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ぼっちの俺が死神からもらった催眠能力でやりたい放題!! ……してないのにモテるようになった  作者: 太伴公達
第2章  『操作』、アルバイト、そして昔話
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第23話 矢作梨華の独白①

「おい、矢作! 起きろ!」


 富士さんの声でアタシは目を覚ました。



 うーん……少し頭が重い。

 缶チューハイのアルコールが抜けきってないみたい。



『いいか。酒飲んだってことは言ってないからな』


 富士さんが起き抜けで寝ぼけているアタシの耳元に近づき、小声で言った。


「……? 言ってないって誰に――」


 富士さんに尋ねようとしたときである。



「梨華!」


「梨華ちゃん!」



 アタシの背後から急にパパとママが顔を出した。



 え、なんで⁉

 ここは富士さんの家なのに、なんでパパとママがいるワケ⁉



「パ……お父さん、お母さん!? 二人ともなんでここに?」


「なんでって梨華からパパに電話をしてきたんじゃないか。ここにいるって」


 パパが心外と言った口調で答える。


「え? 電話?」


「そうよ。ママのところにも電話をくれたじゃない」


「ママのところにも!? リカが電話したの⁉」


 驚きすぎたアタシは富士さんの前だというのに、いつも通り自分を名前で呼んでしまったしママをお母さんと呼ぶのも忘れてしまった。


「そうよ、覚えてないの?」



 全然覚えてない!!


 たしかにアタシは、お酒の味は好きだけどアルコールにはすごく弱い。

 一人でお家で留守番をするとき、高校生にもなって恥ずかしいけど、寂しかったり怖かったりして眠れなくなることがある。

 そんなとき、たまにパパが買い置きしてある缶チューハイをこっそり飲んだりすると、いつの間にかぐっすりと眠っているのだ。


 今日はクラスでほぼ話したことがない富士さん(今日の昼休みに、美幸さんの伝言をしたのが多分初めてだったんじゃないかな)と二人きりになるから景気づけに飲んでみた。

 酔ったアタシにどうこうするような人ではないと思ったし、猫好きに悪い人はいないしね。

 でも、パパとママ二人に電話したことまで忘れてるほど酔っちゃったのはヤバかったな。



『富士さん。アタシ、パ……お父さんとお母さんに電話してました?』


 眠くなることはあっても記憶をなくしたことがなかったアタシは、どうしても信じられなくて富士さんにヒソヒソ声で確認する。


『ああ。矢作は自分で電話してたぞ』


 富士さんが口元を隠しながら認めた。



 うう、やっぱりホントなんだ。

 そんなに酔っ払ってたんだ、アタシ。

 ショック~。


 富士さんもアタシと目を合わせてくれない……。

 なんか気まずいことを隠してるって感じ。

 酔ったアタシ、なにか迷惑かけたのかな……。

 怖くて聞けないよぉ。



「パパ。リカ、電話でなんて言ってた?」


「可哀想に、梨華。よほどショックだったんだね。電話の内容も忘れるなんて」


 パパが眉をひそめて嘆く。



 ショック?

 なんのこと?



「公園で不良に連れていかれそうになったところを、そこの富士くんが助けてくれたそうじゃないか。そのあと、一人で帰るのが怖くなった梨華を富士くんが家にかくまってくれたと言っていたよ」



 う~ん、一部合ってるけど一部違う感じ。

 やっぱり、そんなこと言った覚えがないなぁ。



 アタシが記憶をなんとか取り戻そうと頭をひねっている間に、パパが富士さんに話しかける。


「富士くん。ウチの梨華が大変、お世話になりました。このお礼は後日、必ずさせてもらいますが、今日のところはもう、梨華を連れて帰らせてもらっていいですか?」


 そう言ってパパは深く頭を下げた。


「いえ、そんな。頭を上げてください。きっと矢作さんもショックで心労が祟ったんでしょう。今は落ち着かれて、ようやく少し休めたようで良かったです。ご両親も心配でしょうから、お家でゆっくり休ませてあげてください」



 ショックで心労って。

 お酒飲んで寝ちゃっただけなのに。

 富士さんも口から出まかせが上手だなぁ。



「それと矢作さんにはお礼として、今日の夕食の材料費を払ってもらいました。ですから、改めてのお礼も結構です。本当にお気になさらないでください」


 富士さんはクラスでの()()()ぶりからは想像もつかないほど、パパとキチンと喋っていた。

 アタシの男友達が偶然パパと会ったときなんか、大体「ウッス」とか「こんちゃー」なんて言葉遣いだが、それでも挨拶するだけマシで、ほとんどの同級生はパパと目を見て話なんかできないのに。


「ありがとう。それでは、ここでおいとまさせてもらいます。梨華、富士くんに改めてお礼を言いなさい」


「う、うん。富士さん、ありがとうございました……」


「ゆっくり休むといいよ。おやすみ」


 富士さんはニコリと笑ってくれた。

 とても素敵な笑顔だった。



 パパが運転する車の後部座席に乗って、ママの肩に頭を乗せていたら、本当に疲れていたのかアタシはすぐに眠ってしまった。


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