ありがとうございます!!」
説明を聞き終えて、ロイドさんと二人でギルドの外に出る。そんなに長い間滞在したわけではないけど、なんかちょっと疲れちゃった。
「よーし、登録も終わったし。とりあえず宿に行こっか」
「分かりましたっ!!」
スバルの町の大通り。さすが、公爵領って感じの町って感じがする。公爵領の端にあるとはいえ、もといたズークの町よりも全然大きい。ここを知ってからだと、ズークは、田舎って言うかもっと治安が悪かったようなに感じる。ギルドの評判も悪かったみたいだし、あまり、よくない町だったんだと改めて思う。
「宿についたら、これからのこと話そっか」
「はい!あ、ロイドさんってもとの予定とかって大丈夫ですか??」
「大丈夫だよ~。特に予定もなかったし、もともとここにきてから決めるつもりだったから」
「ならよかったです!」
「ここは、俺が拠点みたく使ってる町のひとつだから、」
ロイドさんと話しながら歩いて、ついたところは結構しっかりした宿屋さんだった。清潔感のある外装。大通りに面してる大きめの宿。一階は飲食店なのか、賑わっているみたい。
「…宿屋【葉里の宿】??」
「そ。俺が毎回使ってるところで、良い宿だよ。保証する」
ロイドさんがにっと笑って言ってくれた。特に疑ってなかったけど、私のために言ってくれてるのが分かるから、自然と笑みがこぼれる。
「いらっしゃいませ~!あっ、ロイドさんだ!!」
「お~、キキちゃん!久しぶり~」
お店に入ると、看板娘…なのかな?女の子が、店番をしていた。今の私よりも少し年上だと思う。ポニーテールにした癖っけの赤毛が、活発な印象を与えてくれる。
常連だって言ってたし、ロイドさんと知り合いなんだと思う。親しげに挨拶を交わしている。
「あれ?ロイドさんが誰かつれてるなんて珍しいね」
「そうだ。これから一緒に回ることになったルミちゃんだよ」
ロイドさんが私を紹介してくれたから、一歩前に出て自己紹介をする。
「初めましてっ!!ルミです。よろしくお願いします!」
「わ!元気だねっ。私はキキだよ!よろしくね」
私話すと、パッチリとした大きなウインク付きで返してくれた。
「ね、ルミちゃんって何歳??」
「えっと、8歳です!」
「わっ、私の方がちょっとだけ年上だねっ!!私は10歳だよ」
やっぱり、少し年上だった。でも、もうちょっとだけ上かと思ってたな。
「んと、キキ…さん?」
接し方が分からなくて、年上はちょっとだけ苦手だったから、どう呼ぶのが普通か分からなくて、首をかしげてしまう。
「ん~、もっと軽い感じでいいよ!…あ、そうだ!お姉ちゃん、って呼んでみて!!」
「えっと、キキお姉ちゃん??」
「わぁぁ、うん!それが良いな!!」
迷ってた私に、提案してくれたから呼んでみると、想像以上に喜んでもらえた。
「私、ずっと妹が欲しかったんだぁ!一人っ子だから寂しくって」
ぴょんぴょん跳ねてすっごく嬉しそうだし、私も前世では妹がいたけど、ほんとはお姉ちゃんも欲しかったから嬉しい!
「よろしくね、ルミちゃん!!」
「よろしくね、キキお姉ちゃん!!」
二人でにこにこしているけど、お姉ちゃんの手は動いてる。私たちの手続きをしてくれてるんだと思う。
「さっ、できたよ!お部屋は302号室です!」
「ありがとね」
さっきまで私たちの様子を傍観してたロイドさんが鍵を受け取って、階段を上る。
「よかったね。2人ともすごい楽しそうだったよ」
「はいっ!私は一人っ子だったので、兄弟が欲しかったんです!」
嬉しくて、今の自分すっごく笑顔だろうなって思う。年上って思うと、どうすればいいか分からなくなるけど、お姉ちゃんだって思えばこんなに変わるんだなぁ。
「これは、定期的に帰ってこなきゃね」
ロイドさんが苦笑しながら、でも楽しそうに笑いながら言ってくれた。
「はいっ!!」
私は、飛びっきりの笑顔で答えた。
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