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ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった  作者: 太伴公達
第3章 図書室、メガネ、そしてサッカー部
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第6話 よく気づいたじゃん

「リリィ! リーリーイー!!」



 アパートに帰ってきてすぐ、俺は通学鞄につけたリリィへのホットラインである猫のストラップを握って叫んだ。


 端から見ればお人形を握りしめてスズムシのようにリリー、リリーと叫んでるちょっとアレな人だが、俺は一人暮らしの家で一人叫んでるだけだから、例えアレだったとしても関係ない。



 そんなことより俺は怒っているのだ。

 メチャクチャ怒っているのだ。



「へぇ、キミがそんなに怒るなんて珍しい。一体、何を怒ってるの?」


 幽体離脱した俺の後ろに音もなく現れたピンクのマイクロビキニ姿のリリィが言う。



 相変わらず、この子はなんちゅうハレンチな格好をしてるんだ。

 死神が泣くぞ。



「――て、あれ? リリィって、この間までは黒のビキニだったよな。ピンクに変えたのか?」


 俺が指摘すると、

 

「そうそう、よく気づいたじゃん! エラいエラい! 死神の遣い魔っぽさを演出するために黒にしてたんだけどね。やっぱりボクの好きな色の方が仕事のモチベーションも違うかなって思ってピンクにしたの!」


リリィが手を叩いて誉めてきた。


 ピンクのマイクロビキニは、以前までの黒のそれよりも細身のリリィに似合っていて可愛かった。


「え、そう? 似合ってる?」


「でも、遣い魔っぽさを演出したいならマイクロビキニをやめるのが先の方がいいと思うけど」


「死神さまみたいなつまらないこと言わないの。あ、あとね! ココを紐で結ぶタイプにしたの! ここもカワイイでしょ♡」


 リリィは俺を挑発するように、細い腰の右手にあるビキニパンツの結び目を指でヒラヒラとさせる。

 

 

 あ、あの紐をほどいたらアレがアレしちゃってリリィのアレな部分がアレしちゃうのか……。


 ――て、イカン!

 童貞だからそういうのドキドキしちゃう!



「そ、そんなことはどうでもいいんだ!」


 俺はリリィのマイクロビキニ姿から目を逸らした。


「えー、もっとちゃんと見てよー。死神さまは呆れるだけだし、三途の川で彷徨さまよってる霊魂たちはテンション低いしさー。キミぐらいしかそういう反応してくれる人いないんだもん」


「そういうって、どんな反応のことだよ」


「童貞っぽい反応」



 童貞、バカにすんな‼



「そんなことはいい! 俺が言いたいことなんてもうわかってるだろ! どういうことだ⁉ なぜ吉野さんに俺の『操作』が掛からなかった!」


 俺は気を引き締めてリリィに問いただす。



 今日の夕方、図書室で吉野さんにかけた『操作』は()()()掛からなかった。

 指パッチン(フィンガースナップ)の音が聞こえなかったのかと思い、改めて目の前で手も叩いてみたが吉野さんはケロッとしたままだった。



「ですから何度も言ってますけど、この本は貸し出すことができません。……あの、大丈夫ですか? 私の言ってる意味、わかりますか?」


 挙げ句の果ては俺の頭の心配までされてしまった始末である。



ポンコツ能力(『操作』)のせいで、ドヤ顔で人前で指パッチンしたり手を叩いたりして、完全に頭がおかしい人と思われちまったんだぞ! 赤っ恥かいたわ! どうしてくれるんだ!」


 眉をひそめつつ俺を見上げる吉野さんの顔が思い出されるたびに顔から火が出るほど恥ずかしくなる。



「どうしてくれる……って、ボクたちはどうもしないよ。『操作』は条件が揃えば必ず掛かるんだから。現世において例外はないよ」


 リリィがビキニの肩紐の下を指先で搔きながら平気な顔で言う。



 こンのアマ!

 ちょっと可愛い顔してるからって調子に乗って!

 自分たちの欠陥能力を棚に上げて何を言いやがる。


 あと、肩紐を無防備に引っ張り上げるのやめて!

 なんか見えちゃいそうだし、見えちゃいそうだからって思わず見ちゃってムダにドキドキしちゃうから。



「実際に『操作』が掛かってないから呼び出してんだよ、コッチは!」


 俺の怒りは収まらないが、


「……ったく、声大きいよ。いくら幽体離脱してるからってあまり大きな声出さないでよ、ウルサいなぁ」


リリィはどこ吹く風である。



「やれやれ。ボクのことを可愛いって思ってくれたから『アマ』なんて暴言を吐いたことは目をつぶってあげる。……ねぇ、思い出して。死神さまは『操作』を掛ける条件をキミに何て言った?」


「は? どういうことだ?」


 言われて俺は三途の川での死神の言葉を思い出す。



『一つ。操作したい相手と目を合わせること。二つ。指を鳴らすでも、手を叩くでもいいから、自分の身体のどこかで鳴らした音を聴かせること。この二つだ』



「――間違いなくやってるぞ、おい!」


「だから、間違いなくやっていれば間違いなく『操作』には掛かるの。ということは『間違いなくやった』ってキミの認識に齟齬そごがあるの。まず、相手には本当に音が聞こえてた?」


「会話してるんだぞ? 聞こえてるに決まってるだろ」



 だから、俺の頭の心配をされたんだっての。



「じゃあ、本当に彼女と目が合ってたの?」


「目だって合ってたよ! 吉野さんはずっと俺を睨みつけて――」


 言いかけて俺は言葉を飲んだ。



「……睨みつけて?」


 リリィがニヤニヤしている。



 コイツ……。

 すでにわかってやがるな?




「――まさか吉野さんのあの顔って俺を睨んでたんじゃなくて、()()()()()()()()()()()のか?」



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