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ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった  作者: 太伴公達
第3章 図書室、メガネ、そしてサッカー部
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第10話 ダメだよ!

「昨日の放課後、翔悟に言われた通り、図書室へ行って涼子ちゃんと話してきたの。一昨日の無視されたことについてね」


 自分の席に鞄を置いてから梨華の席まで戻ってきた俺へ、梨華は待ってましたとばかりに説明を始めた。


「そうか。で、吉野さんはなんて言ってたんだ?」



 ここで昨日までの俺のシミュレーションでは――



梨華「アタシ、矢作梨華よ! 涼子ちゃん、ひさしぶり! 昨日はなんで図書室でリカを無視したの?」


涼子「まあ、アレはリカちゃんだったの? 眼鏡がなかったから気付かなくてごめんなさい!」


梨華「メガネのせいだったらいいのよ! 許してあげる! ところで涼子ちゃんと幼なじみであるリカのお友達がこの本を借りたがってるんだけど!」


涼子「他ならぬ幼なじみのリカちゃんのお友達のお願いなら仕方ないわね! 持っていきなさい」


俺「わーいわーい! やったね!」


Fin...



これだけで終わるはずだったのに。

 そうすればWin-Winで終わったはずなのに。



 しかし、梨華の反応は俺のシミュレーションとは違いすぎた。


「あ、うん。それはやっぱり誤解だったの。それは、もういいの。そういうわけで作戦会議なの」



 だから、どういうわけ?

 


「作戦会議っていったいなんだよ?」



 一晩経ったら俺がまったく想定してなかった単語が現れてる。

 たった一日で風雲急を告げるにも程がありすぎない?



「うん、あのね。涼子ちゃん、やっぱりメガネをかけてなかったからリカに気付かなかったんだって」



 それは予想通りだったな。



「で、なんで涼子ちゃんがメガネしてなかったのか理由を聞いたの」


「おお、それそれ。なんだって?」



 リリィのタブレットに吉野さんが眼鏡をかけていない理由は表示されていなかったからな。

 理由は気になるぞ。



「涼子ちゃんね、恋してるの」


「……ん?」



 何の話?



「涼子ちゃん、いま、好きな人がいるんだって。サッカー部に」


「サッカー部」


 俺はバカみたいに梨華の言葉を繰り返す。


 枳高校カラコーのサッカー部と言えば有名なのは女子サッカー部である。

 俺の担任でもある多摩美郷先生が顧問を務める女子サッカー部は県内でも屈指の強豪で、現在2年連続で全国大会へ出場している。

 今年は特に有望な新人が推薦で入ったらしく、全国制覇も夢ではないと多摩先生から聞いていた。


 しかし、それは女子サッカー部の話。

 いま出てきたのは男子サッカー部というが……。


「男子サッカー部って……あったの?」


 純粋な疑問として俺は口にする。



 女子サッカー部が有名すぎて、男子サッカー部って影が薄いんだよな。



「そりゃあるさ。ウチの高校の規模でサッカー部がないなんてことないだろ?」


 俺の質問に、梨華の友人メンバーである渡良瀬 信士が答えた。

 渡良瀬はたしか、男子バスケット部に所属していたはずである。


「女子サッカー部と違って成績はパッとしないから目立たないけどな。部員も60人ぐらいいるぜ」



 結構な大所帯ではないか。



「まあ、練習よりも女の子たちとのコンパの約束を取り付ける方が忙しいって感じの部だけどな」


 渡良瀬が鼻で笑う。

 その雰囲気だけで、枳高校カラコーでの男子サッカー部の扱われ方がわかった。

 ぼっちの俺には、そういう情報は絶対入ってこないから助かる。


男子サッカー部(そこ)の二年の北上きたかみ 光一こういちくんって人が好きなんだって」


「え、いいの? そんなこと、無関係の俺が聞いちゃって」



 そういうのって、すごくデリケートな話のような気がするんですけど。


「梨華ちゃんだから教えるんだからね! 他の人には教えないでね!」


みたいな。



「大丈夫。翔悟も無関係じゃなくなるから」


「はい?」



 はい、不穏な言葉が出てきました。



「まあ、聞いて。で、涼子ちゃん、この間、北上くんに告白したの」


「へえ」


 もちろん、俺は告白なんてしたことがない(梨華から告白されたことはあるが、アレは『操作』の影響のはずだ。そうでないとおかしい)。

 そもそも告白するほど人を好きになった覚えがない。


 しかし、人に告白をするということがとても勇気がいる行為であることぐらいは俺にだって想像がつく。

 だから図書室での冷たい反応しか見ていない吉野さんに、告白までするほど強い想いがあること自体が意外だった。


「北上くんは告白を受け入れてくれて、今度の土曜に初デートらしいんだけど」


「今度の土曜、ね。よかったじゃん」


 少し気になるものの、俺は話を続けさせる。


「そのとき、北上くんからメガネをかけてない涼子ちゃんと会いたいって言われたんだって。それでメガネなしの動きに慣れるために図書室でメガネを外してたらしいの」


「はあ? なんだそりゃ」



 呆れた。

 たかが彼氏の下らないワガママのために、ほとんど目が見えない状況でも眼鏡を外すってのか。



 しかし俺の反応を見て梨華が怒り出した。


「そんな言い方しちゃダメだよ! 女の子だったら誰だって、好きな人には自分の一番可愛い姿を見てもらいたいって気持ちがあるんだから!」



 あ、そういえばリリィもそんなこと言ってたな。


「気になる相手に髪型なり服装なり、いつもと変わった自分を見てもらいたいって気持ちは女の子だったら誰でもあるんじゃない? 」


って。

 それと同じことか。

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