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ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった  作者: 太伴公達
第3章 図書室、メガネ、そしてサッカー部
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第2話 離れたいの?

「ねぇ、翔悟~。なんで放課後にまで勉強なんてするのよ~」



 多摩先生の叱咤激励を受け、気合いを入れて放課後に勉強しようとする俺の前の席で、矢作 梨華が立て肘でつまらなさそうな声を上げた。



 やれやれ。

 勉強を頑張ろうと心に決めたそばからコレだ。


 

 俺は思わずため息をつく。

 先月の騒動から梨華はたまに、こんな感じで俺の勉強の邪魔をするときがある。

 なんだか、ずいぶんと懐かれてしまったものだ。

 猫に懐かれるのならまだしも、同級生女子に懐かれるような日が来るとは……。



「梨華、なに言ってんだ? 7月に入ったらすぐ期末だぞ。いま勉強しないで、いつする。俺はこれ以上、成績を落とすわけにはいかないんだ」


 かくいう俺も、矢作のことを梨華の名前で呼ぶのにめっきり慣れてしまっていた。


「成績落ちたら普通科のままなんでしょ? じゃ、来年からもリカと一緒じゃん♡」


 梨華は俺が高二から特進科への転科を狙っていることを知って、なんとかそれをやめさせようとしている。


 そうそう。

 最近、梨華は俺の前では平気で自分のことを名前呼びするようにまでなってしまった。

 どれだけ気を許してるんだ。



「そんなに俺を特進科へ行かせたくないのか?」


「翔悟はそんなにリカと離れたいの?」


 俺の質問に、梨華は質問で返してくる。


「離れたくないよ、もちろん」


 俺は多摩先生から教えてもらった洋書を、辞書片手に読みながら答える。



 梨華は数年ぶりにできた大切な友達だ。

 再びダブリの転科生として高二から特進科のクラスメートに冷たく、それでいて好奇の目で見られることを考えると少し気が重いからな。



「ん? どうした?」


 何も反応がなかったので梨華の方を見ると、梨華が妙にモジモジしている。



「そ、そんなストレートに言われたら、リカ照れちゃうよ……」



 え?

 ストレートって、何の話……



「あ! 恋愛の話じゃないぞ⁉ と、友達として、だ! 俺たち、友達だろ!?」


 俺は慌てて訂正する。



 そ、そういうことか!

 そんなつもりで言ったんじゃない!



「ちぇー、やっぱり。どうせそんなことだろうとは思ったけど」


 俺の言い訳を聞いた梨華が、小さな頬を膨らませてねてしまう。



 うーん。

 やっぱり梨華って可愛いな……。



 俺は思わず、梨華の拗ね顔に見惚れてしまうところだった。


 梨華のモデルとしてのキャリアは順調で、土日の休みを利用していくつかのファッションショーに出演しているらしい。

 今度、|東京ガールズコレクション《TGC》にも呼ばれるかもしれないと喜んでいた。

 良かった良かった。


 ……TGCってのが何なのかは知らないけど。


 ま、まあ、それほど梨華のルックスはどんどん磨きをかけて良くなっているということだ。



 しかし、それほど可愛い梨華がこの間の騒動の最後、急に俺へ告白をしてきたのだから本当に驚いた。


 だって、そんなことあり得ないだろ?


 公園ではたしかにちょっと助けたけど、梨華の前で何かしたわけではない。

 その後だって、俺の手料理を食べさせて俺の暗い身の上話をしただけだ。

 いったいこの流れのどこに、クラスでぼっちの俺に惚れる要素がある?

 ないでしょ!?



 ただ、唯一思い当たる節があるとすれば、それは寝ている梨華に掛けた『操作』だ。



 あのとき俺は梨華に、両親へ電話を掛けて素直な気持ちを話すよう『操作』した。

 キチンと両親に、梨華が抱えた孤独を伝えさせるべきだと思ったからだ。

 それでも両親が変わらないというのなら仕方なかったが、結果はいいように転がってくれたようでそれに関しては本当によかった。


 だが、あの『操作』が梨華の深層心理へ変な影響を与えて、俺のことを好きだと勘違いさせているのではないだろうかと俺は考えている。


 梨華本人に自覚はないし、もちろん俺にだってそんな『操作』を掛けた覚えはない。

 くるみのとき散々エラい目に遭ったからな。


 だが俺が死神から貰った『操作』は、()()ガジェット好きな死神と、()()露出狂の遣い魔リリィの胡散臭い二人が絡んだ能力だ。

 いかなる不具合が起きてもおかしくないと思っていた方が無難ではないか?


 それに『操作』を掛けるときの俺の頭の中に、あわよくば梨華とお近づきになりたいという願望が絶対になかったかと言えば嘘になる。


 だって酔っ払って寝ちゃった梨華は無防備に色々露わになっててエロかったし、それでいて猫っぽくて可愛かったし。

 だからひょっとして、自分でも意識していなかったそういう思いが『操作』に悪影響を与えた可能性もある。

 ていうか、そうでもなければ梨華が俺に惚れる要素がない。



 そして本当に『操作』で梨華が俺のことを好きになったのなら、たとえ梨華と付き合ったとしてもエッチをする事はできない。

 だって『操作』を掛けてエッチしたら俺死ぬし、しかもそのあと三途の川を永遠に徘徊するツアーが待ってるし。

 こんな可愛い彼女がいるのにエロいことが出来ないとか、それ、どんな拷問だって話だ。

 16歳童貞の性欲をなめんなよ?



 だから俺は梨華からの告白を涙を飲んで断っている。

 ホントは俺だって、こんな可愛い女の子から告白されたら、


「わかった! 梨華! 俺と付き合おう!」


とか言いたいのだ。



 などと俺が懊悩おうのうしているところへ梨華が一言、


「リカと付き合えないのって、やっぱり美幸さんのことが気になるからなの?」


と言った。



「ハ、ハア!? バ、バ、バカ! アイツは関係ない!」



 俺は頭に血が上り、思わず席を立って叫ぶ。

 その瞬間、

 

「静かにしてください!」


俺たちを注意する女子の声が上がった。




「ここは()()()ですよ!」



 ――しまった、そうだった……。

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