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ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった  作者: 太伴公達
第3章 図書室、メガネ、そしてサッカー部
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第11話 他の人って?

 いくら彼氏に眼鏡を外した方がいいと言われたからって、視力が悪いのに危険を顧みず眼鏡を外すなんてありえない。


 俺が呆れていると、


「ダメだよ! 女の子だったら誰だって、好きな人には自分の一番可愛い姿を見てもらいたいって気持ちがあるんだから!」


と梨華に怒られた。



 たしかにリリィにもそんなことを言われたな。



 思い出した俺が、


「いや、わかるよ。他の人にも言われたことあるし」


と答えると、


「他の人って?」


梨華が何気なく訊ねてきた。



 ――やべ。

 気を抜いて答えちゃったけど、梨華たちにリリィの存在を疑われたら『操作』の力を失っちまう。



「……美幸のお母さんの美智子さんに、な」


 俺は嘘をついた。

 こういうとき、ぼっちの俺には出せる名前が美智子さんか美幸ぐらいしかいないから困る。


「言われてるなら忘れちゃダメだよ? リカだって翔悟には可愛いところを見てもらいたいんだから♡」


「な、なに言ってるんだよ!」


 梨華の言葉に慌てる俺の姿を、梨華本人がニヤニヤしながら見ている。

 からかってるのか、アプローチされてるのかわからん……。


 そして、そんな梨華を長尾と渡良瀬は呆れた顔で見ている。

 最近、俺たち四人の会話はいつもこんな構図で進んでいる。



 ……いい加減、梨華に掛かってるはずの『操作』を解除しないとなぁ。

 俺だけでなく、長尾や渡良瀬まで俺を好きに(おかしく)なってる梨華に付き合わされて気の毒だ。

 ただ、俺が掛けた覚えのない『操作』って、どうやって解除すればいいんだろ?



「――でもさ、彼氏だったら目が悪い彼女が眼鏡を掛けないなんて危ないって考えるもんじゃないのか?」


 その点が俺としてはやっぱり納得いかない。

 眼鏡を外す吉野さんの気持ちもわからないし、眼鏡を外させる彼氏にもあまりいい印象を持てない。


 しかし――


「……そこまで考える彼氏なんてあまりいない」


 俺の質問に答えたのは梨華ではなく、梨華の隣の席に座る長尾裕子だった。


 長尾は普段から、こういうテンションの低い喋り方をする。

 最初は俺が拒否られてるのかと心配になったのだが、俺がこのグループの輪に巻き込まれる前からこんな感じだったらしい。 


「……普通は思いついたことを言うだけ。相手のことは考えない。中高生男子なんてそんなもの」


 長尾の静かな喋り方で言われるとなんだか説得力がある。


「そ、そうなのか」


 長尾は俺に視線を向けることなく黙って頷いた。



 なんだか知らないけど、すげぇ実感こもってるな。

 長尾って結構、経験豊富なのか?



 まあ、イマイチ納得はいかないが、考えてみれば俺の気持ちなどどうでもいい。

 俺にとって重要なのは俺が洋書を借りられるのか。

 もしくは最悪、図書室で吉野さんが眼鏡を掛けてくれるときがあるのかということだ。

 眼鏡さえ掛けてくれれば『操作』を使うことができる。

 そうすれば洋書も借りられる。


「わかった。吉野さんは彼氏に土曜のデートで眼鏡を外してほしいと言われて、眼鏡を外す練習をしている。それは彼氏に可愛いところを見せてあげたいから。これでいいのか?」


 俺は梨華に確認する。

 ここから、どうやって洋書の話に持っていくかなんだが……。



「そうそう。でね、涼子ちゃんにデートのときの服装を相談されたの」


 ……朝から話が思った方向に進まない。

 吉野さんのデートの話が、どう俺に関わるのか。


「まあ、そりゃ相談するだろうな」


 俺は不本意ながらも梨華の言葉に相づちを打つ。

 中学までは吉野さんに服を貸してあげていたと言っていたし、今は人気読者モデルとなっている梨華だ。

 俺が吉野さんだったとしても、ファッションのことなら梨華に相談しようと思うだろう。



「で、せっかくなら裕子にも手伝ってもらおうってなってー」


「ま、待ってくれ。なぜそこで長尾が出てくる?」


 どうも梨華の話は俺に対する説明が足りない。



 俺ってもともと、君らのグループにいるようなタイプじゃないんだからね?

 ひと月前まで君らに名前も覚えてもらってないほどぼっちだったことを忘れないで。



「裕子んち、お母さんもお姉ちゃんも美容師なの。で、裕子も美容師になるつもりで」


「へえ、そうなんだ」


 俺が長尾の顔を見ると、長尾はまた頷く。


 言われてみれば長尾はいつも、ナチュラルショートの黒髪のサイドを耳にかけて、校則の範囲内で綺麗にヘアスタイルをまとめている。


「ヘアスタイルとメイクは裕子にやってもらうの。リカがやってもいいけど裕子の方がぜんぜん上手だしね。リカのメイクも裕子に教えてもらったし」


 梨華が長尾の右腕を持ってガッツポーズの形に挙げる。

 長尾はいつもの、テンションがよくわからない醒めた表情のままだ。

 こんな覇気のないガッツポーズ、見たことない。


「あと、信士には北上くんについて情報収集をお願いしたの」


「まかせとけ。男子サッカー部に中学からの友達がいるから、北上先輩について聞いとくよ」


 渡良瀬が爽やかな笑顔で梨華に言う。


 渡良瀬はイケメンスポーツマンで友達も多い。

 その程度のことなら楽勝だろう。



「なるほど。梨華がデート当日のファッション。長尾がヘアとメイク。渡良瀬が情報収集だな。で、俺の役割は?」


 俺は梨華に尋ねる。


「う、うん、そうね」


 しかし、梨華はこれまでの喋り方から一転、急に言いよどんだ。



「なんだよ。俺にもなんかあるんだろ?」



 かといって、俺にできることなど何があるというのか。

 勉強は教えられるけどデートで必要とは思えないし、もちろん『操作』のことは知らないし。



「……涼子ちゃん、土曜の待ち合わせが中央公園なんだって」


「は? 何の話だ?」


 中央公園。

 先月の梨華の騒ぎのときの公園だな。

 俺の家とバイト先の『飛行艇』の中間にある公園だ。



 だが、今は俺の役割の話をしているはずだが――




 あ。



「涼子ちゃんの着替えとメイク場所に、翔悟のお家、借りられない?」


「俺じゃなくて、場所の提供かよ!」



 しかも土曜日、家で勉強できねぇってことじゃん!

 洋書どころか、普通の勉強さえ足止めされるのか!



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