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第20話 平気や!

 そんな訳で、俺は巴さんの『半年離れ離れだった元カレとラブラブ再会! ドキッ♡ 二人の恋は再び大炎上⁉』イベントのために一日かけて京都についていくことになってしまったのだ。



 階段を上り切り、すでにホームに止まっていた列車が目に入ったとき、俺は改めてため息をついた。



 やれやれ、俺はいったい、何をやっているのだろう?

 この一日があれば、それこそ物理の勉強をどれだけ進めることができたかと考えると、我ながらバカらしくなる。



『操作』を使って、


「藁科先生の迷惑になるような行動ができなくなる」


と巴さんに指示することも考えた。

 正直、京都まで一緒に行くのはクソ面倒くさいし。



 しかし巴さんの10日間の尾行などの極端な行動は、もともと鶴見さんへの恋心が原動力だ。

 つまり、巴さんの鶴見さんに対する気持ちが冷めない限り、藁科先生にちょっかいを出せなくなる代わりに、鶴見さんへの予想不可能な行動に出る危険性が高い。

 それでは意味がないし、そうなると何をしでかすか分からない分、一つの『操作』では防ぎきれない。



 かといって、


「鶴見さんのことを嫌いになる」


という『操作』を巴さんに掛けることは、俺の中でどうしても躊躇いがあった。

 くるみや梨華の件(梨華には掛けた覚えはないんだけど)を思い出すと、行動を制限する『操作』ならまだしも、人の『好き』とか『嫌い』といった感情にまで『操作』で介入するとロクなことにならないという思いがあるからだ。



 だったら学校があるときはムリだが、夏休みの間の1日程度なら予定も空けられるし、巴さんにとっても元カレと復縁できるのが一番いいのではないかと考え、この京都日帰りを考えた訳だ。



「この列車でええの?」


 巴さんが列車の出入り口前から俺に尋ねる。

 俺は電光掲示板を見て頷いた。



 列車の中は、土曜の早朝の割に意外と人が多く、二人で座れそうなシートがぱっと見では見当たらなかった。


「巴さん、あそこ空いてるよ。座ったら?」


 俺は、いま俺たちが乗り込んできた出入り口と反対側のシートを指差す。

 とりあえず、一人座るスペースは確保できてよかった。


「ホンマや。ありがとう」


 巴さんが空きスペースに腰を落とす。


「なんや? 自分は座れへんの?」


 巴さんが向かいで吊革を掴んだ俺を見上げた。


「いや、そこに俺は入れないでしょ」


 巴さんの座っているスペースは、たしかに巴さん一人で座るには少し広く空いているが……。


「大丈夫やろ。座ったらええやん、こっから京都まで六時間もあるんやし」


 しかし俺も一緒に座るとなると、かなり密着しなければ座れそうにない。


「狭いから悪いよ。それに京都まで一本で行くわけじゃないし。一時間ぐらいで乗り換えだから大丈夫だよ」


「平気やって。詰めたら座れるって」


「いや、でもさ……」


 俺たちが押し問答をしていると、スペースの反対側にいた30代ぐらいのスーツの男性が気を使って少しスペースを広げてくれた。

 それでもまだ狭いんだけど、そこまでされると俺も座らない訳にはいかなくなってしまう。


「ほら、お兄さんも空けてくれたで。早よ座り」


 なんか、巴さんが大阪のオバチャンに見えてきた。

 これ以上は悩んでる場合ではないか……。


「じゃあ……」


 俺は腕を前方に丸め込み、自分の横幅を出来るだけ細くしながらシートの隙間に身体をねじ込んだ。


 俺の右脇に巴さんのむき出しの左腕が隙間なくミッシリとくっつく。

 プニやわらかい……。

 右足もスカート越しに巴さんの足と密着して、これまた気持ちがいい。



 ああ、なんで女の子って、こんな細いのに柔らかくて気持ちいい感触なんだろう。


 ――って、いかん。

 左側のサラリーマン男性の方に無理やり意識を向けて冷静にならないと。

 このままでは身体の全神経が巴さん側に集中してしまい、ドキドキしっぱなしになってしまう。


 左《男側》の感覚に集中しろ。

 左の感覚に集中しろ。

 右《巴さん》の気持ちいい感覚を忘れるんだ。



「なあ、この列車は何時まで乗ってるの?」


 そんな俺のくだらない努力に気付くはずもなく、巴さんが俺の耳に口を寄せて聞いてくる。

 その拍子に俺の右側に巴さんの柔らか気持ちいい感触がより密着してきた。

 しかもなんか、いい匂いがする。


「ろ、6時前に掛川に着くよ」


 俺はこの狭いスペースの中で、巴さんから少しでも距離を取ろうと顔を逸らしながら答える。

 おかげで隣のサラリーマンの男性に頬を寄せるような恰好になり睨まれてしまった。


「ウチ、こんなに長いこと列車乗るんは初めてや」


 もの珍しそうに車内を眺める巴さん。


「ま、まあ、6時間も乗り継ぐのは俺も初めてだね」


 母さんと列車に乗った時も、東京へ向けて3時間ほどの乗車時間だったと思う。

 それも、ほぼ母さんに肩を寄せて寝ていた記憶しかない。


「朝早かったから眠くなるんじゃないかな。乗り物酔いするといけないから、無理せず寝た方がいいよ」


 俺は巴さんに忠告しておく。

 あまり在来線に乗ったことがないというので、乗り物酔いには気を付けないといけない。


「平気や! 全然眠ない」


 巴さんが笑顔で答える。

 交際が発覚してから彼とは会ってないというし、ほぼ六ヶ月ぶりの再会だからな。

 そりゃ興奮もするだろう。

 眠くならないのも気持ちはわかる。


「じゃあ、逆に俺が寝ちゃったら起こしてもらっていいかな?」


「ええよ! ウチに任せとき」


 巴さんが自信ありげに答えた。




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― 新着の感想 ―
[一言] …2人とも熟睡ENDかな?() 前話での質問について、ご丁寧な回答ありがとうございました!
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